見出し画像

2021年夏の東北旅~②花巻・宮古・平泉バックパック6日間~

旅の目的は、今もまだわからない


第二弾は、道中何を見て何を感じたのか、知ってもらうために実際の旅程を紹介したいと思う。岩手県を縦横に、花巻→宮古→平泉→花巻とちょこまか移動した6日間、接する人々から「どうしてここに来たのか?」という質問を何回も受けた。ゲストハウスのスタッフさん、魚屋さんの店主さん、すし屋の板前さん、みんな、有名な観光地とは言い難い三陸のまちに、大阪から女一人が何しにきたのか不思議そうにしていた。自分でもわからない。「震災から10年経った東北をみにきた」、「おいしい海鮮を食べに来た」、「一人でぶらぶらしにきた」など、全部本当なんだけど、どれもしっくりこない。RADWIMPSの曲を聴いて東北に興味を持ったのは「きっかけ」でしかなく、実際に東北に降り立った時にでさえ明確な「旅の目的」はなかった。行動しながら見えてくるかなと思い、相棒の38Lを背負い歩きだした。

1&2日目:大阪⇒花巻⇒宮古

一日目に伊丹空港から岩手県の花巻空港まで飛び、その夜は花巻市のゲストハウスmeinnで一泊。二日目の朝、JR釜石線 はまゆり1号 釜石行に揺られ、のんびり内陸の花巻から太平洋側へと東に進む。釜石駅で三陸鉄道リアス線 各停 宮古行に乗り換え、昼過ぎに目的地である宮古駅に着く。駅前の海鮮居酒屋すみよしで三陸名物の「瓶ドン」(海鮮丼の海鮮部分が牛乳瓶に詰まった)を食べ、観光気分。

一車両の三陸鉄道。電車が通ると、手を振ってくれる人もいて、地元の方から愛されている鉄道
牛乳瓶ギチギチ詰められた海鮮を、左のご飯が盛られたどんぶりにかけて食べる瓶ドン

宮古は釜石市から少し北に進んだところにあり、酒屋、すし屋、魚屋や銭湯などの昔ながらの個人商店が並ぶ、海の街だ。宮古ではゲストハウス3710(三陸エリア唯一のゲストハウス)に3泊し、おいしい海鮮を食べたり、3.11伝承ロードに登録されている震災伝承施設や遺構を訪れた。3.11伝承ロードとは、複数県にまたがる震災遺構や防災施設のネットワークであり、震災の被害や防災について、訪れる人が学べるように創設された。

3日目:岩手県宮古市田老地区

三日目、「たろう観光ホテル」へ電車で訪れた。宮古市田老地区にあるたろう観光ホテルは、震災時に下層階が骨組み以外ごっそり津波で流され、津波遺構として保存された。新田老駅から、ほとんど往来のない道路をぽつぽつ歩き、小さいトンネルのような水門をくぐると、ぽつんと佇むたろう観光ホテルがあった。田老では、防潮堤工事が続いており、Googleマップ上では海はすぐそこなのに、防潮堤をくぐり抜けないと海は全く見えない。潮の香りが漂うのに海は見えず、見渡す限りクレーンとコンクリート、という奇妙な風景が震災の存在をリマインドしてくる。

震災時、1・2階部分が津波で流された、たろう観光ホテル
よくみたら、骨格部分から植物が生えている。三陸に住む人は、自然の豊かさも厳しさも体験してるのだろう。

4日目:宮古⇒平泉

四日目、車を借りて宮古から、次の目的地である平泉まで移動。途中、震災メモリアルパーク中の浜という、震災時15メートル以上の津波が押し寄せ被害を受けた、宮古市海沿いに位置する元キャンプ場に寄る。キャンプ場のトイレと炊事場をそのまま残し、震災遺構として津波の怖さ、高台へ逃げることの大切さを学べる場所となっている。ぐにゃりとありえない方向へ曲がったワイヤーや、剝き出しのコンクリートが頭から離れない。8月下旬、誰もいない荒廃したキャンプ場は、雑草に覆われ、鳥がさえずる平和な場所でもあった。

津波の被害があった中の浜の元キャンプ場。ここは炊事場だった

宮古市を後にし、海沿いに南下するが、相変わらず高速道路から海はほとんど見えない。次の寄り道は、大槌町の文化交流センターおしゃっち。役所と図書館と多目的ホールを混ぜてひとつにしたような施設で、二階の震災伝承室では、写真や動画で当時の町の様子を知ることができ、町の人たちへのインタビュー映像も見ることができる。特に印象的だったのは、津波による犠牲者612名の生前の様子と被災状況をまとめた「生きた証回顧録」だ。犠牲者一人一人の名前、家族構成、人柄、どこでどうして亡くなってしまったのか、事細かに紹介されていた。何名かの犠牲者の被災状況を読んで改めて気づいたのは、「津波は自分のところまではこないと思っていて、逃げ遅れた」方が多いということ。もし逃げていれば、この人は今も大槌で暮らしていたかもしれないと想像したら、胸が痛い。

宮古から2~3時間運転して着いた平泉は、三陸の震災遺構で見た悲劇が嘘のように感じるほど、のどかだった。中尊寺や毛越寺に参り、そば庵しづか亭という食事がおいしい、こぢんまりした温泉旅館に一泊した。

うれしいお部屋食

5日目:平泉⇒花巻

五日目、途中一関市厳美渓に寄って観光し、花巻に車で戻る。厳美渓の名物である、対岸にある郭公屋から団子がロープで飛んでくる「かっこうだんご」を食べる。店は渓流をはさんだ対岸にあり、籠に代金(団子三本セット500円)を入れて木槌で板をたたくと、籠が引き上げられて、しばらくするとお茶と団子が届く。団子のロープウェイのようなシステムだ。

ロープは対岸にある茶屋につながっている

花巻に昼過ぎに着き、車の返却まで時間があったので、藤三旅館で日帰り温泉を堪能した。藤三旅館の名物である、白猿の湯(混浴)は、先客が居たので入りそびれたが、男女別のお風呂もとてもよかった。

五日目の夜はゲストハウスmeinnで一泊し、花巻市街をぶらぶら。一人旅最後の夜、ゲストハウスでは自転車で日本一周する旅人と出会うなど、一期一会を楽しむ。六日目の朝、大阪に戻った。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?