【短編小説】やるやる
そのクマは自分の身長がコンプレックスだった。
別に低身長な訳でもないが、友人は軒並み背が高いので一緒にバスケするのは気がひけるのだ。
誘われて来たものの、あまり乗り気ではない。
とりあえずストレッチをして時間を稼いでいるが、そろそろ呼ばれそうな気がする。
やだなあ
「おーい、クマ、やるのか?」
「やるやる!」
やりたくないなあ
今度はアキレス腱をストレッチすることにした。
「なあクマ、やらないの?」
「やるやる!」
やると口は言ってても体は動かない。
今度は手首を伸ばすことにした。
「クマ、コート使える時間終わっちゃうぞー」
「おう、ごめん、まだ手首伸ばしてて」
「いつまで準備運動してんだよ」
「いや、怪我すんの怖いからさ」
今度は首を入念にストレッチした。
ストレッチしながら首も痛み始めるなんて災難だ。
仕方ない。まったく、友人には自分の気持ちもわかって欲しいもんだ。
「おいクマいつまでストレッチしてんだよ、ほら行くぞ」
そう言われて渡されたボールを持ち、ため息を吐きながらドリブルをした。
さて。
どうやって目の前のキリンたちを追い抜こうか…。
クマはゴールを見上げて首も頭も痛くなったのだった。
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