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【読書】日本経済には危機感が足りていない!?

こんにちはさん毛です。今回は

『イギリス人アナリスト日本の国宝を守る雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言』

という本を読みました。

https://www.amazon.co.jp/イギリス人アナリスト-日本の国宝を守る-雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言-講談社-α新書/dp/4062728702

タイトルのごとく、イギリス人で元ゴールドマンサックスの金融アナリストのデービッド・アトキンソン氏が日本の弱点や金融に対する所見を述べるという本でした。

それでは本を読んで学んだこと、感じたことについて書き綴ります。

・日本は本当の意味で経済大国?

日本のGDPが世界第3位であることはよく知られている事実だと思います。僕もその順位のことは知っていて日本を一流の経済大国だと誇りに思っていました。

しかし、皆さんは「一人当たりのGDP」が日本が世界何位なのか知っていますか?

国内総生産をその国の人口で割った値を一人当たりGDPと呼ぶ。 国ごとに人口が違うので、国ごとの経済状況を比較するには、通常の国内総生産ではなく一人当たり国内総生産を使う必要がある。国内総生産には名目と実質があるため、一人当たりGDPも一人当たり名目国内総生産と一人当たり実質GDPがある。

2014年に発行された同書では日本は25位で、GDPとの乖離が指摘されていました。現在はさらに順位を落とし、26位、、、

https://www.globalnote.jp/post-1339.html

この事実を知らなかった人は多いのではないでしょうか?僕も非常に驚きましたし大きなショックを受けました。

この2つのランキングを見て、厳しい表現をすれば日本は人口が多いだけと言われても仕方のない状況にあると言えます。(著者曰く生産効率が低い仕事をしている)

事実、GDPと人口には強い相関にあるというデータがあると言われているため、先進国の中で、人口がかなり多い部類の日本の名目GDPが高いのは当然であると本書では記述されています。

・日本経済の問題点は?

日本経済は平成に入り、停滞し「失われた30年」なんて言われるようになり、このままでは「失われた40年」になると言われています。そしてこのまま改善がなされなければ日本は2050年頃には先進国でなくなるという予測もされています。

本書では日本経済の問題点として

1 生産効率の悪さ

2 輸出入の少なさ

3 観光業の弱さ

という3点について述べられていました。

1,生産効率の悪さ

著者は日本の経営の弱点として「数字による分析と細かな修正が苦手」だと本書で記しています。

論理的に考えれば、明らかに答えが出ているにも関わらず、そこから目を逸らす。いろいろな理由をこじつけて何もしない。このような日本の経済人の姿は私からすれば不可解という一言に尽きます。それは他の外国人も同じのようで、外資系企業で働く外国人の間ではこのような言葉があります。「ミステリアスジャパニーズ現象」

また著者がアナリストとして日本興業銀行(みずほホールディングスの前身)の頭取に対し、興銀の利益の低さ等に対し株価が実態を無視して高いという指摘をしたところ頭取は激怒して

「外国人であるあなたにはわからないかもしれないが、この興銀の廊下の壁から、これまで日本経済を支えてきた産業界、経済界の人々のパワーが出ている。それが反映されていることが、株価が高い理由です」

と答えたと言うから驚きました。なんだその理屈は!?ってなりますよね。

何か部活動の根性論であったり、旧日本軍の軍国主義に近しいものを感じます。

これは極端な一例ですが全体として、日本の企業はデータや数字に基づく決定ではなく「〇〇が言ったから」と言う属人的な意思決定や、「なんとなく」という勘頼みの意思決定が多くなされている点が弱点だと述べられています。

もちろん会社に対する愛着やロイヤリティはモチベーションの1つになるとは思うけれど盲信的になってはいけないと感じました。

2,輸出入の少なさ

著者は停滞する日本経済に対し具体的に2つの領域を伸ばすことを提言しています。その1つが「輸出入を増やすこと」です。

日本は資源に乏しいことや、技術を輸出しているイメージがあるので日本は貿易大国だと思っていました。事実輸出総額は世界トップクラスです。

しかし日本のGDPに対する輸出比率は200カ国中ワースト8位、輸入比率はなんとワースト2位でした(2014年時)

これには驚く方が多いのではないかと思います。自給率等が問題に上がるだけあって、かなり輸入しているのかと思いきや、ほとんど自国内で経済を回していることには衝撃を受けました。

もっと言ってしまえば日本の輸出は明らかに「自動車産業」によるところが大きな割合を占めているので、他の産業では輸出に対して消極的すぎることが指摘できます。

輸出入の規模を大きくすることで利益、雇用、波及効果と大きなプラス面が期待できるというのでこれから注力すべきだと感じました。

また多くの企業がグローバル化を就職活動などで売り文句にしていながら、実態は他国に比べてこんなにも割合が少ないことに違和感を覚えました。

3,観光業の弱さ

著者が提言する2つ目の領域が「観光」です。本書が発行された2014年時には世界平均でGDPに対する観光業の占める割合は9%だったのに対し日本は2%と低い状態にあることが述べられています。

同時に日本には数多くの「文化財」が残されおり、伸びしろの大きさというのも説明されています。

実際に政府も観光業に大きく力を入れることを明言しています。ラグビーW杯等の影響もあり着実に観光客数を伸ばしてきていました。

そうしてオリンピックを控えていた中でのコロナ禍での延期。先行きも不透明で非常に残念です。

著者は日本の観光業に対するアドバイスとして「文化財を見せるものにすること」「欧州の観光客を取り込む戦略の策定」を挙げています。

「文化財を見せるものにすること」という点では日本は文化財を基本的に保護するスタンスで扱っていて、観光客に対して見せ方が工夫されていないと言います。

確かに寺社や城の内部で何が行われているか(いたか)想像が付きにくい外国人観光客が充分な説明資料もなく、調度品等も用意されていない、畳が張ってあるだけの空間を見ても楽しめないなと思いました。

例えば茶室であれば、茶道に対する基礎知識であったり、道具も合わせて展示することで初めてイメージがついて楽しめるということです。

「欧州の観光客を取り込む戦略の策定」という点では、日本に来る主な観光客は中国、韓国、台湾の方なのですが、彼らはあまり旅行先でお金を使う傾向にないと言われています。

一方でヨーロッパの観光客は旅行にお金をかける傾向があるとされているので、そのヨーロッパから観光客が来るような戦略を策定すべきということです。

このような「観光」全般の源泉たる「文化財」の保護が日本では非常に少ない予算で行われていることを著者は憂いています。日本が観光立国になるためにはまだ課題が山積していると思いますが、文化財に対するアプローチは一番手をつけやすい領域ではないかなと僕は思いました。

・まとめ

日本は上述した「失われた30年」等、苦しい経済状況にあり、少子高齢化問題や社会保障問題も重くのしかかっていますが、前向きに考えれば「伸びしろ」がたくさんあるとも言えます。来年から僕も社会人になるので、より良い日本の実現に微力ながら貢献できるよう頑張りたいです。




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