blumen taler

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マガジン

  • ラダック

    5年前に初めて『懐かしい未来』の本を開いた時から今まで、ずっとずっと私にたくさんの気づきを与えてくれる大切な場所、インド北部ラダックの日常。

  • インドネシア

    2019年2月@インドネシア・ロンボク島&バリ島

  • はたけ日記

    家の近くに小さな畑を借りて野菜作りをしています。畑が教えてくれたことを綴ります。

最近の記事

炭酸飲料と母への優しさ

私のラダック人の友人は、ラダックが直面している様々な変化を比較的客観的な立場から理解できている人であると思う。 20代後半の彼は、幼少期から現在に至るまでの人生の中で目まぐるしい変化の渦中に生きてきた人である。 「子どもの時はテレビなんて見たことなかったよ!」と話す彼は今では自分のスマホを使って世界中の情報をキャッチできる。 そんな変化の中を生きてきた彼は、ラダックの生活スタイルや食習慣の変化が環境や人々の健康にどのような影響を与えているのかを知っている。そして、ローカリ

    • 観光によるキャパシティを越えた水の消費

      ラダックの人びとは氷河の雪解け水に頼って生活している。しかし、地球温暖化の影響によって氷河は溶け続けており、将来の水不足が懸念されているのが現状だ。 レーにある友人の家で過ごしている間は、ポリタンクに溜めた水を使って、タライの中で洗い物をしたり、空き缶に水を入れて手や顔を洗う。村では、家の側にある小さな小川を使う。 1週間に一回くらいの頻度で洋服を洗う時も、同じ水を使って4回くらい洗濯するため、水が真っ茶色になる。 トイレは、伝統的にはコンポストトイレというボットン式の

      • 生活の中の「生きとし生けるものが幸せでありますように」

        標高が富士山並みのラダックにも場所によっては蚊がいる。 厳しい環境に生きる蚊だからか、刺されるとかなり痒いし大きく腫れる。 ラダック人の友人に蚊に刺されたことを話していた時、ちょうど彼のほっぺたに蚊がとまっていた。 日本で育った私は、蚊を見ると反射的に叩いて潰さないと!という発想になる。そして何も考えずにバチっと彼のほおを叩いて蚊を潰したら、彼が唖然とした顔で私を見つめる。 そして「チチチ」と舌を鳴らす。ラダックの人たちは悪いことに対して舌打ちを3回くらい繰り返すのだ

        • 人間として自然なこと

          去年泊まらせてもらった、ラダック人のおばさんの家遊びに行ったとき、おばさんに会うなり 「さきは去年よりも太ったね〜!」 と言われた。 日本ではそんな風に言わないから少しびっくりしたが、当然彼女に悪気はなくニコニコしている。 太ったり痩せたりすることは人間として自然なことだから、きっと髪の毛伸びたねと言うのと同じ感覚なのだろう。 日本では、タブーと思われている年齢を聞くことや、相手の老化を指摘することもラダックでは、「人間として自然なこと」として捉えられている。 ラダッ

        炭酸飲料と母への優しさ

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        • ラダック
          12本
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          13本
        • はたけ日記
          4本

        記事

          ドンレドンレの文化

          自分の家に友人が遊びに来るとなった時、私は掃除をしたり料理を作ったりバタバタと忙しく準備を始める。家が汚いことや狭いこと、アクセスが悪いことなど色んなことを気にするし、それを相手に伝えて自らを卑下することも多い。 しかし、ラダックで人の家を訪問した時にそうしたバタバタした雰囲気を全く感じない。 突然の訪問でも、どうぞどうぞと中に招き入れて、お茶を作り始める。お茶ができたらビスケットと一緒に持ってきて、「ドンレドンレ(どうぞ)」とすすめてくれる。そして、自分も一緒に座って飲

          ドンレドンレの文化

          「観光」とどう付き合うか、お金とどう向き合うか

          遊牧民の暮らしを見たいと遊牧民がゲルを張っているエリアに連れて行ってもらう。 彼らの素朴で静かな暮らしに突如現れた違う民族の人たちが訳の分からない言葉で話しながら歩いてくる。手には自分たちのお給料では到底買えないようなカメラを持って、彼らの日常を撮影する。 見世物じゃない、ぜったいに 。 彼らは確かに生きている。その日常を見世物にしているのは、私たちだ。 いつからか、旅先で写真を撮ることが嫌いになった。去年ラダックを訪れた時にはほとんど写真を撮らずに帰ってきた。カメラを

          「観光」とどう付き合うか、お金とどう向き合うか

          いつまでも続くゴミの道

          荘厳なラダックの山々にはあまりにも似合わないゴミの道がバイクで10分くらい走っても終わらない。 早く終わってと心の中でいくら、望んでも祈っても果てしなく続く景色に絶望する。 なぜこうなってしまったのだろうか。 ラダック人の友人は、これまでにラダックに貧困や飢餓が存在したことがないと話す。 それは、ラダックの人びとはいつも分け合って生きてきたから。分け合うこと、助け合うことなど、相手に良い行いをすることが自分の未来や来世の自分の幸せに繋がると信じているからだ。 厳しい自然

          いつまでも続くゴミの道

          「ストレスは自分が作るものだよ」

          ラダック滞在中に、ゴミ捨て場を訪問した。 ラダックの荘厳な景色の中にゴミが広がる。いつまでもゴミの道が続いていて、風が吹くと色んなものが舞い上がり、景色がカラフルになる。野良犬や野良牛が不健康に太った体でゴミ山の中から食べ物を探している。 この景色を見て、あまりのショックに言葉を失った私は、ラダッキーの友人に話しかけられても反応ができなかった。 頭の中には色んな疑問が浮かんでくる。 どうしてこなったのだろうか。 このゴミは誰のゴミなのか。 この現状をどうしたらいいのだ

          「ストレスは自分が作るものだよ」

          インダス川の源流でペットボトルのミネラルウォーター、牛がいる家でパック牛乳

          ラダックの暮らしの中で皮肉な矛盾を見ることが多々あった。 インダス川の源流があるラダックでペットボトルに詰まったミネラルウォーター 牛を飼っている家のホームステイで出てくるパック牛乳… デリーでラダックへの乗り換えの飛行機を待っていたときに飲んだ水のペットボトルに「ヒマラヤの水」と書かれていた。それを見て心の中でにやっとする。これからラダックに行けば、これを思う存分、無料で飲めると思ったのだ。 ラダックに到着し、のどが渇いたから水がほしいとラダック人の友人に言うと、彼は

          インダス川の源流でペットボトルのミネラルウォーター、牛がいる家でパック牛乳

          ものに依存しない人たち

          いつも感じることだが、ラダックの人たちにお土産を渡しても期待するような反応はしてくれない。 喜ぶでも、驚くでもなく、あっさりと受け取り、一言ありがとうと言うだけだ。 こういう場面でいつもラダックの人たちのものへの執着のなさを感じる。 ラダック人の友人がいたずらに、私に車を運転させようとする。運転したことがない私は、「私が運転したら車を壊してしまうよ。」と言いながら断る。 それに対する彼の答えがなんともラダック人らしい。「全てのものはいつか壊れるよ。それに、いくらものを所

          ものに依存しない人たち

          最後まで慣れなかった時間感覚

          海外にいて、自分が日本人だなと感じるのは時間感覚についていけない時だ。 その土地の時間感覚に慣れずに、待ち合わせの相手が時間通りに来なくて焦ったり、現地の人と一緒に過ごす中で無意味に流れる時間を勿体無く思ったりする自分の姿に「日本人」であることを自覚する。 日本では、分(ふん)時には秒刻みの時間感覚で生きている。公共交通機関は1分の狂いも許されないし、20:00締め切りのレポートは、1秒でも過ぎたら受け入れてもらえない。集合場所へは集合時間の5分前には着いていることを心が

          最後まで慣れなかった時間感覚

          本当の生きる力

          最近ラダックの人たちの主食がお米に代わり始めているのだが、お米を炊くときは圧力鍋を使う。標高が3000-5000mと非常に高い地域であるため、沸点が低くお米を普通の鍋で炊くことはできないのだ。 お米の準備をする時、日本では計量カップを使って必要な合数のお米を炊飯ジャーに入れ、それに対し必要な水をいれる。 そんな生活に慣れた私がラダックでお米の準備をしようとする時に、米の量や水の量を聞くといつも笑われる。そんなの適当だよって。 ケーキを作った時も、小麦粉や牛乳などすべての材

          本当の生きる力

          町が変わっていく

          自分の住んでいる町がどんどんと変わっていく 短期大学が少子化のために経営が続かなくなり、閉校した。 レンガ造りの素敵な校舎は全て壊され、生えていた木もひとつ残らずなくなった。 広大な土地の土がむき出しになり、新しい建物を建てる準備を始めている。約300世帯が入るマンションが建つそうだ。 その向かいにあった大きな本屋さんが潰れた。 帰り道によく寄っていた本屋だった。 駅前のスーパーの2階にあった小さな本屋もなくなり、とうとう私の町には本屋がなくなってしまった。 昔からあっ

          町が変わっていく

          キッチンで話すのが一番好き

          先日中国人の友人の家にお邪魔して餃子の作り方を教わった。 お肉を食べない私は、中華料理屋さんで餃子を食べることがない。 そんな話を中国人の友人にすると、肉を入れない餃子があるから一緒に作ろうと誘ってくれた。 肉を入れない餃子は、 キクラゲ、干し椎茸、春雨、ニラ、炒り卵、干しエビが入っていて、味付けは生姜、にんにく、醤油とオイスターソース。 包み方も教えてもらった。 私はキッチンでお話しするのが大好き。 小学生の頃から帰宅すると鞄をおいて手を洗って、部屋着に着替えて、キ

          キッチンで話すのが一番好き

          中国人の友人がメイクをする理由

          中国人の友人に「なぜメイクをするの?」と聞いた。 こうした質問ができるのは、私がメイクをしないから。乾燥対策のためにリップを持っているだけで、口紅もチークも何一つ持っていない。時々、「メイクは社会のマナーだ」という言葉を半分信じて、企業を訪問する時や、ホテルでのお食事会に行く時などにメイクをしなくちゃいけないかなと頭をかすめるのだが、だいたい前日の夜のことで、今さらメイク道具を揃えることもできないし、メイクの仕方もわからないから結局、少し綺麗めの格好だけして「すっぴん」のま

          中国人の友人がメイクをする理由

          制服の役割

          バリ島ではバリの私立校の校長先生と共に過ごしていた。 実際に彼の学校も訪問し、優秀な高校生と先生方とのディスカッションの時間もいただいた。 先生は敬虔なヒンドゥー教徒で毎日の瞑想と宗教の勉強の時間を欠かさない。お家では24時間マントラが流れていた。 そんな彼と彼の奥さんと一緒に夕食を食べていた時のこと、学校の宗教と制服の話になった。 バリ島はインドネシアにありながらヒンドゥー教徒がマジョリティの珍しい島である。学校にはムスリムや仏教徒の生徒もいるがマイノリティ。 先

          制服の役割