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お化け屋敷の殺人 後編

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7【それぞれの秘密】


「どうも刑事達が毎日、尾行している様だよ」
「そうみたいね。私のところにもいる。出したゴミなんかも袋ごと持ち帰って調べてるみたい。気持ち悪いわ」
「行動には気を付けた方がいい。あらぬ疑いを掛けられたら損だ」
「そうだけど……」
「暫くは用心して会わない方が良いな」
「どうして? 何か後ろ暗い事でもあるの?」
「いや別にないけど、余計な疑いを掛けられるのは嫌だし、会社だって今度の事でいい顔をしてないんだ」
「別にあなたのせいじゃないんだから、そんなに心配することは無いと思うけど」
「社会て奴はなかなか理屈通りに行かない事が多いからね。つまらぬ疑いや噂話には気をつけた方がいいんだ。君だって……」
「私のあの事なら、もうこれで無くなるんじゃないかなぁ」
「どうしてそう思うんだい?」
「まあ、何となく」
「何となく?」
「うん」
「ねえ、もしかしたら、君」
「何?」
「あの時、本当にあの子とは話をしただけか?」
「そうよ。そう言ったじゃない」
「でも、そのあとすぐ、あんな事に」
「それは、私は知らないわ。やっぱり私を疑ってるの? 酷い!」
「いや、信じてるけどさ、あまりにもタイミングがピッタリで」
「それは、私もびっくりしたけど、でも、私じゃないわ、私は何も知らないのよ。信じて!」
「分かった。信じるよ」

 以上はその日の深夜交わされた米津と奥田のLINE通話の一部である。
 しかし、米津はそう言ったものの、まだ完全には奥田の言う事を信じきれずにいた。
 あの日、事件当日、少し持ち場を離れると言って、どこかへ消えた。監視カメラの時刻で確認すると菅田マキが殺害されたのが、17:22だから、その前後10分ちょっと奥田はいなかった。戻って来たのは血を付けた白いロングスカートの女が出口に現れる直前である。
 奥田がいない間、入口ゲート前の窓を開けて客のチケット確認をしていた。そのため菅田が倒れる瞬間のモニター映像を見逃してしまった訳だが、警察の聴取ではその事を隠しておいた。でないと奥田に疑いが掛かる。
 疑い? いや、もしかして本当に奥田が菅田を殺めたのかも知れない。犯行は充分可能なんだ。そして、もしかすると動機がない訳ではない。
 米津は迷っていた。
 奥田の言う事を信じて、警察には言わないでおくか、あるいは真実を伝えて、真相を探り出して貰うか。
 あの探偵、万画一とか言ったな、あの人なら、ちゃんと真実を見抜いて真犯人を言い当ててくれそうだ。
 その結果、奥田が囚われたとしても、仕方ない。
騙されているのか、いないのか、それでハッキリするなら、覚悟を決めて受け止めよう。
 それと、自分と菅田マキとの一件は探られたくない。それこそ事件とは無関係だ。その事を言う必要はない。誰も知る者はいないはずだし。

 さて、こちらは別の日、まだ昼間の話である。
 とある大学の図書室の片隅、2人の女子学生が並んで腰掛けている。それぞれに何かしらの書物を前に広げ、ノートを置いて仲良く何か調べ物をしているかの様に見える。
 だが、それらはカモフラージュであり、話の内容はその表情から窺い知れないほど、冷ややかで怖ろしいものであった。
「いい? この瞬間も刑事達が私達を見張っているわ。くれぐれも感情を表さずに穏やかにしていてね」
「会話するのは大丈夫かしら。盗聴器とか仕掛けられてたりしたらイヤだわ」
「その可能性も否定は出来ないけど、今着ている服や鞄は大丈夫なはずよ。あなたのはどう?」
 そう言われた女はさりげなく自分の洋服や持ち物を確認してみる。
「多分、大丈夫だと思うわ」
「なんなら筆談も交えて会話しましょう。スマホは使わない方が無難だと思うわ」
「分かったわ。でも何の用? そこまでして」
「ふふふ、あなた、私が何も知らないとでも思ってる?」
「何の事?」
「スダチの事件の時よ」
 スダチ……、菅田マキの呼び名である。
「それが、どうしたの?」
「あなた、あの時、持ち場にいなかったわよね」
「どうして、そんな事を?」
「見たのよ、私」
「何を?」
「事件の起こった時、持ち場に戻るあなたを」
「……」
「あなたが殺したのね」
「何を根拠に」
「だって変じゃない、あんな時間に持ち場を離れてるって、この事、警察に喋ったら、あなたの立場は相当悪くなるわよ」
「持ち場を離れたって事だけで、殺人の証拠にはならないわ」
「そう、じゃ、とことんシラをきればいいわ。判断するのは警察の方だし」
「密告するつもり?」
「ふふ、持ち場を離れてた事は認めるのね」
「そうじゃないけど」
「いいわ、すぐには言わないから」
 女はさりげなく隣の女の表情を盗み見る。
 澄ました顔で書物の文章をノートに写し取っている。
「……何が目的?」
「目的? さあ、別に? ほんとの事を知りたいだけよ」
「私を揺すろうと思ってるなら無駄よ」
「そんな事、思ってないけど、どうして無駄なの?」
「私だってあなたの事、知ってるわ」
「知ってるって、何を?」
「グレパイでの事よ」
「何の事かしら?」
「やっぱりしらばっくれるのね」
 女は下を向いたまま、微笑みを浮かべる。
「あの子のページに嫌がらせしてるの、あなたでしょ」
「さっぱり分からないわ」
「警察が調べればネットの書き込みなんてすぐバレるのよ。おそらくDMなんかもしてるんでしょ。そんなのも全部、調べられるわ。隠し通せる訳なんてない」
「なんの証拠があってそんな事を?」
「これ」
 女はノートの隅にある言葉を書いた。
「これ、あなたでしょ」
 隣の女はそれを横目でチラッと見る。
「ふん、あなたの思い違いよ」
「そう、だったらそれでもいいわ。じゃ、そろそろ私は行くわね」
「ちょっと待ちなさいよ」
「大きな声を出さない約束でしょ。じゃね」
 女は微笑んで軽く会釈をすると、さっさと歩き出した。
 その場に残された女は唇を噛み、その背中を睨み付け、シャーペンのキャップを激しくノックした。

 さて、ここで少し時間を戻して、菅田マキ殺害の1週間程前の出来事をひとつ。
 お化け屋敷のスタッフルームにて、まだ開館前の準備中の時刻。
 室内にいるのは菅田マキと奥田リラの2人。
「どう? 彼とは上手く行ってる?」
「えっ、えっと、そうですねー、あれっ、菅田さん、私に彼氏が出来た事、ご存知でしたっけ?」
「ん、何となくね、相手までは知らないけど」
「あ、そうなんですか? なんで分かっちゃったんだろ?」
 と言いながらも奥田はにこにこする。
「今度、彼の部屋でお料理作ってあげるって約束しちゃったんです」
「あら、それは良いわね。何を作るの?」
「あはっ、私ってカレーくらいしか作れないんですけど、彼に何が好きって尋ねてみたら、パプリカが好きだ、なんて言うんですよ。私、パプリカなんてお料理した事ないから、困っちゃって、あはは」
 と、奥田は屈託なく笑う。
「パプリカなんて生で食べられるんだから、サラダにすればいいじゃない、カレーと生野菜のサラダだったら夏にピッタリだし」
 菅田もそうアドバイスして笑って見せる。
「あ、そうですね。その線で考えてみます。ありがとうございました。それじゃ、私、外の準備がありますので行きますね」
 と奥田は引き戸を開けて出口に向かう。
「はーい、じゃまた後でね」
 と、菅田も手を振って送り出す。
 奥田が去ってしまうと菅田はテーブルの下で震える拳を強く握った。先程までとは大きく表情が一変して、強張った顔になる。口裂け女のメイクをしているので、見た目は相当に怖ろしい。
 そんなやり取りをスタッフ通路のドアの隙間から、息を潜めて聞いていた人物がいた。


8【小泥木警部の推理】


 小泥木警部はオクラのグレパイの投稿履歴を当たった翌日、奥田リラ本人と連絡を取った。
 幸い午前中なら時間が取れるという事で、奥田の通う大学近くのカフェで待ち合わせて話を聞く事になった。
「お忙しいところをすみません」
「いいえ、それは構いませんが、どういうご用件でしょうか?」
「はあ、あの、あなたがオクラ名義でやっているグレパイの投稿についてなのですが」
「ああ、はい、それが何か?」
「昨夜、署に戻ってから拝見させて頂きまして、それでですね。率直に申し上げますが、投稿される度に毎回嫌がらせとしか思えないコメントを受け取っていますね」
「ええ、確かに、そういうのはありますね」
「あなたとしては、この事について、どの様に思われていらっしゃいますか?」
「そうですねぇ」
 奥田は少し首を傾げて考える様な仕草をした。
「まあ、気にはなってしまうんですけど、なるべくそれは見ないようにして、無視する事にしました」
「何度か相手は名前を変えて書き込みして来ますね」
「ええ、それはおそらく、私が相手をブロックしたからだと思います」
「ブロックしたら相手はアクセス出来ないという事ですか?」
「はい、それで一旦やめるかなんかして、また新しく登録し直して別の名前を使ってアクセスして来るみたいです」
「なるほど、これについて、何故、相手がその様な事をするのか、その理由について何か心当たりはありますか?」
「さあ、特に何も思い付かないです」
「そうですか。私の方で調べたところですね。最初、といっても7月の初め頃ですが、割りと普通にコメントされてたのを、オクラさんが見逃したのか、返事を返してないのが一件ありましてね。その次あたりから段々と、“澄ましてる“ とか“プライドが高い“ とか、少しずつ攻撃する様なコメントに変わっているみたいなんです」
「え? 私がコメントへの返事を抜かしてしまってたんですか? それは知らなかったですけど、でもそんな事で、そうなるものでしょうか?」
「確かにオクラさんは時々、コメントへの返事を怠っている事があります。これは無意識ですね」
「え、無意識ていうか、そういうのがあるって事を今初めて知りました」
「奥田さん、それを無意識というのですよ」
 奥田は言葉に詰まって口をパクパクさせる。
「もちろん、それで、気を悪くしたとしても、次に相手を攻撃してしまうのは、向こうがいけないのですけどね、ネットではよくこういう事があるそうです」
「それで、途中名前を変えてはいますが、多分同じ方だと思います。8月に入ってさらに発言はエスカレートして来ますね。投稿内容にケチをつけるだけでなくて、あなたのプライベートに至る点まで、特に、“色目を使ってオトコをたぶらかせる“だとか、“淫乱女“だとか、あ、すみません、こんな所で」
 小泥木はうっかり口にしてしまい、慌てて辺りを見回す。幸い店内は人気が少ない。
「いえ、大丈夫です」
「あと、“馬鹿“など“死ね“などの罵詈雑言ですが、奥田さんはこれに対して被害届を出されますか? ご存知の様に警察にはサイバー犯罪対策課というのがございまして、あまりに酷い内容だと侮辱罪にも該当し、何なりかの対応が出来ると思います」
 奥田は暫く黙って考え込んでいる様だったが、
「いえ、もう少し様子を見てから、検討したいと思います。ありがとうございます」
と、頭を下げる。
「でもね、菅田さんの事件がありますので、こちらとしてはこれが何か関わっていないかとの捜査をしている訳です」
「それはどういう意味ですか?」
「もしかしたら、あなたはこの誹謗中傷をする相手をどなたかご存知じゃないのですか?
 奥田は大きく目を見張り、
「いいえ、何故そんなことを……」
「現在のこの相手、名前を“マチガイサガシ“と語っている方、たまに、あなたのバイト先を知っている様なコメントされてますね。例えば、“自分だけ待遇を良くして貰っている“ とか、“お前もオバケになれ“、だとか」
 奥田は黙っている。
「菅田さんが殺害される少し前のマチガイサガシからの書き込みに、“パプリカのサラダは上手く出来たか?“ とありますね。これは、どういう意味ですか? あなたのこの日の投稿や以前の投稿、または他の方へのコメント返しにも、どこにも一切、パプリカなんてワードは出て来ません」
 奥田は返事を返さなかった。少しの間、沈黙が続く。
「警部さん、私、そろそろ講義がありますので、申し訳ありませんが、これで失礼させて頂きます。グレパイの件は先程申しました様にもう少し様子を見てから判断致します。では」
 そう言って奥田リラは立ち上がるとカフェを出て行った。

 午後になり、小泥木警部は米津のもとを訪ねた。
お化け屋敷は平日のため休業なので、それを企画運営する本社の方である。
 オフィス街にあるその本社ビルの応接室で小泥木警部は米津ケンジと向かい合ってソファに腰を下ろした。
「米津さん、あなたは奥田リラがグレパイで誰かに誹謗中傷を受けていたことをご存知でしたか?」
 米津はネクタイまでは締めていないが、カジュアルなジャケット姿で、こう見るとなかなかの好青年だ。
「ええまあ、一応それとなく耳にはしてました。たまに内容も見てみました」
「それで、どうしました?」
「いや、別にどうする事も出来ません。私は奥田には気にせず無視するようにとアドバイスしました。向こうもある程度時間が経って、相手にされないと分かれば、いずれ止めてしまうだろうと思いまして」
「まあ確かに日数的にはまだ短い期間ではありますからね。ただ私が少し気になるのは、この相手、マチガイサガシという名前で登録してますが、本人は何ひとつ投稿がないんです。もちろんプロフィールもありません。それで、この人のオクラさんの日記への書き込み内容を見ると、案外、身近な人ではないかと思えるんです」
「まあ彼女は大学生ですからね、交流関係はたくさんあるでしょう」
「ですけどね、この内容をよく見てますとね、もしかしたらこの相手は、お化け屋敷のスタッフの中にいるのじやないか、とも受け取れる訳ですよ。そこには亡くなられた菅田さんも入ります。これについては米津さんはどの様に思われますか?」
「いや、どう思うかと言われても、全く分かりません。警部さんはこの誹謗中傷の件が菅田さんの殺害と何か関連しているとお考えなのですか?」
「それはまだ何とも言えません。ただ、そういう可能性もあり、それについて何か思い当たる事はないかとお尋ねしている訳です」
 米津は小泥木の言葉を聞いて、ふんふんと軽く2、3度頷いた。
「思い当たる事は特にありません」
「パプリカというワードに思い当たる点はありませんか?」
「ありません」
 米津はそう言い切った。

 その日の夕方、小泥木は旅館『潮月』に電話をかけて万画一に繋いで貰うようお願いした。
 すると、万画一は昨夜から県外に出掛けていて明日にならないと帰らないと連絡が入ったという。
 なぜ、県外に? と小泥木は首を傾げたが、では戻り次第こちらに連絡して下さいとの伝言をして電話を切った。

 仕方なく、万画一探偵の不在のまま、捜査会議が行われ、スタッフを張り込んでいる各刑事からの報告を受けた。
 誰一人不審な行動をする者はなく、事件に関係ある様な物をどこかに捨て去った形跡もないとの報告であった。
 一方、通り魔的犯行説も捨ててしまう訳には行かず、事件当日前後からの各通りや店舗に設置された防犯カメラなどの映像を隈なく点検させているものの、これらからも特に目を引く人物や不審な行動をする者は見当たらず、収穫は得られなかった。

「どうします。このままでは手掛かりも掴めないまま、イベントは終了してしまいますよ」
 担当の刑事がそう呟いた。
 そこで警部は集まった刑事達にグレープパインというSNSで奥田リラが誹謗中傷を受けていた事、そして、その相手がお化け屋敷のスタッフ内の誰かではないかという疑いがある事を話してみた。
「という事は、警部は奥田リラがその誹謗中傷していた相手を菅田マキだとつきとめて殺害した、そうお考えなんですか?」
 小泥木警部は、はっきりとそう尋ねられ、う〜むと考え込んだが、
「可能性としてはかなり大きいと考えられる」と、口にした。

 刑事達一同は、息を呑み、暫く考え込んでいたが、一人の刑事が、
「可能性は高いと思われますが、物的証拠が有りません」と、指摘する。
「それなんだ」
 警部は拳を握り締めた。
「問い詰めて本人に口を割らせますか?」
「とりあえず重要参考人として任意同行させて、取り調べを行いましょう」
と、そんな意見が飛び交った。
「分かった。その方向で考えてみるが、事は慎重にした方がいい、幸い奥田リラに逃亡の可能性は低いと思う。それに尾行がぴったりと張り込んでいるからな。明日もう一度万画一さんにも加わって貰って会議を行うとしよう」
 と、その日はそれで解散となった。


9【誹謗中傷の犯人】


 その翌日、午後になってようやく万画一探偵が警視庁に姿を現した。
「万画一さん、どちらに行かれてたのですか?」
 警部の問い掛けに、
「ええまあ、それはおいおい」
 と笑って取り合わず、にこにこ笑うのみであった。
 小泥木警部は早速、万画一を奥の応接室に連れて行き、昨日までに調査した内容と奥田と米津に直接会って話をしたやり取りを語って聞かせた。
 万画一は警部の話の一つ一つに頷き、時には頭の上の雀の巣を掻き毟るお馴染みの仕草をしてみせた。
「なるほど、さすが警部さん、よくお調べになりましたね」
 万画一にそう褒め立てられて小泥木警部も笑みを浮かべて満更でも無さそうに頬を上気させた。

「でも、動機がありアリバイはない、というだけで、確固たる証拠が見つからないのですよ。もちろんやっていないという証拠もない訳ですが」
「そうですね。警部さんはそれで、どうなさるお積もりですか?」
「とりあえず署の者達は任意で同行願って、自供させようと息巻いておりますけどね。果たしてそれで上手く吐いてくれますやら」
「そうでしょうね。自供させるには、やはり何か動かぬ証拠を見つけないとダメでしょうね」
「万画一さんもそう思われますか」
 警部は若干肩を落とした。

「それで、万画一さんはどちらに行ってらっしゃったのですか? そう言えばスタッフの履歴書を元に何かお調べになると仰ってましたね。そちらの方面から何かお分かりになりましたか?」
「そうですね。まだいくつか確認したい事がありますので、そのお話はそれからにさせて頂くとして、警部さん、前にチラッと見せて貰いました菅田さんのバッグの中にメモ帳が御座いましたよね」
「ああ、確か有りました。持って来させましょうか?」
「ええ、お願い致します。それとスマホも良ければ」
「ええ、はいはい、お安いご用です。ただし、スマホは暗証番号が判らないので中が見れないのですが……」
「ええ、構いません」
 警部は係の者に言いつけ、それらを持って来させた。
 
 万画一は自分のメモを見ながら、菅田マキのメモ帳を何度も見ては、ぶつぶつひとりごとを唱えた。
そして徐にスマホを手にすると何やらメモを見ながらナンバーをタッチする。
「あ、パスワードが解除出来ましたね」
 警部が驚きの声を上げる。
 そして、万画一はスマホの画面を操作して何かを確認する。
 そして例によって、またまた頭の上の雀の巣を掻き毟ることも忘れなかった。
「なるほど、そういうことか……」

「警部さん、お化け屋敷にスタッフの皆さんを集めて頂けますか?」
「え! 何ですと! これからですか? しかも全員」
「はい、米津さん、奥田さん、椎名さん、上白石さん、ですね。時間は。何時でもご都合に合わせます」
「分かりました。すぐに手配をしてみます」

 かくして、その夜、再び、いや三度、小泥木警部と万画一探偵はお化け屋敷に出向く事になった。
 管理室で待ち受けてくれていた米津に従い、スタッフルームに入ると、前回と同じ並びで、上白石、椎名、奥田、の順番で女性陣が顔を連ねていた。
 米津が正面奥にある窓の前に腰掛ける。
 次いでスタッフ通路のドアを背に小泥木、引き戸近くに万画一の順である。もちろん屋敷内外には何人かの刑事が待機している。

 警部が簡単に挨拶をして
「では、万画一さんお願いします」
 と、後を委ねる。
「はあ」
 万画一はペコリと会釈をすると、お釜帽を取り、頭を掻いた。
「今回の事件は、皆さんのアリバイが実証されないものですから、動機の点から考えてみました」
「ちょっと待って下さい」
 米津が手を上げて話の続きを遮る。
「外部の通り魔的な犯行とは見られないのですか?」
「全く可能性が無い訳では無いのですが、それなら何故、指紋や足跡が残されていないのでしょう?」
「それは……」
「監視カメラも含めて何かしらの痕跡は残るものです。それらが無いという事は外部の犯行は不可能と考えるしかありません」
 米津は黙った。
「さて、その動機についてですが、まず出て来たのがここでその名前をお聞きしたグレパイというSNS。
それは警部さんがトラブルを発見してくれました。奥田さんが酷い誹謗中傷を受けていらした様です。
皆さんもオクラさんのページをご覧なられたでしょう。コメント欄に、ここ数週間マチガイサガシという名前で、嫌がらせの書き込みがされています」
 ここで万画一は静かにスタッフ一同の顔色を眺める。
「そのマチガイサガシは椎名さんですね」

 警部をはじめ、そこにいた者全員がハッとして顔を上げる。当の椎名ミカも驚いて腰を浮かせる。
「な、何を言われるんですか! どうして私が?」
「菅田さんのメモ帳にありました」
「スダチの?」
「そうです。そうです。スダチ、スダチ。それは菅田さんのグレパイでの登録名だったのですね。
これは少し意味を判読するのが難しいのですが、事件の起こる1週間程前の日付です。
オクラ、パプリカ とあります。
これは奥田さんからパプリカの話題を聞いた事のメモです。何故メモしたのかも後ほどお話し致します」
 米津の顔をチラッと盗み見るも無表情のままだった。
「さて、菅田さんにパプリカの話をされたと、それは菅田さんしか知らない事です。そうですね奥田さん」
「はい」奥田は頷く。
「でもその後、それがマチガイサガシの名によって書き込みがされていた」
 椎名が反論する。
「だったら菅田さんが登録名を変えて書き込んでいたかも知れないじゃないですか」
「菅田さんはグレパイを7月末に退会していたのですよ。スマホで確認しました。登録名は最後までスダチのままです」
 椎名は少し動揺した。
「でも、だからと言って私とは限らない。モモだっているし、もしかしたら米津さんて事も考えられない? それ以外にも誰に話したか、そんな事分からないはずよ」
「いえ、奥田さんがこのパプリカの話をしたのは菅田さんだけなのです。これは奥田さんが誹謗中傷の犯人を特定するために仕掛けた罠だったのです。そうですよね、奥田さん」
「はい」
「何故、それが分かったのですか? 万画一さん」
 小泥木警部が訊く。
「菅田さんのメモ帳のこの下に、米、パプリカ 好き、? とあります。これは、米津さんがパプリカが好きな事を知らなかったと言う事だと思えます。実際はどうですか、米津さん?」
「え? 僕は、パプリカなんて特に好きでもないし、人に話した事もない。オクラにもそんな事、言った覚えがない」
「でしょうね、あなたはそのキーワードを聞いても何の反応を示さなかった。そこで、そうだったのじゃないかと思ったんです」

 それでも椎名はさらに食い下がる。
「でも、だからと言って、何故私だと?」
「奥田さん、その話をされたのはこのスタッフルームで、てすね。菅田さんとは大学が違いますから接点はここでしかないのです」
「はい」
「となるとその話を聞けるのはそこのドアあたりでしょう。となると椎名さんか、上白石さん、そのどちらかがマチガイサガシであったと推察出来ます。でも、持ち場の位置関係を考えると椎名さんに気付かれずに、そのドアの向こうで立ち聞きするのは困難でしょう」
 それでも椎名は認めたくなくて、何か言いたそうにしている。
「今は誹謗中傷の犯人を探すための集まりでは無いのですが、ついでですからね、皆さん、ここでご自分のスマホを出して我々に見せて貰えますか? そうしたらハッキリするでしょう。いかがですか?」
 万画一がそう言うと、
「構いませんよ」と米津がスマホを差し出す。
 次いで、上白石もスマホをテーブルの上に置く。
 椎名は、唇を噛み締めて、ぶるぶる震える。
「分かったわよ。私がマチガイサガシよ」
と、やっとそれを認めた。


「何故、そんな事を?」
 掠れる声で米津が椎名に訊く
「嫉妬よ。私達はこんな暗い所でお化けの役をしてるのに、奥田さんといったらいつも可愛い服を着て屋敷前で笑顔を振りまいて、すっかり人気者気取りで、それに米津さんにも取り入って……」
「それは彼女の責任じゃない、役割はこちらで決めてるんだ。今の持ち場に文句があるなら言ってくれ、それに、屋敷前は大変な仕事なんだぞ!」
「分かってるわ、そんな事、単なるつまらない嫉妬よ。申し訳なく思ってるわ」
 椎名は奥田に向かって頭を下げた。


10【万画一探偵の推理】


「奥田さん、ここにいる警部さんはね、誹謗中傷の犯人を菅田さんだと思い、それを知ったあなたが菅田さんを殺害したと推理した様です」
「万画一さん!!」
 小泥木警部は慌てて万画一の腕を掴む。
 奥田リラの方もびっくりして目を剥いて顔を青くする。
「そ、そんな、私、違います!」

 万画一はウンウンと微笑んで頷きながら、騒つく場を手で制して、話を続ける。小泥木警部へもひとつコクンと頭を下げる。
「さて、ここで話を菅田さんが亡くなられた当日の出来事について当たってみましょう。
菅田さんは皆さんもご存知の様に午後5時頃に休憩に入られました。まあ最初はこの部屋で休んでいたのかも知れません。
それからこの窓から外へ出られたのだと思います。
タバコを吸っていたのかどうかまでは分かりませんが、外で休んでいたと思われます。窓枠の足跡は菅田さんのものも含まれていましたから。
そこへやって来たのが、奥田さんですね」
 全員が一斉に奥田を見る。
 そこでまたも奥田はびくっと身体を震わす。
「奥田さん、その時の事をお話し下さい」
 万画一に促され、奥田は素直に話し出す。

「はい、米津さんに少しの間、持ち場を離れると告げて、カメラに映らない様に屋敷の左側を通って裏に回りました。
菅田さんは窓の外で腰を下ろして休まれていました。
彼女はいつもそうしてましたから。
私が寄って行くと、どうした? という顔をして、怪訝そうにこちらを見ました。
その瞬間、ああ、誹謗中傷してるのはこの人ではないんだと直感しました。
けれど、誰かに話した可能性もあるかと思い、
とりあえず訊いてみました。
パプリカの件を誰かに喋ったか?
答えはNOでした。
菅田さんは私がグレパイで誹謗中傷されてる事すら知りませんでした。
でもすぐに菅田さんにはピンと来た様です。
立ち聞きしてた人がいると、
私は個別にそういう嘘の情報を流すことをたまにしてました。でもなかなかヒットしなくて、やっとヒットしたと思ったのに、それが立ち聞きされてた結果だとは、私もマヌケでしたね。
でもその時に初めて私も誹謗中傷してるのが椎名さんだと気付きました。
事情を話すと、
菅田さんは何故か世間の中傷に晒されてた経験が有るらしくて、
私にアドバイスしてくれました。
見たくないものは見ないでいた方がいい、
やがて、そんなものはどこかへ消えて行くから、
お化けみたいなものよ、と笑うのです。
口裂け女の顔でしたが、私には優しく感じました。
それが菅田さんとの最期になりました。
それから私は持ち場に戻って、事件発覚の話を聞いたのです」

 それまで黙って話を聞いていた小泥木警部が思わず腰を浮かして声を上げた。
「すると、犯人は、誹謗中傷がバレた椎名という事か!」
 今度は全員が椎名に目をやる。
「ち、違うわよ! バカな事言わないで!」
 椎名は叫ぶ。

 「まあまあ、警部さん、先走りしないでください」
 万画一が笑って小泥木を窘(たしな)める。

「奥田さんが、屋敷前に戻った後、菅田さんはそろそろ休憩時間が終わる頃になり、窓からスタッフルームに入りここの引き戸から持ち場に戻ろうとしました。
 そこを犯人が待ち受けていて、襲撃した訳なのですが……、それが誰で、何故そんな事をしたのか、順を追ってお話し致します」
 みんなのゴクリと生唾を呑み込む音が聴こえた気がした。

「はい、さて、ここでもう一度菅田さんのメモ帳を探ってみました。これは日記の様になっているみたいなんです。横に書かれた数字が日付で、
それによりますと、まだ7月の中頃、どの様に書かれていたのかは省きますが……」
 菅田のメモ帳を捲る。不意にその手が止まる。
「米津さん!」
 唐突に万画一はその名を呼んだ。
「ひえっ」
 米津は喉の奥から小さな悲鳴を上げる。
 全員の緊張した視線が米津に注がれる。
「な、何でしょう」声が震える。

「米津さん、あなたは菅田さんから告白をされましたね」
「え! 何をですか?」
 今度は米津が目を剥いて青くなる。
「あはは、何をって、女性が男性に告白したんですよ。分かるでしょう?」
「そ、それがメモ帳に?」
「菅田さんは几帳面でしっかりした人だってお聞きしましたが、当たってますね。ご自分がフラれた事もちゃんと記録してありました。米津さんがパプリカを好きだと言う偽情報を聞いても、それをちゃんと手帳にメモしてました」
 米津はふーっと溜息を吐く。他のみんなもへぇーという顔をする。菅田と米津の一件に関しては誰も知らなかった様だ。
「でも、その事が今度の事件に何か関係があるのですか?」米津が訊く。
「関係ありません」万画一は答える。
「だったら何もみんなの前で言わなくても……」
 と米津は恨みがましい。
「あっはっは、ごめんなさい。でも、もしかしたら、その時にフったフラれたとかいう話を、何か聞かなかったかなと思いまして……」
「え、どういう事ですか、何も思い出せないけど」
「まあ、いいです。話を続けましょう」


 万画一は続ける。
「僕は捜査をするに当たって皆さんの履歴書を拝見しました。最近の履歴書にはあまり、出身地とか書かれていないのですね。そこで役所に伺いまして、申し訳ありませんが、皆さんの出身地を調べさせて頂きました、
菅田さんは他県のご出身です。ここでそれがどこの県かという事を申し上げるのは控えます。
そして、またもうお一方、同県出身の方がいらっしゃいました。
他の方は皆、こちらのお生まれです。
菅田さんとその方にその町で接点があるのかどうかは皆目検討が付きません。
でも年齢も近く同じ市町村なので、どこかに接点があるかと思い、その町の事を調べました。
その時点では藁にもすがる思いです。
そこで目についたのが、数年前に起こった事件。
ある高校生の自殺です。
年齢が菅田さんと同じで、調べてみると同じ高校でした。
そして、その自殺の主な原因は片想いの女生徒にフラれたからとあったのです。
校舎の屋上から飛び降りたとの事で、当時、と言ってもほんの数年前の事ですが、全国ニュースで流れた様ですね。僕にもうっすらとその記憶がありました。
その方の氏名は当時のニュースや新聞にも載りましたので、言っても差し支えないかと思いますので言いますが、佐藤という生徒でした」

 そこでみんな息を吐く。
 ここには佐藤という苗字の人間はいない。
 でも、何か関係があるのだろうか? 
 そしてそれは誰に繋がるのか?

 万画一は感情を表さす淡々と話を続ける。
「亡くなった高校生の佐藤少年が片想いしていた女生徒が、同級生の菅田マキさんであった事は関係者の間では周知の事実だったようです。
その後菅田さんは引っ越され、町を去り、
同じ様に佐藤家もご夫妻が離婚されて、お父さんは地元に残り、お母さんは旧姓に戻って、下の子供と一緒にこちらに引っ越して来られました。
その旧姓とは、上白石といいます」

 妙に静かで冷たい空気が流れた。

 皆の視線は宙を漂い、まだ、その真実に辿り着けないでいるかの様に、心ごと空間を彷徨っていた。
 小泥木警部でさえ、呆気に取られた様に言葉を失っていた。

 その空気を再び元に戻したのは、やはり万画一道寸であった。
「上白石モモさん、あなたは随分お兄さんの事を慕っていたらしいですね。突然お兄さんを失った悲しみは相当なものだったのでしょう。
やがてそれは、兄を失恋させた菅田マキを憎む事で精神のバランスを取る様になった。
違いますか? 
上白石……、いえ、佐藤モモさん」

 上白石モモはずっと俯いたまま、動こうとはしなかった。
 隣に座る椎名が肩に手をやって、モモと声を掛けようとした瞬間、暗く沈んだ声が聴こえて来た。

「たとえ、そうだとしても……」
 いつもの可愛らしいモモの声とは打って変わり、地底から聞こえて来る様な不気味な声が響いた。

「たとえ、そうだとしても、私が犯人だという証拠が、一体どこにあるというのだ!」

 キッと顔を上げ、万画一を睨むその目は、鋭い刃を思わせ、ギラギラと憎しみに燃えていた。髪は乱れ、その怖ろしい顔付きは周囲を威圧した。
 テーブルを囲むスタッフ仲間も、その変貌ぶりに驚き、一斉に後退りし、今にも飛び掛かって来そうな恐怖の塊に怯えた。

 万画一は、哀しそうな、悩ましげな眼差しでそれを一瞥した。
「殺害の時に使用したゴム手袋、消化器にその成分が残されていました。そのゴム手袋は犯行後どこからも見つかっていません。
手荷物を検査しましたが、ゴム手袋など衣服の中にでもしまっていたのでしょう。
そしてその後はずっと警察が尾行していましたし、捨てたゴミも全て回収しチェックしました。
犯行に使われたゴム手袋はまだ、あなたの部屋にあるのじゃないですか? 
警部さん、今からすぐに上白石さんの部屋を家宅捜索出来ますか?」
「あ、ああ、もちろんです。私の電話一本で捜査員達が一斉に動き出しますよ」
 小泥木警部はポケットからスマホを取り出し、高々とそう宣言した。

 まだ20歳にもならない悪魔の化身は断末魔の唸り声を上げ、その場に崩れ落ちた。

 数人の刑事達が一斉にスタッフルームになだれ込んで来て、上白石モモを取り押さえて、連行した。

 その後の警察の捜索によって上白石の部屋からゴム手袋が発見された。その成分と消化器に付着した成分は一致した。
 それ以前に上白石モモは犯行を自供した。
 殺害は次の様に実行したという。
 菅田マキが休憩を終える頃を見計らって持ち場を抜け出す。ゴム手袋はすでに嵌めていた。スタッフ通路を通り、椎名がお化け役として客を驚かせている隙を狙ってスタッフルームに入り、窓の外で奥田と話す菅田を確認した後、引き戸の外側に出て、消化器を隠し持って身を潜めた。
 そして持ち場に戻るために現れた菅田の後ろから、頭部目掛けて消化器を振り下ろした。
 不思議な事に菅田は上白石の存在に一瞬気が付いたものの、わざと無防備に背中を向けたという。
 もしかしたら、そんな復讐を覚悟していたのかもしれない。

【エピローグ】

 
 9月に入り、幾分過ごしやすい気候になった。
 大森の山の手にある割烹旅館『潮月(ちょうげつ)』の離れにある万画一道寸の下宿を、珍しく小泥木警部がひょっこりと訪ねて来た。
「やあ、警部さんこんなむさ苦しいところにようこそ」
 万画一はニコニコと満面の笑みで警部を迎え入れた。
「どうされました突然? まさか、また殺人事件じゃないでしょうね」
「違いますよ。そうそうあんな事が連続して起こったら、こちらの身が持ちませんや。ちょっとあなたの顔を見たかったから寄っただけですよ。すぐお暇致します」
「それにしても、今度の事件はちょっと悲しいものでしたね。次回は明るい事件でお願いしますよ。あっはっは」
「そんな事仰られても、明るい殺人事件などありませんよ。あっはっは」
 万画一は「お化け屋敷殺人事件」での功績を認められて、その報酬も受け取った。なので生活は暫く安泰である。自然と顔も綻んでしまうというものだ。

「それはそうと、万画一さん、運良く上白石の部屋からゴム手袋が出て来ましたけど、もし、見つからなかったらどうするお積もりだったのですか?」
 警部の質問に万画一はにこにこした。
「あはは、結果オーライでしたね。ま、見つからなかったとしたら、どうでしょ、それこそ、僕の名前の通り、万が一どうすん? ですね、あっはっは」
 その底抜けに明るい笑顔に少し呆れたが、
「そんなこと仰って、本当は確信を持ってらっしゃったのでしょう」
 小泥木警部はニヤリとして探偵を見た。

「ところで、万画一さん、あなたはどうして菅田さんのスマホのパスワードを解除出来たのですか? メモ帳にそんな数字は見当たりませんでしたが……」
「ああ、あれはもしやと思って、米津さんの誕生日の日付けを入力してみたのですよ。結果オーライです」
 そう言って万画一はぽりぽりと頭を掻いた。
「そうでしたか! それは気が付きませんでした。いや、見事な洞察力ですな」

「あ、そうそうそれから、万画一さん、お化け屋敷のその後、なんですけどね」
「ええ、どうかされましたか?」
「いえいえ、お化け屋敷が好評だったせいもあって、今度はハロウィンに向けて、ゾンビハウスがオープンしましたよ」
「本当ですか!」
「全く商魂逞しい奴らです」
「面白そうですな」
「また米津が責任者だそうです」
「そりゃ、良かったですね。行ってみますか?」
「いやいや、私は結構」
「もう懲り懲りですか、あっはっは」
「そうですよ、あっはっは」

 2人の朗らかな笑い声は秋の空に響き渡った。
この分だとゾンビ殺人事件も近いかも知れない。いやゾンビだと殺人事件にならないか。
 あっはっは
 あっはっは

 おわり
 

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