子供の頃のあの子を、君は覚えてる?
「ねーぇ〜!!10秒数えて!かくれんぼしよ!!」
放課後、夕方3時。
町には子供達の下校を見守りをお願いする放送が流れ、たくさんの小学生達で溢れる。
わたしが週に何回か仕事をするその場所は、いわゆる公民館で
そこはまさに小学生のパーティー会場だ。
ここに来はじめてもう2年、気がつけばわたしは「お店屋さんの"せんせい"」と呼ばれるようになった。
子供にとって、小学校の周りにいる人は全てせんせいなんだろう。
ここに立つと、毎日
小学生が代わりがわりに話しかけてくる。
「ねぇ見て、俺が作ったねり消し見て」
「あのさ、私さ名前なんていうかわかる?」
「アイスクリームやさんのせんせい、おばあちゃんがまだ迎えに来ない🥲」
「抱っこして」「お腹痛い」「アイス食べたい」「お母さんに電話して」、、、
子供達が帰るまで、その戦いは続くのだ。
その中で、1年生の頃からずっと声をかけてくる、2年生の2人の女の子がいた。
「ねーぇ〜!かくれんぼしようよー!早く10秒数えてぇ〜!」
この子達の言うことは、ほぼ毎日決まってこれだった。
下校の合図と共に広場に走ってきて、我先にと声をかけてくる。
とはいえ、わたしも相手にし続けるわけにはいかないので
「数えないよ〜お仕事してるからね〜」
「わかったわかった〜いーち にーい じゅーう 150 あっ」
なんてはぐらかしながら、時々様子を見つつ危ない目に遭わないように声をかけたりしていた。
雨の日は裸足で走り回り、秋にはベンチに座って2人で漫画を読み、広場のシロツメグサを摘んでは、花飾りを作ってわたしにくれた。(写真の通り)
どんな時でも、常に一緒にいたお転婆な女の子、このあたりだと「しょーから」って言うんだろうか。
そんな2人が
突然離ればなれになることを聞いたのは、つい先日のことだった。
「つーちゃん、東京のおうちに引っ越すんだって。」
それを教えてくれたのは、仲良しの2人のうち、地元に残るほうの女の子。
「えっ!?そうなの!?いつ!」
「わかんなーい!!9月のねぇ 後ろのほう!!だからもうすぐいなくなっちゃうんだって!!てんこうするんだってーー!!」
この子は、周りに常に人がいて、言いたいことははっきり言う、負けず嫌いな強い女の子だった。
だけど、引っ越しのことを伝えてきてくれた時の声は
びっくりマークが付いているようなでっかい声だったけど
どこか悲しくて、触れたら泣いてしまいそうなようで。強がった声だった。
「わたしたちはずっと友達だよー!」
そう言ってわたしの店の目の前でハグをしながら、誓いをたてていた2人。
それから数日間は、いつもと変わらず元気に遊び回っていて
本当にもうすぐ離ればなれになっちゃうの?ってくらい変わらない光景だった。
先日、わたしにまた花をプレゼントしにきてくれた。
「あのさ、いつもさ、あのさ、、、」
何かを言いたそうに2人でもじもじしてたんだけど、わたしは2人が持って来た花が"彼岸花"な事に動揺して
「ちょ!!彼岸花!摘んで来たのぉ?!なんか彼岸花って毒が!毒とかなかったっけ!?手ぇ洗ってきな!!」
と慌てて声をかけちゃったもんだから、最後まで聞いてあげられなかったんだよなぁ。
申し訳ないことをしたな、、と思いながら、気づいたら9月も終わる。
10月になったら
2人は1人になって、でも、いつもと変わらない放課後がやってくる。
きっと、あの子はまた私に話しかけてくる。
いや、きっと。
みんなさ、子供の頃に友達だった子と、今も友達?
あの時、公園で遊んでた子の名前、覚えてる?
転校していったあの子は、どんな子だった?
小さい頃の記憶は
新しい記憶と共に少しずつ忘れていくかも知れない。
新しい場所に行って、新しい環境で新しい出会いを繰り返していくうちに、名前さえ思い出せなくなるかもしれない。
だけど、あの時この場所で遊んだあの子との時間は、紛いもなく本物で
本人たちが忘れても、"場所"が君たちを覚えてる。
わたしは、"先生"でも"親"でもない。
踏み入って叱ったり、何かを教えたりすることもできない。
じゃあ、わたしがこの場所で出来ることはなんなのか。
それは、みんなの思い出の片隅に居続けること
なのかもなぁ、
そう感じた秋の始まりでした。
お転婆娘たち、大人になってさ、いつかこの場所を思い出すことがあったら
その時は一緒にかくれんぼしようよ。
ちゃんと10秒数えるから、覚悟しなよ〜!!!
そうそう、彼岸花の花言葉のひとつ、調べてわかったよ!
「また会う日を楽しみに」
なんだってね!!
また会おうな!
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