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〈”多様性の国”アメリカ〉を詰め込んだ映画『マイ・ピープル』が映し出すアメリカ事情とは?

緊迫感のあるシリアスなクライム映画から一変、事態は思わぬ方向へ…。

「アメリカ」という国、そして、「多様性の時代」の今をまさに象徴するSAMANSAの映画『マイ・ピープル』

クスッと笑えるジョークで、シンプルながらも力強いメッセージが込められたこの映画は、いかにして現代の”アメリカ”を詰め込んでいるのでしょうか?

この記事では、映画『マイ・ピープル』の魅力とともに、劇中ではあまり触れられていないアメリカ事情をご紹介していきたいと思います!

〈作品時間〉10:27
〈監督〉Nino Aldi
〈あらすじ〉
黒人・白人・アラブ人のグループが地下鉄で強盗を始める!しかし男たちは誰も自分と同じ人種の人を強盗したくなかったため、強盗計画がストップしてしまう...!

***

「”多人種”の国」アメリカ

映画の中では、ハイジャック犯たちを含め、人質の多くが複雑な人種・民族的アイデンティティを持っていることが大きなポイントとなっていました。

アメリカの主な人種構成は、白人系、黒人系、アジア系、先住民系にざっくりと分けられますが、一方で、古くから移民の受け入れを多く行ってきたことでも知られています。

そのため、例えば「白人系」の中でも、かつて移民してきたヨーロッパの様々な国にルーツを持つ人(ドイツやイタリア、アイルランド系などなど)が非常に多いのが現状です。

また、白人系や黒人系の人種でありながら、いわゆる”ヒスパニック”や”ラティーノ”のように、スペイン語圏、南米を起源に持つ人も多くいます。

さらに、近年では、移民してきた家族の第二世代などが、先祖の母国の文化や言葉を全く知らないことが多いなどともよく言われています。

肌の色や顔立ちなど、外見的な特徴だけで見るとはっきりと人種ごとに分かれているように思えますが、文化的な共通点やルーツなどの民族的側面から見てみると、本当に複雑なアイデンティティを持つ人が多いということがわかります…。

まさにジャマールがいった通り、遺伝や地理的な区分だけでアイデンティティは決められないのですね。

「人種のサラダボウル」の本当の意味

また、このような人種・民族問題は他の映画でもよく描かれていますが、それにしても、なぜこんなに「アメリカ」という国がフィーチャーされることが多いのでしょうか?

その理由の一つは、みなさんもよく聞いたことがあるであろう、「人種のサラダボウル」という言葉にもよく現れています。

例えばブラジルなどでは、移住してきた白人と先住民系との間で生まれた混血の人も多くいます。

しかし、アメリカでは混血があまり進まなかったため、家に帰れば、他の人種の人と関わるということはあまりないそうです。

また、黒人公民権運動の影響などもあり、それぞれが持つ独自の文化を互いに尊重し合いながら共存していこうという考え方が強くあります。

そのため、多人種が一つの「アメリカ人」として混ざり合うのではなく、まさに「サラダボウル」のように個々の野菜がそれぞれ形を残しながら混ざり合っているからこそ、余計に”どの集団か”ということが重要になってしまう場面が多いのかもしれません。

格差に人種は関係ない

また、一部の地域では白人至上主義が根強く残るアメリカですが、格差の広がる不安定な現代において、もはや誰がいつホームレス状態になろうとおかしくないのが現状です。

もちろん正確には、ホームレスの人の中でも黒人系・ヒスパニック系を占める割合が圧倒的に多いことは明らかであり、その人種格差を無視することはいけませんが、一方で、白人系の人が半分近くを占めているのも事実です。

劇中で、「お金持ちかどうか」という分け方をした時に、ケビンが「あいつらもいつかは俺と同じになるかもしれない」と言っていた背景にはこのような事情があったのですね。

”ゲイ”は支持するけど、移民は許せない?!

また、ある1人の男性についてですが、移民に反対を唱える保守的な人物かと思いきや、LGBTQ支持というリベラルな側面も持っていたのは、結構珍しいのではないでしょうか。

アメリカでは、長年移民の受け入れに対する支持率が少しずつ上昇しており、その大多数は移民受け入れに賛成しています。

しかしながら、”移民拡大”に関しては、2022年時点で支持率が2年ぶりの低水準に落ち込むなど、移民問題の複雑さも感じさせます。

ところでアメリカにおけるLGBTQの割合は、2021年で約5.6%ほどだそうです。

あくまで統計ですので実際にはもう少しいる可能性が高いですが、人質の多くが”ゲイ”として意思を表していたのも、性的マイノリティ への理解が少しづつ広まってきている影響なのかもしれませんね。

ナスカーorスターバックス ?

ちなみに劇中で登場した「ナスカー」ですが、アメリカを代表する自動車レースのことで、ほぼ毎週開催されるレースも、毎回超満員になるほどアメリカでは熱狂的なスポーツイベントとなっているのだそうです。

日本ではあまり馴染みのない光景ですが、アメリカ人にとってはスターバックス と同じように欠かせない存在なのかもしれません笑

また、「ペーパーorプラスチック?」という質問も出てきましたが、これはレジの時によく聞かれる質問で、「紙袋とビニール袋どちらにしますか?」という意味なのだそうです。

最近、紙ストローを使用するカフェなどが増えていたりするように、ビニールやプラスチックの離脱が進んでおり、環境問題への意識の高さを感じることができます。

みんなひとつの塊

しかしながら、ジャマールもアメッドもケビンも、みんなとってもいいことを言いいますね☺︎

特に最後のアーメッドとケビンの言葉は、アメリカだけでなく、まさに多様性の進む世界の今を表しているのではないでしょうか。

”みんな違ってみんないい”精神も大事だけれど、正確には共通点が全くないわけではなくて、みんな同じ人間である…。

そんなつい忘れがちなことを思い出させてくれる素敵な映画です!

ちなみに、『ムーンライト 』と『ラ・ラ・ランド』も、非常に対照的な作品でありながら、どちらもアメリカの異なる側面を映し出しており、アメリカの多面性を感じることができますよね。
映画好きとしてはどちらかを選べる自信がないのですが…笑

両作品もチェックしてみると、改めてこの『マイ・ピープル』の背景をより深く味わえるかもしれませんね!

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