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映画『煙の立つところ』から学ぶ、ショート映画の本当の魅力

みなさんこんにちは!

今回は、消防士たちが抱えるトラウマを鮮明に描いた映画、『煙の立つところ』の監督インタビューや制作秘話をご紹介したいと思います。


人気海外ドラマ『スーツ』でも知られるトム・リピンスキーを主役に迎え、実際の大きな事件をもとに制作されたこの映画は、なぜ長編映画ではなく、あえて”短編”という短いコンテンツで描かれなければならなかったのか。


そして、監督が映画を撮影するにあたって実践した”とっておきの方法”とは。


トム・リピンスキーファンの方はもちろん、映像制作をされている方や、これから映画を作ってみたい!という方にもおすすめの内容です。

ぜひご覧ください!

〈作品時間〉11:03
〈監督〉Evan Kelman
〈あらすじ〉ある救助活動で奇跡的生還を果たしたアンドリュー。現場復帰のために部署に戻ってくるが、彼が負った傷は表面的なものだけではなかった。


***

「この映画は実話に基づく」の難しさ

巷でよく見る”実話に基づいた映画”は、多くの人を惹きつける魅力的な作品でありながらも、それを創り上げることがいかに難しいか、ということを同時に示唆しています。


この映画も、(「ブラック・サンデー」として知られる)2005年のとある火災事故がもとになっていますが、監督は実際にそれを伝えるのではなく、あくまで別の物語として描くように意識したのだそうです。


なぜなら、その事故が、短編映画で描ききるにはあまりにも重すぎるものだったからでした。


そのため、監督は実際に同じような事故から復帰した様々な消防士らに話を聞いて、彼らの話を組み合わせたといいます。

確かに劇中では、あの火災事故や主人公の抱えるトラウマが何だったのか、ということはほとんど明かされません。


しかし、あえて詳しく描かない、ということが、この映画の緊張感をより高め、観る人を作品に没入させる理由なのかもしれませんね。


ちなみにその事故では、逃げ場のなくなった消防士たちがアパートの窓から飛び降りることを余儀なくされ、計3名が亡くなったほか、多くの消防士たちが負傷したそうです。


火災シーンでの音声をよく聞いてみると、消防隊の数を数える声が聞こえてくるかと思います…。



何気ない日常シーンが物語るもの

劇中、帰ってきたアンドリューに対し冗談を投げかけ合う消防隊たちの姿は、一見、何気ない日常の風景を描いているかのように思えますが、実はこのシーンこそが、彼らの直面する過酷な現実を物語っています。


監督は消防士たちから話を聞いていた際、あるショッキングな事故現場からの帰り道で、1人の消防士がジョークを言った、という話が印象に残ったのだそう。


消防士という職業柄、過酷な現場を生き抜くには、時にジョークをかますことが彼らにとって非常に重要なことだったのですね。


そんな消防士たちの背景を見事に描いたこのシーンは、心にずっしりと伝わってくるものがあります。


撮影前はバーで”あること”を

また、監督はそんな消防士たちのアットホームな雰囲気を作り出すため、”あること”を行ったのだとか。


それが、バーで俳優たちを集め、即興で演技をしてもらい、その様子をフィルムカメラで撮影することでした。


あなたは誰かのキャプテンへの昇進を祝っていて、何時間も飲んでいます。そして 今は、愛し合っているふりをしなさい」


「今、新しい男がバーで気絶しました。彼を指してからかいます。」


このように様々なお題や設定を監督から投げかけられた俳優たちは、次第にお互いからより良い言葉が出てくるようになったといいます。


なるほど、このような事前の演出が、彼らのリアルな距離感を生み出していたのですね…!



「愛と責任」の物語

この物語は、消防士がトラウマから復帰しようとする物語でもありますが、同時に、”愛と責任”という普遍的なメッセージも伝えているそうです。


現場に戻る消防士らは、戻れなかった仲間たちへの責任感から、復帰を決心していることも多いといいます。

私たちも普段、あえて平気な顔をしたり、尊敬する人を失望させたくないと思ったりすることはありますよね。

”生と死”という重いテーマの上にこそ描かれてはいるものの、彼らの抱える基本的な感情は普遍的なものとして描かれているのです。


だからこそ、私たちはこの映画の中に入り込み、主人公に共感することができるのかもしれませんね。


ショート映画は氷山の一角

監督によると、ショート映画は水に浮かぶ氷の一角のようなもの。


「私たちが推測することしかできない、はるかに深い問題を抱えた、はるかに大きな世界のほんの一部をほのめかす小さな物語を見せているから」だそうです。


この物語も、実際の火災事故についてはほとんど触れられないまま、彼らの様子が淡々と描かれていました。

しかし、ちょっとしたシーンやアンドリューの繊細な表情からは、彼らの過酷な環境と複雑な思いが伝わってきます。

完全に説明されるのではなく、見る人々にとって想像の余地があるということこそが、やはりショート映画の醍醐味なのだと思わせてくれますね。


いかがでしたでしょうか。

この作品と同じく、電車の運転手が抱えるトラウマを描いた映画『ロコ』もSAMANSAで公開中ですので、そちらもぜひご覧になってみてください!!


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