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旅する侍キュイジニエ 撮影秘話

きっかけは...


2019年の正月にひょんなことから出演させていただいた、フジテレビさんのアインシュタインの食卓という番組から全ては始まった。 
1時間番組で僕は後半の30分も放映され、カメラも苦手で慣れてもなく、それも初めて有名なタレントさんとの共演はものすごく緊張した。

菊池桃子さん、鈴木杏樹さん、鈴木浩介さん方と共演させていただいた。
生まれて初めて、有名な芸能人の方々と間近で、というか0距離で。

不思議と、収録の前日の夕方にはミーハーな浮かれた気持ちは消えていった...

それも、前日の夜、僕が番組内で担当させてもらう科学的においしいハンバーグの作り方の他に、分子料理らしい料理を1品創ってほしいと電話が...
できれば、ハンバーグと関連するものがいいっと...
いや...ハンバーグってミンチだし...
番組P「包むのは?」
大野「い、いや、それは餃子...」
番組P「細長く詰めるとか!?」
大野「ソーセージじゃ(笑」

打ち合わせしたかのような、B級コントの末、思いつきで案を出してしまった
大野「ハンバーガーはどうです?」
番組P「おっ、最高です」

ただの思いつきで、全くイメージもできていない中、分子料理的なハンバーガーに収録前日の夜に決まった。
でも、なんだろう。電話を切る前にイメージがすぐに湧いてきた。
楽しくなってきた、いつもの調子だ。
いくつか考えた末、分かりやすく?再構築にすることにした。
再構築系は、実はそんなに好みじゃないんだけど、再構築だったりと既存の料理を仕立て直すときに自分に課しているルールが1つだけある。
しっかりおいしい上で元の料理を超えること
それは、総合的なおいしさの面だけでなく、再構築ならではの驚きや発見という点でも表すことができる
今回は、テレビでも伝わりやすいよう意外性・驚きにポイントを置いて創りあげた。
モデルは一般的なチーズバーガー

分子料理っぽさを演出するためにパーツは少なくとも近未来観、人工的な感じを表すため四角形を意識した。
・ブルノワーズ(極小さい賽の目)にカットしたピクルス
・キューブ状にしたトマトとチーズ
・ソースの代わりにスパイスと蜂蜜のピュレ
・食感にチーズと黒胡椒のラングドシャ
・ハンバーガーには欠かせない香ばしさのため、香り満点のブリオッシュの泡
・そして、さっと炙った最高級の和牛

それらを、チーズバーガーの写真がプリントされた器に盛り、口に運ぶ前に視覚からチーズバーガーを認識、意識させるように仕向け、全てを一口で味わうことでチーズバーガーと完成する口内調理の一品を創った。

収録当日の朝早くに店へと1人出向き、ハンバーガーの仕込みをし、スタジオがある現場へと持っていった。

一夜漬けで創りあげた再構築チーズバーガーは嬉しいことに大好評で、ブツ撮りしたのを食したPやDも「ぉおおっ、うまい」っと最高のリアクションをしてくださり。
収録本番、杏樹さんと桃子さんは「遠くからチーズバーガーが走ってきたと思ったら、グワっとチーズバーガーが一気に襲ってきた」「それに、おいしい」と最高と感想もいただいた。

チーズバーガーとともに僕が出演したのは、最後の30分。
視点が定まらないほど緊張し、タレントの方々に浮かれる気持ちなんて微塵もなくなっていた。もう、スイッチが入っていた。営業の時と同じモードに。

そして出番まで、撮影している機材のところで演者さん方を眺めながら、番組を企画されたトップの方々に緊張をほぐして貰いながら色々お話しさせていただいた。
そう、この会話から全てははじまった...

僕が、絶望的なまでに激しく厳しいレストランで修行をし地位を築き、世界中を包丁2本持って体当たりでバックパッカーしながら様々なレストランで働いていると。
僕の両親も40、50年前にバックパッカーをし、その最中で出会ったストーリーもまた面白かったという。

楽しく撮影を終え、それからもお店に何度も食べにきてくださり、僕が料理を考えるのが早いことや、即興料理が得意なことと色々盛り上がり、一度、現在もお世話になっている方にヨットでのクルージングに誘っていただき、船の上の小さなひと口コンロで僕は豚肉料理と船に置いてあったウィスキーでソースをつくると、すごく感激してくださった。

それから、いくつもの企画を考えてはボツになり、今回、異例中の異例に違いない。
大野 尚斗のドキュメンタリーを1時間番組を2本。計2時間も撮ってくださることとなった。
ミシュランの星もなにもない無名の自分などを...
失礼だけれど正直に、最初は不信感の方が強かったかもしれない。
当時、人を見る眼もなかった僕は、その時の自分の感情と焦りだけに駆られて、不誠実極まりない嘘だらけの人間性を見抜けず会員制のレストランのシェフを請け負い、その後はタイという海外でのレストラン立ち上げをタイ人に持ちかけられては裏切られ、数多くの負債も負った。
もちろんプラスになることも数多く作り上げることができたが、人間不信に陥っていた。
だけれども、全ては経験。死なない限り何事も自分を強くさせるための試練とし、今ではいい勉強になったと思っている。
現に僕は強く成長した。

自らを自信満々に強く大きく語る人間にホンモノはいない


旅する侍キュイジニエ...
兼ねてより、強く志していた企画が僕にはあった
食べさせ歩き

いつも、各地の生産者さん方々の元を訪れ勉強させていただいては、食べ歩いてばっかりだった。
生産者さんのほとんどは忙しく、当時シェフをしていた東京のお店まで来ていただくのは難しかった。
いただいた食材で創った料理の写真を送ったりはしていたが、僕が生産者さんの立場だったら、その食材がどういう風に料理されているのか、すごく気になるし、食べてみたい。
なにより感謝を伝えたい...


そこで、僕が生産者さんのもとでその方の食材や調味料を使って料理を創り、食べていただく食べさせ歩きをしたいと伝えはじまった。
でも、お金もなにもない僕1人でそれは難しく、旅費や宿泊費を考える段階でパンクしてしまう。
嬉しいことに、ドキュメンタリーの日本編を撮っていただくにあたり、この企画が叶うこととなった。
っといっても、番組として盛り上げなければいけないこともあり、訪れた生産者さんのご自宅のキッチンにあるものと、その生産者さんの食材、調味料だけで即興料理ということになった。ここで即興が結びついてくるとは...

テレビということもあり、実は事前の仕込みとかあるだろぅと思っていたら、ドキュメンタリー・・・僕、大野 尚斗のリアルを撮るため完全にガチの即興、台本もなにもない

本当にたくさんの方のご好意に助けていただいている。
タイトル文字は、昔バックパッカーしているときにフランスで出会った、ニューヨークのMOMA大河ドラマのタイトルも手掛けている書道家アーティストマアヤ・ワカスギさん
音楽は、僕も大好きなドラマ、リーガルハイストロベリーナイト、アニメでは僕のヒーローアカデミアハイキューと大人気の作曲家さんである林ゆうきさんが曲を創って下さった。
メインのシーンになるはずだったペルーで働いていたレストランでの修行シーンはコロナでカットとなったにも関わらず、尽力して下さった制作の方々に感謝を込めて。
僕は全力でやるだけ...


久しぶりに生産者さんの元へと訪れ、挨拶を交わし、僕の大好きなパティスリーのお土産を渡し、案内していただきながら、彼女、彼らの魂こもった食材や調味料を教えていただく。
さぁ、料理をする時間がきた...
・・・・・・
一応イノベーティブフレンチの料理人。和食や鮨職人ではない
・・・・・・
バターもオリーブオイルも小麦粉もない...
冷蔵庫には... なまこ!?タコ!?マグロ!?

さぁ、どうしよう。
どうする

続きは、
旅する侍キュイジニエ
後編となるBSフジ 5/16 18:00〜
ご覧ください

https://www.bsfuji.tv/cuisinier/index.html?fbclid=IwAR3DZSraH5WWsI4XK8DN-lXCpqHJF1WgV3UnJEv96mCotvtENbK7M-TsdL0

#シェフ #料理人 #料理 #食 #ドキュメンタリー #テレビ  

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