見出し画像

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第四話 秀吉は、私が初めて身体を開いた男だった

秀吉は、私が初めて身体を開いた男だった

秀吉は、私が初めて身体を開いた男だった。その行為は、とても苦痛だった。私の両足は開かれ、すべてさらけ出された。屈辱感と逃げたいほどの恥ずかしさで、固く目を閉じ、唇を噛みしめ耐えた。
むき出しにされた花芯に、女にはない男の一部が押し込まれた。下半身が引き裂かれるような強い痛みに、私は何度も「やめて!」と泣き叫んだ。
すると彼は腰を動かすのを止め、私の手を取り
「大丈夫じゃ、茶々・・・」
と耳元でささやき、髪を撫でた。そしてすぐまた激しく腰を動かし始める。彼が腰を動かし私を責めるたび、串刺しに貫かれる痛みで、何度も腰を引いた。私は彼の身体の下で、早くこの行為が終わり痛みから解放され、自分の身体から彼が出ていく事を祈った。気絶しそうな痛みの中、この行為のどこに快感を得るのかまったくわからなかった。今の痛みから逃げる為、記憶は過去をたどった。

幼い私の前に差し出されたのは、伯父信長がくれた甘くて固い小さな粒。
生まれて初めて食べた金平糖を口に入れ、がりっ、噛み砕こうとしたら、母上が言った。
「ゆっくりお食べなさい。ゆっくり味わうの。
口の中でとろけ、身体中に広がる甘さと幸せをしっかり感じて」

その言葉を思い出した私は、今自分は秀吉に噛み砕かれる金平糖だ、と思った。私は甘い蜜でできた金平糖なのに、彼はゆっくり味わって食べない。
とろけるまで待たない。
ガリガリ せわしく噛み砕く。
早く、はやく、と喉の渇きをいやす水を求めるように蜜を求め、必死に腰を動かす。ガリガリガリガリ ガリガリガリガリ 私の身体は彼に衝かれ、屈辱も羞恥心も砕かれ食べられた。

突然彼は動きを止め、ハァハァ息をしながら私の身体から離れた。ようやく拷問が終わり、解放された私ははぁ、と長いため息をついた。彼が私の中にいた時間が長いのか、短いのか、初めてなのでわからない。彼が自分の思いを遂げた証のように、私の花芯からドロリと生ぬるい透明な液が流れた。秀吉は枕元に置かれた白い紙で、私の股から流れ出す液を拭いた。私は痛みから立ち上がれず、赤子のようになすがまま彼に任せた。きれいにふき取った紙に赤い血がついているのを確かめ、秀吉はニヤリと笑った。

乳母から、初めて男を受け入れた女は血を流すことを聞いていた。五十近い猿のような男が私の処女を奪い、私を手に入れた。下卑た笑みを浮かべる彼の歯並びは汚く、ところどころ歯も欠けていた。私はこんな男に抱かれた自分が情けなかった。

欲望を果たし落ち着いた秀吉は、私をやさしく抱きしめ
「茶々・・・
わしは、わしは今、この上もなく幸せだ」
と漏らした。「私もです」と答え頭の中で、女としての第一関門を無事くぐり終え、彼を満足させた。これで、しばらくはこの男を自分に引きつけられる、と考えた。

私に甘い言葉をささやきながらまだ私の乳首をつまみ、口に含もうとする彼に嫌悪感を覚えながら、お腹が熱くなった。それは私の中で見ないふりをし、フリーズしていたプライドが目覚めた時だった。私の胸に顔を埋めている彼を見下ろした。

秀吉・・・・・・私の身体に、初めてしるしをつけた男
農民から成り上がり、主君の身内を自分のものにした男

この男に、身体を捧げたのではない。
私がこの男に施し身体を与えてやった。その対価とし、私は揺るぎない地位と権力を手にする。自分と妹達、そして私に流れる、織田と浅井の血を生かす為に。

もう一度欲望を満たす為、秀吉はまた私を横たえ足を広げた。私は目を開いたまま、天井を見つめた。彼はそれをOKだと思い、いそいそと足の間に手を伸ばした。初めての契りは眠っていたプライドと誇りを呼び覚まし、二度目の契りは、秀吉を使いのし上がる覚悟を決めさせた。

あっけなく二度目の褥が終わった。それでもまだ執拗に私の肌を撫でる男の手に、そっと自分の手を重ねた。そして甘えるような上目遣いで、彼の顔を見つめた。本能的にこのしぐさが、男の征服欲を満たすこと知っていた。

秀吉の腕枕に、私は頭を置いた。蜜を施すのはいつだって私。そう思うことが私を支えるプライドだ。「誇り高い茶々」そう母が呼んでいた声が、耳の奥で聞こえた。自分を取り戻した私は、秀吉に向かって微笑んだ。

そして私は新しい扉を開いた。

--------------------------------

したたかに生き愛を生むガイドブック

あなたは自分の機嫌より、自分以外の誰かの機嫌を取ることに意識が向いていませんか?

自分の機嫌を取れるのは、自分だけ。

自分の気持ちを押しこめたまま、自分以外の人の機嫌を取ることに目を向けると、生きるのが苦しくなります。

あなたの機嫌を良くするのは、誰でしょう?

あなた自身です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?