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父性

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父についてのエッセイです。おもしろいと思ってもらえたら嬉しいです。
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記事一覧

父性(エッセイ)1

幼い頃、父と手を繋いで橋を歩いていた。
私がたくさん話しかけて、父は私の話を聞いていた気がする。
父と、町に唯一ある、駄菓子屋さんに行った。
そこには駄菓子のほかにぬいぐるみやおもちゃが置いてあった。私は黒と茶色の猫のぬいぐるみを買ってもらった。

その頃の父は、実家の鉄工所に働いていた。
父の兄が継いでいて、父は祖母に甘えてサボっていた(母が言っていた)。
本人は小学生の頃から家業を手伝っていた

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父性(エッセイ)2

小学生の頃の父は、社交性があった。
なんでも、笑顔で引き受けていた。
田舎町では、たくさんの行事があった。町内や海辺のゴミ拾いや草むしりに、配管の確認作業。婦人会。誰かが亡くなると公民館で葬儀が行われるため準備や手伝いに行くこともある。

夏祭りの準備から片付け、クリスマス会や左義長があった。町の子供は多かったから、子供たちで集まる行事は好きだった。
父は、力仕事をしているから、他の人が持てない荷

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父性(エッセイ)3

小学四年生の頃、父とテレビを見ていた。
十代の女の子が、「30歳になるまでに死にたい。自分が衰えていくのをみたくない」と言っていた。衝撃的な発言だった。私はよく意味がわかっていないまま分かる、と口にした。

父が、じゃあ、今死ね!すぐに死ね!と怒鳴った。父は酔っ払っていた。ヤジを飛ばすような怒鳴り方だった。
煽られて死ななくてはならないと思った。
父に勇気がないなら一緒に死にに行くか?と言った。答

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父性(エッセイ)4

父はお腹が弱い人だった。
脂っこいものを食べ過ぎたり、ストレスが溜まると下痢をする。
父の実家に行く時も、トイレ休憩ばかりしていた記憶がある。
私もその体質を受け継いだ。歯の矯正をはじめてた頃にお腹を壊しやすくなった。
でも父は力仕事をしていたから筋肉むきむきだった。対照的に私は、痩せすぎていて周りに心配されていた。

父は賭け事が好きだった。
夏の甲子園のトーナメントが出ると、どの高校が勝つのか

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父性(エッセイ)5

中学生になったばかりの頃から父のストーカーが始まった。父は携帯電話を持っていなかったため電話やメールがたくさんくる、そんなストーカーではなかった。

学校の校門の前に父の車がたびたびあった。迎えに来てくれたのかと思ったが、私の姿を確認すると父はすぐに車を走らせていなくなった。
自転車を漕いでいると、途中のコンビニに父の車が停まっていたこともある。最初は偶然かと思っていたが、私と目が合うと父は車を走

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父性(エッセイ)6

父は私が高校生になったころ、別の工場で働き始めた。母から聞いたわけではなかった。父から聞いたわけではない。仲良くなったばかりのSちゃんから聞いた。
Sちゃんの母親が、私の父と同じ職場にいたらしい。どうしてわかったんだろうと思うとちょっと怖かったので、聞かなかった。
父はとても穏やかで仕事ができるいい人らしい。お世辞で言っている感じではなかった。相変わらず外面はいいようだし、仕事ができるのは本当のよ

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父性(エッセイ)7

高校時代を勉強と仕事と遊びに費やした私は当時の父をよく知らない。
父はいつのまにか私に構って攻撃をしなくなった。矛先はどうやら母に向かったようだった。

その頃の私は、家のローンや光熱費や携帯電話の使用代金がどれくらいのになるのか知っていた。実際に数字で見ると、もっと働かなきゃといった気持ちになった。

学費は奨学金制度を利用した。できる限り電車に乗ることは避けて、自転車で通学した。
高校時代の友

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父性(エッセイ)8

弟は無事高校に進学をした。
しかし、両親は離婚をしなかった。
父が無言の抗議を繰り返したため諦めるしかなかったのだ。

父は、家の水道を全て出しっぱなしにするという嫌がらせをはじめた。トイレの便器を割って壊したり、炊飯器を破壊したり、ちまちま破壊をするようになった。キッチンの壁はケチャップとマヨネーズまみれになっていて、はじめて家にゴキブリが出た。
私は何かあった時の証拠になるかもしれないとすべて

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父性(エッセイ)9

高校を卒業すると同時に、父との文通は終わった。アドレスを聞いてくるかと思ったが、父はメールを知らないようだった。おそらく電話だけのプランにしてあるか、アドレスの設定のやり方がわからないのだと思う。

父は、家に籠ることが増えた。酒を飲んでいた。小さな文字が見えなくなってきたから、ルーペを使って新聞を読んでいた。新聞の端に自分の名前を書き続けていた。
父のいるリビングには誰も寄りつかない。
父は4人

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父性(エッセイ)10

先輩とルームシェアをしたり、友達の家に居候をして、家に帰らなくなった。家にお金を入れるのもやめた。たまに弟と外食をするくらいで、家族とできる限り関わらないように過ごした。

荷物を取りに家に帰った時に、玄関に新聞紙が敷かれていた。とても臭い。父の車も母の車もなかった。弟の車はあった。
弟に聞いたら、玄関で、父は母に灯油をかけて、火をつけようとしたそうだ。弟が、父に
「灯油じゃ燃えないよ。やるならガ

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父性(エッセイ)11

私が結婚をした直後に両親は離婚をした。
私はダブルワークをしていた。町の近くのコンビニでバイトをしていた。
町の人は警察がうちに来て大騒ぎになったことには触れなかった。みんな優しいのだ。

父がコンビニに来ることはなかった。
しかし、私の車のワイパーに手紙が挟まれていることはたびたびあった。筆ペンで書かれた綺麗な文字から、下品な言葉が発せられていた。
弟と一緒に住みたいという内容の手紙もあった。家

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父性(エッセイ)ラスト

ずっと父とは縁が切れていたが、弟が亡くなった時は知らせなくてはならなかった。
父方の親族に伝えてもらうようにした。
父は、すべての連絡を無視したらしい。弟の死を、近所の人から聞いて知る形となった。
(と父が電話で言っていた)

葬儀に来るように、親戚が連絡をした。父は全てを無視した。親戚は連絡をし続けた。葬儀場の番号からもかけてもらった。
離婚をしていて、母が喪主になっているから来るのに抵抗がある

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