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デブとポジショントークと村上春樹

高校の頃体重が104kgまでいった。付いたあだ名は0.1トン。時を同じくして村上春樹を読まなくなった。基本、彼の小説の主人公は金持ってて女にモテる。そんなヤツが悩んでいるのが

なに甘えた事抜かしてる!

と鼻につくようになったのだ。特に思春期だから、女にモテてるのに悩むというのが一際腹立たしく、「ノルウェイの森」をベタ褒めしていた図書委員の先輩(女子)に
「あんな出来損ないのエロ小説が良いって、先輩、欲求不満なんですか?」
と食ってかかり、ピュアな先輩を赤面させてしまった事は、僕の黒歴史の引き出しの中にそっとしまってある。

もし今の自分がその場にいれば、

欲求不満なのはお前な!

と風呂場に正座させて説教するところだ。

そんな自分がだ、昨日深夜、唐突にもらったスキをたどって、記事を見に行くと

「世界から見た日本は本当に恵まれたわがままな国」つたやさほ

というタイトル通りの内容の投稿があって、ついうっかりこういうコメントをしてしまった。

確かに日本は恵まれてると思います。ただ世の中には「ない」苦労だけでなく「ある」苦労もあるんだと思う。
仕事やお金、家族ですら「ある」苦労というのも侮れないかもしれません。

我に問おう。お前は金が「ある」彼女が「ある」ヤツが悩むなんて贅沢だと言ってなかったか?
これってポジショントークってヤツじゃない?
偉ソーになぁ。

投稿後不安になり、相談しようにも、川遊びで疲れたカミさんは爆睡。かまってちゃんシンドロームも発症し、noteで知り合ったサヤ姉さんとあきらとくんにTwitterで「大丈夫かな?」と訊く情けなさ。
深夜にも関わらずご対応頂きありがとうございました。

この暑さと、貧乏でクーラーが使えないこと(※「精神的依存なのか肉体的依存なのか止めることができないモノがある」をご参考下さい)に免じて、つたやさほ様及び関係者の皆様の寛恕を賜れたら幸いです。

さて、その0.1トンの高校最後の授業は体育。
受験中の大事な身体だということで、ハードな活動ではなく「鉄棒」で遊ぶ内容だった。授業にも勉強の息抜きというリラックスムードが流れていた。

いつもは鬼のような体育教師が
「逆上がりが何回出来るかやってみよう」
と優しげに声を上げる。

僕はみんなの脇で(逆上がりなんか出来るかよ!)と小石を蹴って不貞腐れていたが、何を思ったか、ラオウと呼ばれていたその体育教師が近寄ってきて、
「逆上がりは体重の問題じゃなくて、タイミングの問題だから、まず鉄棒握ってみなさい」
と笑みを浮かべながら言う。

ラオウのいつもと違うアプローチに驚きながら鉄棒を握って、目を閉じて地面を蹴ると、フッと身体が浮き、鉄棒の上に肥満した腹が乗っていた。

その瞬間、頭の中で何かのスイッチが入った。後で友人に聞いたら、ラオウはもちろんのこと、みんな物凄く驚いたそうだ。そういう周囲の光景などは記憶にない。

その半年後、僕は64kgになっていた。読書は好きだったから、受験勉強ほぼ放棄して、トレーニング理論の本と栄養学の本を読み漁り、1ヶ月かけて運動と食事のメニューを自分で考え、実践したのだ。

すると住んでいる世界が変わった。とにかく女の子の視線が違う。汚いモノを見る目じゃあない。
「そういうの自意識過剰って言うんだよ」と言う人もいようが、あれは絶対に違う。整形した事がある方だったら分かってくれるかもしれない。

そして、女の子がフツーに話しかけてくれるようになった。まず「ダイエット方法教えて欲しい」と、接近して来るわけだ。待望の彼女もできた。

今でこそ、「デブ」ではなく「オッサン」という別種の残念な生き物になってしまい、女の子からの視線は昔に戻ってしまったかもしれないが(あまり気にならなくなってわかんなくなった)そりゃまあ良い時代もあった。

しかし、未だに村上春樹は読まない。僕の中で彼は「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」で止まってる。

あれ?何が言いたかったのだろう?
まあ、そんな話だ。みんなありがとね。

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