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会話が続くのに 誰がしゃべっているかがわかるから面白い @『777』伊坂幸太郎

やっとこさ読みました『777』!
2022年ハリウッド映画化された『マリアビートル』と同じ殺し屋シリーズ最新作です。あるホテルでは、物騒な奴らがなにやら動いていますよ。

ボクシングの映画をみたら、余韻の力で自分がボクサーだと認識してそのまま街を歩く現象。その現象と同じように、わたしは今舞台となったホテルにたまたま居合わせた客になっている気分。ちょっとキャリーケースを預けてくるわね。

では 鉄は熱いうちにと、感想などをお届けしたいと思います。


            

やっぱ凄いのよ会話がまじで


もうね、これなのよ。
会話が生きてる。
誰がしゃべっているかがわかる。

これはいざ書こうとすると大変な難しさ。
せめて男女を分けて二人なら、語尾でなんとなく察するけれども。もし自分なら“「」〜と〇〇は興奮気味に伝えてきた。”などと全部に書いてしまう。

たとえば、国語のテストの現代文の問題を解く時にあるのが「これ誰が言ってる???」問題。ゆるくお伝えすると「まって誰やねんこれ」と感じることがある。全く持ってこれは作者に非はないのだが、小説から抜き出された本文は前後の関係性がわからない。したがって限られた時間での脳内想像大会が数分で行われる。マジでわからない時がある。

そういった問題が全く起こらないのが伊坂幸太郎さんの描く世界である。
おそらく数ページだけを切り取っても、誰が話しているかがわかるのだ。
ドラマの台本のように、カギ括弧の台詞の上に名前が浮かんでるように今誰が話しているかが伝わってくる。しかも用意された台詞じゃなく登場人物たちが意思を持って自分で話し出しちゃってる。

『777』を読んで改めて感じた。

やっぱ凄いのよ会話がまじで。


特別対談 辻村深月✕伊坂幸太郎を思い出した。


『777』を読んで荒ぶりつつ「そうだ!あの本に伊坂さん登場していたはず」と本棚からせっせと取り出したのは『Another side of 辻村深月』。

この対談の頃に『777』を書いていた可能性が高いかもしれないと思ったからだ。読み返してみると、このなかに1年半くらい書いていて〜のくだりがあった。

みなさまには本を是非読んで欲しいから、ほんの少しだけ対談の引用を。

わたしたちはみんな、「伊坂幸太郎後」の世界で作家をやっていくしかない

Another side of 辻村深月より

辻村深月さんが尊敬を込めつつ「その跳躍力がうらやましくてしょうがないんですよ」と語り、明るく切り出した上記の引用した言葉に読みながら本当に頷いた。ただのお二人のファンのわたしから観ても確かにそこには「伊坂幸太郎後」と呼べる唯一無二の世界観がある。そして、うらやましいと言われた“跳躍力”にも完全同意。伊坂幸太郎さんが表現する独自のテンポの良い会話とストーリー展開は、狭い場所に向かい合う2つの壁をキックのみでタタっと風のように駆け上がるような力を感じる。まさに跳ねるが如き文章である。

他にも伊坂幸太郎さんがある作品で“あえて言葉にして書いていない”ポイントを辻村深月さんが気づいて伝える場面もあり、かなり貴重な対談だと再確認。今回読み返してよかった。『777』よありがとう。





いやあさすがの世界観でした『777』。

描き下ろしでおそらくは時間をかけて執筆され、引き算も完璧な一冊。やっぱ好きだなあを更新。伊坂幸太郎さんと辻村深月さんに共通して好きだなと感じるのは、個人的にお二方とも誰か一人を絶対的な悪者にせず、社会の仕組みなどそうなった要因に目を向けられていること。今回も納得の読後感でした。

わたしはこれでチェックアウトしますので、機会がありましたらお気をつけてこのホテルにいらしてくださいね。

ではごきげんよう。


読んでいただきありがとうございました。


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