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Alinea Ep.Ⅴ

Rules? There are no rules...


部門シェフとしての初日。

メインを担当していた部門シェフと魚や温前菜などを担当していた部門シェフも退職した。

アリネア史上、地獄ともいわれた最少のスタッフでの営業

部門シェフは5人+スーシェフ+サイモンとベーグルの8人で毎日90名の営業が始まった...

品数が多いアリネアでは、ポジション分けが難しい
自然と1人が受け持つ料理が多くなった。
僕は、カナッペ2品・前菜2品・温前菜1品・デザートマットの仕込みから始まった。

当時のデザートマットは、僕が研修した時に食べたチョコレートタルト
液体をテーブルへ注ぎ、ソースを描き終わり型を外すと固体となりタルトが出来上がっている。
そのチョコレートとソースの仕込みをしながら、カナッペや前菜などの仕込みをする。

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レストランで働いたことがある人には普通の事だと思うが、面白いことにこれだけの品数を各々が仕込んでいく中、調理器具の数は取り合いになる

ピュレ系が多いにも関わらずミキサーは3つしかない。
その上、その内1つはドライ専用で液体は使えない...
というか、若干ヒビ割れていて液体に使うと大惨事がおこる...
バットの数は恐ろしいくらいに足りない
営業前に自分の持ち場の冷蔵庫へ隠すのが当たり前だった。

シェフの言うことが何よりも最優先であるキッチン
ミキサーを使いたくとも、試作中や撮影中でシェフが
「Vitamix!(バイタミックス!)」と叫べば、僕らは「OUI CHEF!」の返事とともに差し出さなければいけない。

道具の取り合いは熾烈な争いだった

5人しかいない中、誰もが数多くの仕込みを抱え休憩を取れるものなど誰一人いなかった。
だからこそ、スタジエ(研修生)がたまに来ると全員が奪おうとする。

そんな中、早くも2週間が経ち
シェフが配置替えをすることになった(たった5人しかいないのに)。

僕は、シェフパティシエとしてデザートマットと風船とアヴァンデセール、記念日の一品を担当することとなった。
もちろん、それだけのはずではない。
あと冷前菜2つと温前菜1つもいっしょだ。

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それと同時に最後のデザートマットの内容を新しくする事となった。
今までのチョコレートは重すぎるという理由で、トロピカルフルーツのデザートだ。

よく分子料理を扱うお店だと「SOSA」の商品をそのまま使うお店が多い。
特に僕が日本国内で見たお店のほとんどはそうだった。
それでは幅は広がらない。
アリネアでは、1つずつの材料を自分達で配合してレシピを創っていく。
だからこそ、風船も産み出された

その経験を活かして、僕自身も今でもそうやって創り出している。
1つ1つの特性を理解することで、創作の幅が広がっていくのが楽しい。
分子料理のテクニックを使っているお店で、日本でそこまでやられている料理人はみるのだろうか?
消えないけど儚い泡
硬いけど柔らかいもの

と、楽しい魔法のような世界を生み出せる知識と技術を学んだ。

仕込みの最中、営業が終わり深夜からシェフ達の試作と創作は始まる
他の部門シェフたちが帰る中、23時間も生き抜いてきた自分は疲れや眠気など等に忘れた感覚だった。
シェフ達の創作と仕込みに参加し、たくさんの事を教えてもらうようになった。
深夜営業後、4人で笑いながら、たまにシェフが買ってくるピザやホットドッグを食べながら色々な事を試していた。

既成概念
固定概念
ルール

そんなものはない。
アリネアのシェフ達は積極的に未知な世界へ突っ込んでいく
僕の性格と同じだったことがうれしかった。
自分では理解できていなかったけれど、未知への挑戦をする人は変人と言われるらしい。

小さい頃から理解できなかった...
変わっていると言われる所以も、そして若干のコンプレックス
それも、どうでもよくなった。
何しろ、世界のトップで戦うシェフたちは、更にその上をナチュラルに目指しているのだから

「やってみなくちゃわからない」

僕は何にでもチャレンジする、試す。
脳内で読める事は別だが、とにかく初めてのことになんでも挑戦する。

僕の中の靄は晴れ、清々しく吹っ切れたようだった

新しいデザート トロピカルフルーツの完成には少々シェフ達も苦戦していた。

特にデザートのメインとなるココナッツボールに。
粘度・濃度などを調整しエスプーマを使い、液体窒素の上で球体につくっていく。

簡単に説明するとエスプーマは、濃度や粘度があるものにガス(亜酸化窒素)を注入し、様々なテクスチャーのフォームやムースを創れる。
液体窒素の上で球状に仕上げていくには、ムースの中のガスを抜きながら形をつくっていく。

キッチンで試し成功し、その晩ソワニエ(VIP)のテーブルへ提供した
成功したかのように見えたのに...
突如、テーブルの上でココナッツボールは爆発し、現場は見ていないが悲惨な状況だったらしい。

その日の営業後、シェフ達が反省会もとい、欠点を探り完成させるために取り組んみ、僕も横で見ながら片付けなどを手伝うだけだが加わった。
原因は、粘度が高すぎてガスが抜けきらず、時間差で爆発してしまったようだ。

どんなミスが起ころうとも絶対にめげず、途中で投げ出したりはしない。
どんな事にも理由がある。
誰も教えてくれない、誰もしたことがないことだ。

数学の問題と同じで
誰にも解けない問題、だけど答えはある問題を創る」

僕たちも、その問題を自分たちで創り、自分達で答えまで導き出すクリエイターでもアーティストでもある職人だ。


To be continued...


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