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本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲編

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多作であるハイドンの曲を一日一曲ずつ聴いていきましょう。
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2024年6月の記事一覧

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第96番 奇蹟 (Sinfonia No.96 "The Miracle", 1791)

交響曲第96番も12曲の「ザロモン交響曲」のうちの1曲で1791年作曲の第1期のものです。この交響曲には「奇蹟」という愛称がついています。 この愛称の由来は、初演時に観客がハイドンさんをよく見ようとしてステージ近くに押し寄せたところ、突然会場のシャンデリアが会場中央に落下したのですが、会場中央には誰もいなかったので、奇蹟的に誰も怪我することがなかったというエピソードに基づいています。 ところが、近年は、その初演とは第96番の初演ではなく、第102番の初演だったということが

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第95番 ハ短調 (Sinfonia No.95, 1791)

交響曲第95番は、「ザロモン交響曲」10曲の中で1曲だけの短調作品です。調性はベートーヴェンの「運命」と同じハ短調です。楽章ごとの調性は、ハ短調→変ホ長調→ハ短調→ハ長調です。一方、ベートーヴェンの方は、ハ短調→変イ長調→ハ短調→ハ長調で、第2楽章が少し違うだけでほぼ同じです。 交響曲第95番ハ短調(Sinfonia No.95 c moll, Hob.I:95) 第1楽章 Allegro moderato ソナタ形式でエンディングはハ長調になります。 第2楽章 Andan

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第94番 驚愕 (Sinfonia No.94 "The Surprise", 1791)

交響曲第94番「驚愕」も第1期ザロモン交響曲の1曲ですが、ハイドンさんの交響曲の中で最も有名な曲ではないでしょうか。「驚愕」あるいは「びっくり」という愛称の由来は、ハイドンさんの曲を聴きながら居眠りする聴衆を起こすために第2楽章の緩徐楽章で静かな音楽が流れていると突然ティンパニが最強打されるというところにあります。 交響曲第94番ト長調「驚愕」(Sinfonia No.94 G Dur "The Surprise", Hob.I:94) 第1楽章 Adagio cantab

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第93番 おなら (Sinfonia No.93, 1791)

1790年、ハイドンさんのご主人様のニコラウス・エステルハージ候(Nikolaus Esterházy)が亡くなりました。その後継ぎはアントン・エステルハージ候(Anton Esterházy)だったのですが、アントン候は音楽には無関心で、ハイドンさんには年金を与えることにして解雇してしまいました。 そのハイドンさんに目をつけたのが音楽興行師のヨハン・ペーター・ザロモン(Johann Peter Salomon)さんで、ザロモンさんがロンドンで開催していたコンサートにハイド

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第92番 オックスフォード (Sinfonia No.92 "Oxford", 1789)

交響曲第92番は、「オックスフォード」という愛称がついていますが、これは、1791年にハイドンさんがイギリスのオックスフォード大学から名誉博士号を贈られたときの学位授与式で、式に出席したハイドンさんがこの曲を指揮したことからついたものです(ただし、本当はこの曲だったのかはっきりしないそうです)。 また、例のロンドンの出版社の整理番号から「Q字」と呼ばれていたこともあったそうです。 交響曲第92番ト長調「オックスフォード」(Sinfonia No.92 G Dur "Oxf

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第91番 T字 (Sinfonia No.91, 1788)

交響曲第91番は、「ドーニ交響曲」の2曲目です。第91番は例の整理用番号として「T」が割り当てられていたことから、「T字」と呼ばれることもありました。ドーニ交響曲の3曲の中では「地味な」存在であると言われていますが、「優美」といってよい交響曲だと思います。 第1楽章のテーマは、ハイドンさんのカンタータ「ナクソスのアリアンナ」(Hob.XXVIb:2)の引用であるということです。 チェチーリア・バルトリ(Cecilia Bartoli)のメゾソプラノとアンドラーシュ・シフ(

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第90番 R字 (Sinfonia No.90, 1788)

このハイドン交響曲シリーズで最初に紹介させていただいているのが、Brilliant Classicsさん提供の音源で、アダム・フィッシャー(Adam Fischer)さん指揮オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団(Austro-Hungarian Haydn Orchestra)の演奏を、各交響曲の第1楽章から第4楽章をひとまとめにし、2020年10月10日の第1番公開から順次進んでいるものです。ただ、毎日公開しているわけではないので、こちらのハイドン交響曲シリーズが追い

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第89番 W字 (Sinfonia No.89, 1787)

交響曲第89番は、自筆譜に1787年との記載があるので、作曲年代は1787年ということです。 第89番も2曲ある「トスト交響曲」と呼ばれる一曲であり、「W字」と呼ばれ、第88番と双子の2曲であるにもかかわらず、第88番ばかり演奏され、「W字」という愛称もあまり広まりません。 第89番の第2楽章と第4楽章は、前年の1786年にナポリ王のために作曲した「2台のリラ・オルガニザータのための協奏曲第5番ヘ長調(Concerto for 2 Lire organizzate F D

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第88番 V字 (Sinfonia No.88, 1787)

1787年、ハイドンさんは、エステルハージ管弦楽団のヴァイオリン奏者ヨハン・ペーター・トスト(Johann Peter Tost)さんがパリに行く時に6曲の弦楽四重奏曲とこの第88番と第89番の2曲の交響曲を持たせたことから、この2曲の交響曲は「トスト交響曲」と呼ばれることがあります。 また、この交響曲には「V字」という愛称がついていますが、これはハイドンさんの生前にロンドンの楽譜出版社から楽譜が出版された際に、交響曲の整理番号として「A」から「W」までつけられていて、この

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第87番 不遇 (Sinfonia No.87, 1785)

交響曲第87番は、パリ交響曲の中では3番目に作曲されたものだということです。第86番と同じく「最高のものの一つ」だと思うのですが、愛称がついていないせいか、あるいは、「パリ交響曲」ということで6曲ひとまとめにされているせいか、頼みのWikipediaにもこれといったエピソードがなく、これまでにもカラヤン盤、バーンスタイン盤、デュトワ盤など名盤があるにもかかわらず、「不遇」の一曲だと思います。 交響曲第87番イ長調(Sinfonia No.87 A Dur, Hob.I:87

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第86番 カプリッチョ (Sinfonia No.86, 1786)

交響曲第86番はパリ交響曲の中では最後に作曲されたものです。オーケストラの規模も大きく、壮麗な造りになっています。ハイドンの研究家のランドンさんは、この交響曲をハイドンさんの交響曲のうち「最高のものの一つ」と評価しています。 第2楽章では「カプリッチョ」との指定がありますが、ハイドンさんの交響曲でその指定があるのは、他には交響曲第53番「帝国」の初期稿(A版)の終楽章だけだそうです。 交響曲第86番ニ長調(Sinfonia No.86 D Dur, Hob.I:86) 第

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第85番 王妃 (Sinfonia No.85 "La Reine", 1786)

交響曲第85番は、パリ交響曲の中での作曲順は3番目で1786年に作曲されました。愛称の「王妃」は、フランス王妃マリー・アントワネットのことで、王妃がパリ交響曲の委嘱元であった「コンセール・ド・ラ・オランピック」管弦楽団のことを気に入っていたことと、パリ交響曲の中でもこの第85番を気に入っていたということからこの愛称がついたということです。気に入ったポイントがあるとは思うのですが、それがなにか、どこかについては分かりませんので、それを想像しながら聴くのもよいかもしれません。

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第84番 イン・ノミネ・ドミニ (Sinfonia No.84 "In nomine Domini", 1786)

交響曲第84番は、6曲のパリ交響曲の中では1786年に最後に作曲されたものです。日本ではその愛称で呼ばれることはあまりありませんが、「イン・ノミネ・ドミニ」という愛称がついています。その言葉の意味は、ラテン語で「神の御名において」という意味で、ルネサンス音楽のイングランドの作曲家ジョン・タヴァナー(John Taverner, 1490年頃~1545年10月18日)さんが作曲したミサ曲「汝聖三位一体に栄光あれ(Missa Gloria tibi Trinitas)」のベネディ

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第83番 雌鶏 (Sinfonia No.83 "La poule", 1785)

交響曲第83番は、パリ交響曲の中では3番目に作曲されたものだそうです。愛称の「雌鶏」は第1楽章の第2主題がにわとりの鳴き声のようだからつけられたということです。 交響曲第83番の調性はト短調で、第39番に続く2曲目のト短調交響曲です。モーツァルトさんの第25番と第40番に対比させるのもおもしろいかもしれません。ただ、ト短調なのは第1楽章だけで、その他の楽章はいずれも長調になっています。 交響曲第83番ト短調「雌鶏」(Sinfonia No.83 g moll, Hob.I