「監督エッセイ」登山を通じて得る、目標に迫る喜びや探究心④

2024年5月18日 06:00

「「監督エッセイ」登山を通じて得る、目標に迫る喜びや探究心③」から

　ラダック、ザンスカール山脈を語る上で、学習院で外せない人がいる。探検部ＯＢの土屋守さんだ。 70年代後半、禁断の地ザンスカールを初踏査、研究して発表。雑誌「太陽」に載ったカラーグラフは衝撃だった。情報が無いなか、手さぐりで単独で越冬した模様を、「岳人」、「山と渓谷」など多くの雑誌に掲載、反響を呼んだ。土屋さんは出版社に勤めた後、ロンドンで日本語誌を編集。現在は「スコッチ文化研究所」を主宰。著書も多数あり、98年に「世界のウイスキーライター５人」に選ばれた世界的に活躍する人物だ。

　文学部同級生のよしみで、「学生時代のザンスカールは、現在の貴方にどのような影響を与えたか？」と聞いてみた。即座に「あらゆる点で、私の原点となった体験。ザンスカールは、一つひとつを自分で調べる面白さ、探究心を教えてくれた」と、語ってくれた。

　土屋さんの探査から40年近く過ぎ、情報があふれる時代になった。今回、学習院山岳部の学生たちは、日本とは異次元と言ってもよいインド、ザンスカールの世界にふれることができた。土屋さんとは比較にはならないが、登山を通じて目標に迫る喜びや探究心などを、少しでも持てたことを期待している。

　帰国した吉田から、登頂した6070ｍ峰に、ラダック語で「王妃の峰」を意味する「ギャルモ・カンリ」と名付け、インド側に申請したことを知った。大英帝国時代からの歴史を持つ、インドのサーベイ・オブ・インディア（インド測量局）に正式に採用されるかは分からない。しかし、この夏、学習院山岳部の学生たちが、インドで、日本で、真剣に山に取り組んだ記憶は、部員一人ひとりの誇りとなって残るだろう。

　最後に、学習院関係者のご支援も成功の大きな要因であった。隊員たちを東宮御所にお招きいただいた皇太子殿下、激励のお言葉をいただいた波多野敬雄前院長、井上寿一学長、多大なご支援をいただいた学習院大学、父母会、桜友会、山桜会、そして、いつも的確なアドバイスで学生を支えて下さる荒川一郎先生。みなさまに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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