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日本近代文学

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おまえ は もう 静か な 部屋 に 帰る が よい。 煥発 する 都会 の 夜々 の 燈火 を 後 に、 おまえ は もう、 郊外 の 道 を 辿る が よい。 そして … もっと読む
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太宰治の手紙を読む 1

太宰治の手紙を読む 1

これから私は、数年前に発見された太宰治の手紙2通を読みつつ、我が座右の銘ならぬ座右の書、猪瀬直樹「ピカレスク」、その第5章「第4の事件」冒頭あたり、第2回と第3回芥川賞を巡る太宰の逡巡のようすを、自分なりに補完しながら思いを巡らせてみようと思うのである。猪瀬先生の偉業に対して、甚だ烏滸がましくも無礼千万な試みと承知はしているけれど、太宰にイカレた一人のじじいの、熱い気持ちを解って頂ければとも思って

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詩人、田中冬二を訪ねて

詩人、田中冬二を訪ねて

0、はじめのはじめに

自分が興味あって他に知らしめたいと思っている事のたいていは、実は、他の人にはまったく何らの興味もない、どうでもいいことなのだ、という社会の道理に、最近やっと気がつきました。皆におかれては、ふふふーん、と軽く飛ばし読みして下さい。

1、はじめに

鉄火場に身をやつし、老境に片足突っ込んでしまった今となっては、甚だ冷や汗三斗の痴話なのであるが、遠い昔、高校時代の私と言ったら、

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沢木耕太郎「天路の旅人」

沢木耕太郎「天路の旅人」

今年は運がよいのだろうか、1月のある日の夜、リビングに設えたコタツに首まで埋まりつつ、見るともなしに見ていたNHK。ニュースが終わり、始まったクローズアップ現代。なんとそこには沢木耕太郎が出演していたのである。
おおっ!
途端、私は飛び起きてテレビの前まで走り(と言っても三歩くらいだけど)18才で初めて行った生麦ストリップ劇場のとき以来、久々のかぶりつきで、番組を食い入るように見た。

そこでは沢

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野坂昭如の語る「火垂るの墓」

野坂昭如の語る「火垂るの墓」

1,はじめに
僕は野坂昭如「火垂るの墓」がとても嫌いである。好きなんだけど嫌い、なのである。
小説でもアニメでも例の三宮駅構内のシーンから始まるのだけど、それが出てくると、もうたまらない。涙腺崩壊などという低レベルの哀しみではない、胸の奥がギュッと締め付けられ、ギュッギュッとマジに痛くなる。開始1分でもう見ていられない、つらい。無理!

2,朗読CD
さて、会社の始業前や昼休み中は、スマホに入れた

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「津軽」に思いを馳せて

「津軽」に思いを馳せて

はじめに
ふと点けたテレビでは、ウクライナの戦争やパレスチナの戦争を映し出したあと、最後に、街角で女性が「今の私達は世界がまさに目前で壊れていくさまを見ているのではないか、人類は何も学ばないと言うことが分かった。」とインタビューに答えていた。
この日本でも、北陸地震に潰れた家屋の中で、まだたくさんの人たちが残されている、支援も届かないという、叫びと嗚咽が詰まった惨状を見せている。
どれもが余りに切

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