私の夏になってください
梅雨の水無月なんて過ぎ去って早く夏になればいいのに。
夏が好き。
夏って、幻みたいだ。
毎年必ず夏を生きているはずなのに夏が終わってしまうとその日々が夢だったみたいに思える。風に押されて身体を覆う花火の煙の匂いも、履きなれない下駄から鳴るカランコロンという音も、汗で肌にひっつくシャツの感触も、夏を終えてしまうとはっきりと思い出せない。蜃気楼に攫われて消えていく記憶の欠片をどうにか守ろうとするけれど、暑さが秋に溶けていくのと一緒に記憶もどこか遠くへ溶けていく。記憶が溶けて残