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なぜ生理用品はナプキンというの?

今日のおすすめは!

『生理用品の社会史』
田中 ひかる・著



*生理用品の社会史

Q 生理用品とは?

A ナプキン、布ナプキンなどのこと。

Qナプキンの名前の由来は?

A 日本で初めてのナプキンであるアンネ社の「アンネナプキン」という商品名が由来。

「アンネ」は、アンネの日記を書いた「アンネ・フランク」
「ナプキン」は、当時アメリカで「サニタリーナプキン」と呼んでいたのを採用した。

アンネ・フランクとは
1921年6月12日にドイツのフランクフルト・アム・マインで生まれたユダヤ人。
第二次世界大戦の際、ナチスドイツのユダヤ人迫害から逃れる為に2年間に渡って隠れ家で「アンネの日記」を書いた少女。
密告されてしまい、1945年3月上旬(15歳)のときにベルゲン・ベルゼン強制収容所でチフスに罹患し死亡した。



Q なぜアンネ・フランクを採用したの?

A 3つの理由がある。
① アンネの日記の中で、月経の事を「甘美な秘密」と表現しており、
当時月経に対して差別意識(月穢・げつえ)を持っていた日本とのギャップがあり、アンネの月経感を日本に広めたかったから。

「生理がある度に(といっても、今までに3度あったきりですけど)、面倒くさいし、不愉快だし、鬱陶しいのにもかかわらず、甘美な秘密を持っているような気がします。ある意味では厄介なことでしかないのに、その都度内なる秘密を味わえるのを待ち望むというのも、たぶんその為に他なりません。」

『アンネの日記』より

ちなみに
月穢(げつえ)と呼ばれるのは、標準的な月経周期が、月と同じ28日間だからである。「穢」は「けがれ」の事。
古い月経の呼び名の「月のもの」「月水」「月華」も同様の理由。


「アンネ」という耳馴染みの良い響きが優しくて清々しい印象の為、今までの月経へのマイナス意識を払拭できると考えたから。

③ 商品名の考案時、ちょうどアンネの日記が映画化直後だった為、話題性があった。




Q 「アンネナプキン」がまだなかった時代の経血処置の方法は?

A
布や紙が発明される前は、植物の葉や繊維を使用していたと考えられる。

日本では縄文時代の遺跡から麻が出土しており、『魏志』倭人伝にも麻の使用について記載がある。

平安時代には絹が伝わり、貴族は絹を袋状にして真綿を入れたものをナプキンのように当てていた。また、日本最古の医学書『医心方』では、布製の経血処置用品の長細いふんどしのような「月帯(けがれぬの)」「丁字帯」が紹
介されており、月経帯の先駆けになっている。


戦国時代
に大陸から木綿が移入され、江戸時代になって木綿が普及するまでは麻や葛布の切れ端が使用されていたと考えられる。
また、紙も一般に普及したため使用され始め、粗末な紙や綿を膣に詰めたり当てた上から木綿製の丁字帯で抑えていた。
丁字帯は馬の腹帯に似ている事から「お馬」、あるいは男性のふんどしの別称である「手綱」などと呼ばれていた。

明治時代に入って脱脂綿を詰める女性が増えた一方、単に詰め物をするだけの女性も多かったと『婦人衛生雑誌』に記載されている。
明治末期の1910年頃にアメリカ製の高級月経帯「ビクトリア」が輸入販売されるようになる。


大正時代
(1913年)に、コンドームを中心としたゴム製品を製造していた大和真太郎がゴム製タンポン「ビクトリア」の製造を開始。
日雇い労働者の日給とおなじ70銭という高級品であった。

ちなみに
人類がいつ頃から、どのような理由で経血を処理しようとしたかは解明されていない。


Q なぜ日本の生理用品は進化しなかったのか?

A
① 月経は不浄なもの、女のシモの事であるタブーがあった為。
② 明治時代の初潮は2年遅く、閉経は2年早かった事。
③政府が戦争の為に「富国強兵」を掲げて多産を促していた為、妊娠中は月経がないことから一生の月経回数が現在の9分の1しかなった為。
(明治時代の生涯月経が約50回程度だった。)

ちなみに
タブーの語源は、ポリネシア語で「月経」を意味する「タブ(tabuまたはtapu)」からきている。
月経時と出産時、出産後の女性が禁忌の対象であった為。

 民俗学者 大森元吉「禁忌の社会的意義 血忌習俗をめぐる推論」


Q 日本の月経タブーのどのように始まって広まった?

A
平安時代に宮廷で始まり、仏教界に広がり、まずは貴族社会に定着した。室町時代に大陸から到来した「血盆経」が受容され一般に広く普及した。
江戸時代には浄土宗、曹洞宗が女性信者の獲得を目的として積極的に唱導を行った。
(月経禁忌の慣習は、近代以降もこの宗教の勢力が強かった地域に色濃く残っている。)

血盆径とは
10世紀頃に中国で成立した偽経(後世に偽経した経典)で、明、清の時代に普及した。
女性は月経や出産の際に、経血で地神や水神を穢すため、死後、血の池地獄に堕ちるが、「血盆経」を信仰すれば救われるという内容。


前近代においては、「成長の証」として初経を祝いながらも、月経中は「禁忌」として小屋を隔離する一見矛盾する慣習に表れていた。


近代に入ると富国強兵を実現する為の重要な生理現象だと医学的な観点から月経禁忌は廃止された。
しかし、人々の生活には根強く残り、経血処置用品の扱いに影響を与え、生理用品は隠すべきもの、シモのものという現代の思想に残っている。


*女性にとって身近なナプキンの由来を知ると毎月の生理が少し楽しみになりました。

現代も生理の事を話す事や、お手洗いに行く際にナプキンを隠して持ち出す時など恥ずかしさがありますよね。
少しでもタブーがなくなっていければいいなと思います。

*それでは次回またお会いしましょう!



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