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ぺんぎん先生

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#エッセイ

はたちになった日

はたちになった日

誕生日はいつまで嬉しいものだろう?
「はたち」という音からして二十歳は特別だ。三十歳を過ぎると自分より子供の誕生日になってしまうだろうか。高校生の頃は誰かの誕生日ごとにそんな話になった。それから十年近く経ち、私もアラサーになりつつある。

二十歳になった日、私は高校の友人と岐阜近くの伊吹山へ出かけていた。頂上から中腹までだだっ広い斜面が広がっていて、登る分には疲れるばかりでそれほど面白くもない。し

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酔狂の哲学者たち

酔狂の哲学者たち

ピスタチオに乾杯をした前の日の夕方。
私はアテネをぶらぶらしてから、ビールを片手に街外れの丘を登った。

この丘はソクラテスの囚われていた岩の牢獄でも知られており、パルテノン神殿を一望することもできる。私は飛び級を決めた時期で、日本に帰ればソクラテス・メソッドという悪名高き講義が待っていた。学生と対話して進めるアメリカ仕込みのスタイルだが、悲しいかな、この国ではその話術は誰も持ち合わせちゃいない。

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私とギリシャとピスタチオ

私とギリシャとピスタチオ

5年前の春、ギリシャのある島にいた。
この国では一つ為すべきことがあった。ピスタチオへのリベンジである。

その少し前、飲兵衛の友人から大学近くの探偵バーに誘われた。古いカウンターの似合う落ち着いたお店で、本棚の奥には隠し部屋まであるようだ。少しだけ背伸びをして、ホームズかポアロの気分で洋酒を頼んだところまではよかった。しかし、ナッツの盛り合わせにまで手を出したため、私は殻付きピスタチオに出会って

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