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『宙ごはん』を読みました

こんにちは。今週は大寒から寒さ厳しくカイロ片手に丸くなった一週間でした。
そんな中、待ちに待った本屋大賞ノミネート作品が発表になってから4月の結果発表までのお楽しみが増えましたね。おかげで、なんだか心が温かくなりちょっと幸せな今日このごろ。
10冊の中に、みなさんはもう既に読んだ作品はありましたか?
書店員さんの作品愛のこもった投票と平行して、いち読者として今年も読んでいきたいと思います。
今回は町田そのこさんの『宙ごはん』を読みましたので、以下感想メモです。ネタバレなしです。もしよろしければどうぞ召し上がれ。

🍴🍴🍴


書き出しがスバラシイんです


ただの市井の読書好きといたしまして、素晴らしいと言うなんておこがましいため、何故かカタカナで書きましたが書き出しがほんとにイインデス。

いや、ここはシンプルに好きだななぁいいなぁと感じたと言っておきましょう。国境の長いトンネルを抜けると雪国であったり、吾輩は猫であったりとにかく印象に残る場所それが書き出しです。(あたりまえのことをそれっぽく言いましたごめんなさい。)

この作品でこの書き出しに心を掴まれた方、私もです(握手!)。読書開始早々に訪れた“ぐっときたポイント”が書き出しでした。ただ続きを読みたくなるだけではなくて、過不足のない物語の説明的な導入における役割も果たしている。それでいて、いきなりはっとさせられる名文だと感じました。


ホップ・ステップ・ジャンプ形式だなあ


『宙ごはん』は、物語の広がり方がまさにホップ・ステップ・ジャンプ形式だなあと実感する作品でした。というのも、私が勝手にそう呼んでいるのですが、“前半は連載でラストへ向かって書き下ろし”の持つ作品のパワーが好きなんです。

なぜなら物語の持つ加速度は勿論のこと、既出の部分をさあどう包み込むかという作者の挑戦にも似た力を感じるから。もしかしたら寝かせることで、時間をかけてより深いところを表現する“洋食屋さんのデミグラスソース”のような味わいがうまれているのかもしれません。

全編書き下ろしの圧倒的なダブルなチーズバーガーのような重厚さもたまりませんね。短編集もサンドイッチのようにどれから読んでも楽しめて起承転結がはっきりしていたり、コラボしていたりして好きです。あの作品もそうだ!となりますので、ぜひ読まれたあと本のうしろに書かれたページを読んで作品の生い立ちの答え合わせをするのがオススメです。

あなたの思い出の味は?


タイトルから、そうごはんは出てくるよね。


日々ツイートもnoteもネタバレにならぬよう心がけておりますが、はいタイトルにごはんが出てきていますからごはんについてはOKでしょう。

主人公は女の子。家族をめぐる物語の中で、どんなごはんが彼女のそばにあったのか。本の帯には「再生」という言葉もありました。

作中ではいくつかの味が登場します。ちなみに私の思い出の味ってなんだろう?と考えてみると1つありましたよ『なまえのない料理』が。

帰省した時に妹と話したことがありました。

「あれ作ってる?」と急に聞いてみた私。
「なに?」
「いや、名前はないんやけど昔からよく晩ごはんに出てた鳥肉とピーマンの炒めたやつ」
「あー!あれか!」
「よーわからんけどめっちゃ上手いよね。本にも載ってないし。いまだ謎料理のまま作ってるよ」
「わかる!お姉ちゃん作ってるんや」

二人であれは何だろうねと言いながらお腹をかかえて笑い合ったんです。それそれ!と話せるのは料理を知っている姉妹だけですが、記憶にあり今も作り続けている料理でした。

と、何の参考にもならないお話で失礼しましたが、こんなふうに読み終えた時、私の鍵になる料理は何だろうと考えたくなる素敵な物語です。

そして、ただハートフルなだけではないのがご存知町田そのこさん。主人公の女の子から見た大人の姿、登場人物それぞれが持っている理由や想いの深さ、家族とは何かそして再生とはをぜひ味わってもらえたら嬉しいです。


🍴🍴🍴

『宙ごはんは』町田そのこさんが今描く“家族のカタチ”と“成長”が詰まった物語でした。主人公だけではなく私達大人だって、ある意味まだ成長過程なのかもしれません。なんだかそう考えるとみんな伸びしろだらけに思えてきました。(よし、もういっちょ頑張りますか私。)


以上が、ホップ・ステップ・ジャンプ形式のパワーを感じながら自分の思い出のごはんを思い出す、書き出しがまたスバラシイ家族の再生と成長物語『宙ごはん』を読んだ感想メモでした。素敵な作品との出会いに感謝です。



お読みいただきありがとうございました。






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