【短編小説】来ない誕生日
明日は誕生日。
ケーキとココアを用意して誕生日を迎える準備をした。
キャンドルに火を灯して、これで完璧。
あとは誕生日を迎えるだけだ。
時計の針を見ながら止まれと念じた。
しかし針は止まらない。
自分の気持ちとは裏腹に針は2月29日を通り過ぎた。
目の前のケーキが溶けていく。
また誕生日を過ごせなかった。
周りが順調に歳をとっていく中、僕だけが取り残されているみたいだ。
意地を張ってうるう日を待つことにした。
針が数度ずつ動いていく。
喉が渇く。
眠気がやってくる。
少しずつ僕の中で細胞が分裂するのを感じる。
カチ
カチ
カチ
カチ
最後まで意地を張り通せた。
けれど、生きたまま誕生日を迎えることは叶わなかった。
ハッピーバースデー、僕。
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