《七十二候》楓蔦黄‥もみじつたきばむ・【特別編/てぬぐいひらひら】
『楓蔦黄』もみじつたきばむ
11月2日から11月6日頃まで
北の方から少しずつ少しずつ‥
葉っぱたちが色づき始め、紅葉前線が南下する頃となりました。
わたしも毎日のように
鳥取県の紅葉情報を眺めては
まだかな、まだかなと心待ちに‥。
鳥取県では例年、大山(中国地方最高峰の大山標高1,729m)が先陣を切るように
10月初旬より色づきはじめます。
そして、10月下旬から11月初旬にかけてピークを迎え、徐々に街中へと降りてくるのです。
紅葉が降りてくるのを待ちきれないわたしは
先週末、数年ぶりに鍵掛峠(かぎかけとうげ)へ
大山の中腹部標高910メートルの場所にある
鍵掛峠展望台は
「七色の紅葉」と称されるほどの美しいコントラストが見られる場所で
毎年、県内外から多くの観光客が訪れる人気スポットのひとつなのです。
くねくね曲がる山道を車で上がっていくと
日曜日ということもあり、駐車場にはたくさんの県外ナンバーの車や大きなバイクが何台も!
思わず鳥取県ナンバーの車を探してしまうほどでした。
さて、鍵掛峠展望台から見えた景色は‥
数日前の初冠雪でうっすら白い山肌と
紅や黄色に紅葉したブナ林が織り成す
色彩鮮やかな美しい絨毯。
雲が流れて青い空が見えたり消えたり‥。
絨毯もそれによって明るくなったり
暗くなったり‥。
ほんの一瞬、少し光が射したその隙に
撮りました。
桜の開花を待ちわびるのと同じように
紅葉の色づきもまた、私たちの目を‥
そして心を癒してくれますね。
春夏秋冬の季語として
春は山の草木が
長い眠りから覚めたように一斉に芽吹き
明るくなる様子から「山笑う」
まるで水が滴るように緑の葉っぱで
覆われたように見える様子から
夏は「山滴る」
そして山が美しく
お化粧をするように色づくことから
秋は「山粧う」
色鮮やかな秋が終わり
さみしいほどに静まり返る冬の山を
「山眠る」‥。
昔の人々が山を形容する言葉たちは
とても生き生きとしていて
自然と生活が今よりずっと密な繋がりだったことを強く感じるのです。
見るたびに違う表情を見せてくれる大山に
わたしはこれまで何度も魅了され‥
そしてきっとこれからも、また何度も
魅了され続けるのでしょう。
さて、『紅葉狩り』という言葉がありますが
以前、なぜ「狩り」なのだろう?と
ふと疑問に思い調べたことがあります。
一説によると、平安時代に狩猟をしない貴族が
現れたことがきっかけだとか‥。
当時、歩くことは下品な行為とされており
紅葉を鑑賞するために
野山まで歩くことは身分の高い貴族には許されないことだったようです。
そのため、紅葉狩りを狩猟に見立て
こっそりと楽しんでいたという説なのです。
昔は紅葉を見ることさえ
狩りをすることのように大変だったのでしょう。昔の人々の分も秋を楽しみ紅葉を思う存分
五感で感じたいですね。
そしてこちらも
先週末、鳥取県境港市で行われた
『てぬぐいひらひら』
昨年も見に行ったのですが
今年もたくさんの手ぬぐいが秋の空をひらひらひらひらと泳いでいました。
伯州綿を原料に使用した
「境港手拭(さかいみなとてぬぐい)」と
長崎、静岡、東京、福島など13都府県から
集まった手ぬぐい約130枚が掲げられ
秋の空を彩り豊かに舞う姿は見ているだけでも楽しいものです。
境港市では平成20年度から綿畑を再興し
伝統的な地域資源を後世へ継承していく取り組みをしています。
わたしも数年前から綿畑へ行き、実際に綿を手に取り綿摘みをしたり
昨年は綿繰りの体験をさせてもらったり‥。
綿繰りとは乾燥させた実綿を
二本のローラーの間を通すように、綿繰り機にかけて種と繊維とに選り分ける作業です。
境港市では伯州綿で作った
「おくるみ」を境港市で生まれた赤ちゃんに
「ひざかけ」を100歳を迎えられる方へ毎年贈呈しているそうです。
そして「おくるみ」を受け取った親子は
次に「おくるみ」を受け取る親子のために
種まきや収穫に参加したり‥と
伯州綿を後世に継承していくのです。
そんな優しい綿のリレーが
ずっとずっと続いていきますように。
心ときめく手ぬぐいは‥
見つかりましたか?