「2014年インドヒマラヤ遠征」荒川一郎部長挨拶

2024年2月28日 06:00

学習院大学山岳部　部長（理学部教授）荒川一郎

　はじめに、この度の学習院大学山岳部現役学生のインド・ヒマラヤ登山に対し、ご援助と応援をしてくださった多くの皆様に心からお礼を申し上げます。
　海外の山に行きたいとの声が聞こえてきたのは、 2013年の夏頃だったかと思います。その年の暮れには、目指す山も決めてかなり具体的な計画になっていました。しかし、そこには不安材料がたくさんありました。何より隊員の山の経験が乏しいことが第一の問題でした。その時点でまだ冬山に行ったことがないという学生が、８ヶ月後のヒマラヤ登山に参加しようというのは、どう考えても無理というのがＯＢ・ＯＧ大半の判断でした。

　もちろん私も同じ考えで、もう1年計画を先に延ばして、トレーニングと経験を積むべきと、何度も説得をいたしました。しかしその様な逆風の中、 2014年の実施が決定された要因の第一は，彼らの執念でした。就職・進学を考えるとこの時しかないと言うわけです。しかしこれでは可とするわけには行きません。後押ししたのは原田昌幸さんの参加でした。登頂を成功させるために加わるというよりは、危険と判断したときには登頂を諦めさせる役割を担ってもらいました。

　そんなこんなの不安の中、張り切って出発する彼らを見送りました。遠隔地からの最初の報せは、馬が谷に落ちて積んでいた登攀用具を紛失したというもの。こんなことで頓挫してしまうのだろうかとがっかりしましたが、現地で山道具を調達しなおして計画続行とのこと。やはり執念でした。山に入ってからはしばらく音信不通となり、次に届いたのは登頂成功の報せでした。不安の大きさに比べて、ややあっけない感じがしました。あとは無事の帰国を待つばかりでした。

　登山隊を送るに当たって、卒業生、父母、大学諸方面から多大の援助を頂きました。経済的援助はもちろんありがたかったのですが、部長として何より嬉しかったのは，それら多くの皆様方からの現役学生へのお褒めの言葉と、登頂達成を心から慶んで下さったことです。こんなに多くの皆様が関心を持って彼らを称えて下さったこと、その反響の大きさは私の予想を超えていました。彼らが我々にもたらした「元気」はこんなに大きかったのかと知らされた次第です。

　あらためてご協力下さった皆様。慶んで下さった皆様に感謝申し上げます。

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