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2017年7月の記事一覧

御蔵入り

自由でありたくて 規律を守ってた
つもりでありたくて 貴方に抱かれてた

貴方は私を選んだりしないけど
夢を見させて 覚まさせて 御蔵入り

山茶花の様に咲いていたい
清く 正しく 美しく
だけど そんな女じゃもうないわ
抜け出せない愛に踏み出したもの

幻の愛には 幻の愛だけで
欲はたからないわ 貴方と切れたくない

誰にも言えない恋を今してるけど
夢の余韻を残させて 御蔵入り

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林檎飴

私を飴でコーティングしとけばいいじゃない
若々しさが欲しいなら
御要望に応えて
好きなだけ愛すれば満足なんでしょ?

彼方此方と家を巡り渡るより
案外 簡単なもんじゃない?

白か黒かというなら 貴方は黒ね
もう見抜いてる私がいる
黙ってる理由はひとつ それは愛じゃない

若かりし頃とはもう随分違うからさ
あんときゃよかったね、と笑う仲でも
もうないでしょう
だけど女の意地は図太いもの

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失鶴心中

真面目な人の裏の顔
あたしゃ知ってる あいつの顔
知らぬ存ぜぬ 突き通せば
あいつの弱みに舌を這わす

女といえど裏の顔
知って 鳥肌立てりゃいい
恐れて男に走るのかい
それも人生 愛に夢を見る

人肌恋しく 泣いて泣いて
鶴が飛び立つ 冬の空
あたしゃ あんたを許しはしないわ
浮気相手と心中かい

天変地異とは謎ばかり
されど知ってる あいつの顔
他人(ひと)に見せれぬ趣味あれど

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馬鹿な男(ひと)

人んせいに全部 出来んならさ
あんたは何個の浮気をするんだろう
彼奴も彼奴にも 恨みはある
其奴が女というもんだろう
知らなかったのかい?

嗚呼 日本中が吉原なら
あんたは男気なんて言うんだろう
なんて男は馬鹿なのさ

見た目は普通で 浮気なんざ
そんなこと出来ない面を見せてんだろう
あんたにも何回 馬鹿野郎と
言ったもんかね 数えもしない
どうしようもない奴

嗚呼 日本中が島原な

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明烏

蝋燭の火を吹いて消して
点けて それを繰り返す
女の目はごまかせたって
女郎との指切りげんまんよ

唇を小指でなぞって
嘘の言葉を見抜いて
はじめの一歩は楽しけり
通れば 目出度く 蜘蛛の罠

どこに逃げたって見つけてやるさ
女郎の意地は閻魔の笑みよ
さぞ 慌てて逃げれりゃいい

猫におまんまをあげてから
外八文字で魅せる
女が唯一 天下取れる
吉原の海で溺れなよ

死んで逃げたっ

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贅沢者

久しぶりのお外でやんす
空気が旨いでありんすね
女郎の頃とは随分と
何もかも変わりやんしたけんど
不思議と心地好いのでありんすよ

鳥の様に空を飛ぶことはできないけんど
自由に自分の足で歩くことはできるのでなんし
これ以上 贅沢でありんす

籠から籠へと移りなんした
わちきだけんど お外におりんす
御屋敷から出たのでやんす
移り変わりは激しくありんす
それでも心地好いのでありんすよ

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群青

水を覗けば 金魚の群れ
行ったり来たりを 影へと集う
虚ろな目をして 私を見りゃ
あんたは私に何を思う

えんりゃこらさと抱えた慕情に
あんたの色を 例えりゃ群青
私の空に名を連ねる

赤い半纏(はんてん) 泳ぐように
あんたはどっかと行ったり来たり
風に吹かれりゃ 煙草吹かし
移り香を消す手段に使う

えんりゃこらさと抱えた恋愛に
あんたの色を 例えりゃ群青
涙袋に名を連ねる

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会いたい

息吹乱れる 白樺にくしゃみ
肌がかさつき それでも風が吹く

あなたがいなけりゃ私には何もない
気付いた時には遅くて 路に染まる

会いたい 会えない でも会いたい
小さな葉っぱが騒つくように
会いたい 会えない でも会いたい
あなたの本来の姿を知らなくても
どうしようもなく 恋しくて

心乱れて 白樺の並木
私は歩く 今日もまた一人きりで

あなたの連絡待ちにもう疲れたわ
それで

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不器用

不器用なあんたを抱きしめたら
下手くそな口付け 嘲笑(わら)えるわ
不器用とあたしを言っていたのに
逆の立場になって 嘲笑(わら)えるわ

だけど あんた それじゃあんまりよ
次の為に教えてあげる

右を見て 左見て また右を見て
そして利き腕あげながら渡る横断歩道
まずはそこからよ

不器用なあんたに抱きしめられ
下手くそな愛撫に 嘲笑(わら)えるわ
不器用とあたしを指をさしてた

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鳩なんです

近道なんてどこにもない
いつも回り道
餌でも与えられたら 群がる

鳩なんです 私、鳩なんです
器用に餌付けすれば寄り添って
いつまでもあなたを待ってしまう
笑えるでしょ

片道にしか行けないけど
それでも戻れない
あなたがベンチに座れば 集う

鳩なんです 私、鳩なんです
甘い声を鳴らして肩に乗り
私だけが愛してしまうの
笑えるでしょ

気付けば 誰でも鳩なんです
餌付けされてし

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恋まかせ

可笑しかったね
あんたは私を女と間違えて
声をかけてきて
普通にしばらく話して 気付いたね

逃げるように去ったあんたの背中を見ながら
私は薄笑い浮かべてた

あれは雪の結晶が目立つ日だったね
足を滑らせながら 革靴で
せっかくの酔いも冷めた顔だったよ

ある日の昼に
偶然にまたばったりと出逢ったね
目を丸くした
あんたに話しかけたのは私から

何事もなかったふりは あんたにはさせ

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花魁

見事な出来栄えでござりんすね
笑って 笑って 笑って
彼の方はわちきに夢中なんし
毎晩 毎晩 来るのでありんすから

今はまんだ 袖にしておりんすけんど
そろそろとは考えてありんす

さくら散る頃になりんしたら
頃合いとみてありんす
女房も子もおありんす方
わちきは今 遊んでありんす

戯れでありんすけんど 欲は
いっつも いっつも いっつも
付いて回って来るのでありんすよ
男も女も

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雨降り

昨夜 知らぬうちに雨が降った
恨み節に泣いてる私のように

てんてんと てんてんと
窓に付いた雨粒を数えては
幾つの貴方を思い出すんだろう

貴方を殺してしまいたい
私のものだけにしてみたい
そんなことができるなら
悔しくもないんだろう

盗られ 友は何気なく話して
憎む私は奪い返したくなる

眈々と 眈々と
雨が降った様を思い描いて
悪知恵を働かせる私の闇

貴方を殺してしま

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