見出し画像

歌が苦手なママが歌うから

声の小さいのがコンプレックスの私は、あんまり歌が得意じゃない。

カラオケだって、上手い子の歌を聞いてタンバリンでもならしてる方がよっぽど気が楽だったし、合唱は、どうせ自分の歌など誰にも聞こえてないだろうと思っていた。
もと職場でマイク2本必要だね、と言われたことがある。

おまけに記憶力がないので、鼻唄はいつも適当だ。歌詞が全然覚えられない。

そんな私が、誰かのために自ら歌うようになったのは、娘が生まれたからだ。
子守唄。

「ゆりかご」をうたいながら、歌詞を調べると4番 まであることに気づいた。

「たのしいひなまつり」は、
『金の屏風に移る日を、かすかに有する春の風』(わけわからん)
じゃなくて
『金の屏風に映る火を、かすかに揺する春の風』(めっちゃ情景を歌ってる!)
だと知った。

「おとうさんとおかあさんのたからもの」の歌には、泣かされた。

この4年間、何回歌ってきたことか。保育園言ってなかった娘にとって、インプットの歌があまりにも少ないので、私は基本的な季節の歌を中心に、知ってる歌をできるだけ歌ってきた。


して、彼女も4歳になり、無事に年少さんとなって半年が過ぎた。保育園から、私の知らない歌も覚えて歌ってくるようになり、彼女の世界が広がっていっているように感じた。
テレビの吸収もすごい。長い歌もうたう。

言葉に興味をもつ彼女に、下手なことは教えられない。そう思ったので、うろ覚えの歌は、YouTubeの力を借りることにした。

アニメつきの歌詞つきの、正確な音楽。こどもの歌なら、ピンからキリまでごまんとある。素人?ながら、上手な歌の人もいる。
ああ、適当だった歌詞こうだったのね~。
こりゃあいいや。

ちょっとお部屋が寂しいときのBGMにも最適。

見せっぱなしにしない、YouTubeをうまく活用している気がして、ちょっと得意気でさえ、あったかもしれない。

☆☆☆

夕食後のある日、鍋を洗う私の横にきた娘が何の気なしに言った。

「ママが、歌う歌が一番好きなんだよ」    

思わず、スポンジもつ手がとまる。娘のかおをみる。

そうか。

そうか。
てきとうでも、
歌詞忘れても、
声小さくても、

私の歌が一番好きか。

私の歌が好きなのは、上手いからじゃなくて、きっと私がうたっているからだ。歌のお姉さんじゃなくて、ママが歌ってるから好きなのだ。最近は歌わなくなってたけども、赤ちゃんの頃からだっこして、何度も何度も、歌ってきた子守唄。
子守唄は、「寝つく」のが成功だと思っていたが、こんな嬉しい副産物もあったんだなぁ。

 

この前、読み聞かせをやっている方が、「読み聞かせのコツありますか?」という質問に答えていたのを思い出した。
世間的に、抑揚をあまりつけない方がいいとか、はやさはこれくらいがいいとか、言われているものもあるけれど。
「なんでもいいと思います」
その方は、言葉を選びながら、丁寧にそう答えた。
「お母さん(お父さん)が、読んでくれるのなら、きっとこどもはそれが一番嬉しい」
テクニックのあるプロに、お話し会で聞くのと、お母さんが読んでくれるお話は、全くの別物ですから。

上手いとか、下手だとか、自信があるとかないとか、そういう次元じゃないものの価値観で、こどもはみてくれているのかもしれない。


きっと、娘のために歌うから、娘の気持ちが満たされているのかもしれない。娘に向き合っているのが伝わるのかもしれない。

こんなにコンプレックスだらけでも、それでも好きと言ってくれるのが、ありがたい。

胸が温かくなって、でも上手い返しが見つからなくて、結局「ありがとう」と、言うしか思い付かなかった。

ありがとう


ちなみに、子守唄を歌い出した私に、「うん、もういい」と言ったのも、同じ娘ではあるので、こどもというのは、かくも面白いものである。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?