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本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲編

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多作であるハイドンの曲を一日一曲ずつ聴いていきましょう。
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#本日の一曲

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 落ち葉拾いの交響曲 (Hob.I:105-108)

ハイドンさんの交響曲で交響曲第何番と呼ばれるのは第104番「ロンドン」までですが、ホーボーケン番号の「I」に分類されるものは108番まであります。 協奏交響曲(Op.34, Hob.I:105, 1792)協奏交響曲というのは、3~4のソリストがオーケストラと演奏する形式の曲のことです。実際の演奏会の様子を見れば、どのような感じかすぐお分かりになると思います。モーツァルトさんにもベートーヴェンさんにもこの形式の曲があり、なかなか華やかで楽しい形式です。 ハイドンさんの協奏

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第104番 ロンドン (Sinfonia No.104 "London", 1795)

交響曲第104番は、ザロモン交響曲の最後の曲とされ、かつ、ハイドンさんの番号のついた交響曲の最後の交響曲です。この「ハイドン・シリーズ・交響曲編」は、次回に落ち葉拾いをして、最終回とします。 作曲順について、自筆譜には「私がイギリスで作曲した12番目」と書いてあり、初演について、1795年5月4日のハイドンさんの日記には「すべての観客も私も余すところなく楽しんだ。私はこの夜に4000グルデンの収入を得た。これはイギリスだからこそ可能だった」と書いてあるのでその日のキングス劇

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第103番 太鼓連打 (Sinfonia No.103 "Drumroll", 1795)

交響曲第103番は、1795年に作曲され、ザロモン交響曲の最後から2番めの交響曲です。愛称の「太鼓連打(ドラムロール)」は、第1楽章の冒頭と結尾でティンパニのロールがあることが由来になっています。ロールというと現代では、あの「結果発表です!」というときに流れるスネアドラムの連打のことを指します。 そして、ティンパニ・ロールに続いて、グレゴリオ聖歌「怒りの日(Dies irae)」が用いられています。「怒りの日」については、こちらをご覧ください。 初演は、1795年3月2日

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第102番 本当の奇蹟 (Sinfonia No.102, 1794)

交響曲第102番につきましては、以前ご紹介した交響曲第96番の「奇蹟」は、本当はこちらの第102番の演奏会のときに起きた出来事であるというのが最近の定説になっているようです。 第2楽章では、同時期に作曲されたピアノ三重奏曲第40番嬰ヘ短調の第2楽章と調性違いのものが使用されています。このピアノ三重奏曲については、別に記事を作成しましたので、ご覧ください。 交響曲第102番変ロ長調(Sinfonia No.102 B Dur, Hob.I:102) 第1楽章 Largo —

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第101番 時計 (Sinfonia No.101 "The Clock", 1794)

交響曲第101番は、1793年にウィーンで第2楽章から第4楽章までを作曲し、1794年にロンドンで第1楽章を完成させて、同年3月3日にロンドンの演奏会で初演が行われました。 愛称の「時計」は、1798年にヨハン・トレーク(Johann Traeg)さんが第2楽章のピアノ編曲版を出版した時につけられたもののようです。この楽章のリズムがチクタクと時計のようなので、そのような愛称がついたのでしょう。 このメロディーはとても有名で、日本ではかつてラジオ番組「百万人の英語」のテーマ

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第100番 軍隊 (Sinfonia No.100 "Military", 1794)

交響曲第100番は、12曲のザロモン交響曲の8番目(第2期の2番目)の曲で、「軍隊」という愛称が付けられています。その由来は、第2楽章と第4楽章にトルコ軍楽(メフテル、Mehter)が用いられていることです。初演時の広告にはすでに「軍隊交響曲」と書かれていたそうですので、ハイドンさんご本人が命名したのかもしれませんね。 ロンドンでの初演後、ある評論家が第2楽章について、「戦争の地獄のような轟音が、恐ろしい崇高さのクライマックスへと高まっていく」と書いたそうです。そのような解

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第99番 クラリネット (Sinfonia No.99, 1793)

本日ご紹介するのは交響曲第99番変ホ長調で、いよいよハイドンさんの交響曲の最後期にあたる第2期ザロモン交響曲の6曲になりました。 ハイドンさんは、クラリネットを第2期ザロモン交響曲で初めて交響曲にクラリネットを採用し、番号順で言うと、この第99番が最初にクラリネットを採用した交響曲になります。 交響曲第99番変ホ長調(Sinfonia No.99 Es Dur, Hob.I:99) 第1楽章 Adagio — Vivace assai 変ホ長調から始まる序奏部ですが、短調

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第98番 チェンバロ (Sinfonia No.98, 1792)

交響曲第98番は、第1期ザロモン交響曲最後の番号であり、調性は変ロ長調、ロンドンでの演奏会で指揮を執っていたハイドンさんが最後にチェンバロ演奏をするというサービスが盛り込まれた曲です。 この曲の自筆譜(?)を長らくルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)さんが所有していたと言われています。また、この曲の第2楽章には、前年1791年12月5日に亡くなったヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Moza

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第97番 ハ長調 (Sinfonia No.97, 1792)

交響曲第97番ハ長調は、第1期ザロモン交響曲6曲のうちの1曲です。アラサーのルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)さんが同じ調性の交響曲第1番を作曲する時にモデルにした交響曲だと言われています。楽章ごとの調性も同じです(第1楽章ハ長調、第2楽章ヘ長調、第3、4楽章ハ長調)。 交響曲第97番ハ長調(Sinfonia No.97 C Dur, Hob.I:97) 第1楽章 Adagio — Vivace 簡素な序奏から始まるダンス曲です

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第96番 奇蹟 (Sinfonia No.96 "The Miracle", 1791)

交響曲第96番も12曲の「ザロモン交響曲」のうちの1曲で1791年作曲の第1期のものです。この交響曲には「奇蹟」という愛称がついています。 この愛称の由来は、初演時に観客がハイドンさんをよく見ようとしてステージ近くに押し寄せたところ、突然会場のシャンデリアが会場中央に落下したのですが、会場中央には誰もいなかったので、奇蹟的に誰も怪我することがなかったというエピソードに基づいています。 ところが、近年は、その初演とは第96番の初演ではなく、第102番の初演だったということが

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第95番 ハ短調 (Sinfonia No.95, 1791)

交響曲第95番は、「ザロモン交響曲」10曲の中で1曲だけの短調作品です。調性はベートーヴェンの「運命」と同じハ短調です。楽章ごとの調性は、ハ短調→変ホ長調→ハ短調→ハ長調です。一方、ベートーヴェンの方は、ハ短調→変イ長調→ハ短調→ハ長調で、第2楽章が少し違うだけでほぼ同じです。 交響曲第95番ハ短調(Sinfonia No.95 c moll, Hob.I:95) 第1楽章 Allegro moderato ソナタ形式でエンディングはハ長調になります。 第2楽章 Andan

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第94番 驚愕 (Sinfonia No.94 "The Surprise", 1791)

交響曲第94番「驚愕」も第1期ザロモン交響曲の1曲ですが、ハイドンさんの交響曲の中で最も有名な曲ではないでしょうか。「驚愕」あるいは「びっくり」という愛称の由来は、ハイドンさんの曲を聴きながら居眠りする聴衆を起こすために第2楽章の緩徐楽章で静かな音楽が流れていると突然ティンパニが最強打されるというところにあります。 交響曲第94番ト長調「驚愕」(Sinfonia No.94 G Dur "The Surprise", Hob.I:94) 第1楽章 Adagio cantab

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第93番 おなら (Sinfonia No.93, 1791)

1790年、ハイドンさんのご主人様のニコラウス・エステルハージ候(Nikolaus Esterházy)が亡くなりました。その後継ぎはアントン・エステルハージ候(Anton Esterházy)だったのですが、アントン候は音楽には無関心で、ハイドンさんには年金を与えることにして解雇してしまいました。 そのハイドンさんに目をつけたのが音楽興行師のヨハン・ペーター・ザロモン(Johann Peter Salomon)さんで、ザロモンさんがロンドンで開催していたコンサートにハイド

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第92番 オックスフォード (Sinfonia No.92 "Oxford", 1789)

交響曲第92番は、「オックスフォード」という愛称がついていますが、これは、1791年にハイドンさんがイギリスのオックスフォード大学から名誉博士号を贈られたときの学位授与式で、式に出席したハイドンさんがこの曲を指揮したことからついたものです(ただし、本当はこの曲だったのかはっきりしないそうです)。 また、例のロンドンの出版社の整理番号から「Q字」と呼ばれていたこともあったそうです。 交響曲第92番ト長調「オックスフォード」(Sinfonia No.92 G Dur "Oxf