見出し画像

ネコばあさんの家に魔女が来た~私のアウトロー読書感想文~

どーもどーも、闇属性作家の紫藤咲です。ここ数カ月にわたり、それなりに読書を重ねている私です。読書メーターアプリを利用して読書感想なんかもやっておりますけれど、200文字では伝えきれないという部分をどうにか皆さんに知ってもらえないだろうか――ということで、今回、感想文なるものを記事にすることにいたしました!

で、記念すべき第一弾が表題の作品。

『ネコばあさんの家に魔女が来た』です。この作品の著者である赤坂パトリシアさんとはTwitterにてちょくちょく交流させていただいていて、今回第四回カクヨムコンテスト特別賞を受賞され書籍化されたんですが、なかなかどうして読む機会に恵まれず。今回、時間ができたので気になっていた本を購入してみたところ、これがねえ。もうすっごいよかった! 

ではこの本のおススメポイントを闇属性ならではの視点で深堀してみたいと思います。そうです。タイトルにも書いてある通り、アウトロー読書感想文でありますので、通常、みなさんが読んだときに感じられるようなものは書かない方向です。それゆえ「え? こんなお話だったっけ?」「え? ちょっとそれ本当!?」というような内容であっても、あくまで一個人の勝手なダーク感想なので、それはそれ……ということでとらえていただけるとありがたいと思います。ただ、超絶おススメ本であるという点は変わりません。私の感想を聞いてみて、興味を持っていただければさいわいです。

なお、今回は感想の最後に著者である赤坂パトリシアさんからも貴重なお話をいただきましたので、それも一緒に掲載させていただきます。楽しみに最後までお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします!

では、さっそくこの本の魅力をひも解いていきましょう!

★人間関係の悩みにダイレクトアタックしている物語

主人公のユキノはいろんな人間関係に悩んでいる思春期の女の子です。過干渉気味な母親や杓子定規な態度の担任や同級生などとどう付き合っていいのか悩み、学校へ行けないし、ご飯を食べることもできない状況となっています。

もう、こうやって聞くだけで、なんだか他人事に思えない人、チラチラといらっしゃるんじゃないでしょうか? そうですね。不登校という形はとっているものの、会社という組織に毎日通って仕事をしている人だって、同じような状況はあるのではないでしょうか? また思春期など、親の干渉をものすごく受けて育った人たちも多いのではないですか? 事実、私もそのひとりです。

特にこの物語では、母親と娘の関係性も重要となってきます。これがねえ、なかなかしんどいんです。母親は娘のことを愛しているし、娘をなんとか社会復帰させたいと思っています。娘のためなら自己犠牲も厭わない、傍から見たらすごくがんばっているお母さんなんですよ! だからね、お母さんを責められないし、責めたくない。ここが娘の重荷になっていってしまうところでもあるんです。

私も経験があって、私が中学の一年生のとき。テニス部に入部して勉強がおろそかになったんですね。後ろから数えるほうが早いくらいに落ち込んでしまいました。私は部活が楽しくて、毎日部活をがんばっていたら疲れてしまって勉強せずに寝てしまったのが原因です。そうしたらねえ。休部させられました(笑) 成績が上から数えて50位以内だったら復活、そうでなければ部活を辞めさせるということで、学期末テストまで部活を休んで勉強にあけくれました。これも私のためだと言われました。「いい学校へ行けばいい友達とつきあえる。高校の友達こそ一生の友達となりえるから、いい学校へ行きなさい」というのが親の口癖でした。

部活を休んでまで勉強しましたから、50位以内に入りました。部活もやっていいと許可が出ました。ですが、そのころにはずいぶん他の子と実力差がついてしまって、当時の私はもう部活に行く気にもなりませんでした。そのうえ、当時って上下関係がものすごく厳しくて、「部活休んで勉強ばっかりしているやつがのこのこ練習に参加してるんじゃないよ」みたいな明後日の方向のお叱りを受けて(言った先輩は勉強がぜんぜんできない人でした)さらにやる気がそがれていってしまって、結果的に私は幽霊部員となってしまいました。まあ、自分の心が弱かったのもありますが、あなたのためという親のとった行動が(そして反抗できなかった)私のその後を変えてしまうことになりました。

あとは受験校もですね。行きたかった高校ではなく、受かるか受からないか五分五分のチャレンジ校を受験することになったのも親の意向です。志望校をチェンジさせられたんですね。「この学校はあなたに合っていないから、絶対にこっちがいい」と。このとき、私がどうして別の学校へ行きたかったのか、その理由は聞いてはもらえませんでした。そういうことが高校へ入っても続いていて、すごくつらかったのを覚えています。親の敷いたレールをひたすら走っている――それが嫌になって踏み外したのが大学生になってからなのですが、こういう経験をしてきたからゆえに、ユキノちゃんの「言葉が届かない」という思いはすごく共感できたのです。

私の両親にしろ、ユキノちゃんのお母さんにしろ、子供を大切に思っていることは疑いようもありません。愛情はたっぷりです。なんとか子供の力になりたいと思っていることも充分に伝わってきます。子供自身もその点に対しての疑いはない。ただ問題があるとするならば、彼らは子供を自分の思ったように操りたい――という点です。そしてそう思っているのだけれど、実際のところは彼らに『操りたい』という実感がない点なのです。それゆえ、本人たちは相手からエネルギーを搾取しているということにも気づかないのです。子供を疲れさせているのがまさか自分であるだなんて思う親はいませんよね? 気づけていたら、もっと適切な対応ができているでしょうしね。

こういう人のことを『マニピュレーター』とか『エナジーバンパイア』などと呼びます。マニピュレーターは相手を意のままにコントロールしたい人、都合よく利用したい人のことですね。これについては善人のフリをした狩人~植えこまれた悪意~を参考にしてみてください。

ではエナジーバンパイアとはなにか。簡単に言えばエネルギーを吸い取る人です。『どうもこの人と会ったあとは疲れるぞ』とか『楽しかったはずなんだけどどうにも体がだるいな』とかあった場合は要注意です。その人はあなたのエネルギーを吸い取る寄生虫だと思ってください。エナジーバンパイアはとても危険な存在です。そしてこれが親である場合、子供は並々ならぬ疲れを感じてしまうものです。

主人公のユキノちゃんもゴハンが食べられないことに悩まされていました。お母さんの作るものよりもポテチが食べたい。思春期なんてジャンクフードやスナック菓子が好きな生き物なんだから、当たり前じゃんと思うかもしれません。でも16歳とか17歳の女の子が、三温糖を口に含むだけでいいとかポテチだけとか、それは危険極まりないと思いませんか? 彼女は命をぎりぎり繋いでいたんじゃないか――なんてことまで考えられるわけです。自傷行為こそなかったものの、彼女の前にやさしい他人の大人が現れなかったら、もしかしたら最悪の結果を招いていたかもしれないんですから。

★解決策も書かれている本書の魅力

ここまで聞いていると「ちょっと内容がヘビーじゃない?」「読めるかしら? なにか怖いわ」と躊躇しそうになるかもしれません。しかしご安心ください。実はこの本には、こういった相手との解決策までしっかり書かれているんですよ! ここがね、またすごいんです!

エナジーバンパイアを寄せつけないために一番大事なのは、心身を健康状態に保つことです。心身を健康な状態に保つために私たちができることってなんでしょうか? はい。そうです。生活をきちんと整える――ということです。生活をきちんと整えるとは具体的にどういったことかと言えば、①ごはんをしっかり食べる ②睡眠をきちんととる ③外の空気を吸って日光浴をする と、こんなことがざらっと浮かんだ方は多いと思います。

実はこの本。①のごはんをしっかり食べるという点がものすっごくしっかり書かれているんです! しかも、ただのおいしいごはんじゃない! 和食なんだけど洋食なんです! ここがねえ、ごはんを題材にした小説がいくつもある中で、本書ならではのオリジナリティだと思います。

著者の赤坂さんは現在イギリス在住で、お話によれば、本書のレシピは実際に赤坂さんのご家庭のゴハンなのだそうです。そう聞くだけで「そっか! それじゃ自分でも再現できるんだ!」「これ、やってみたい!」ってなりません? 一話目の『ズッキーニのお好み焼き』はまさにそれです! ポテチを使ってお好み焼きを作るというのもとても斬新で、実際にどんなふうになるのか試してみたいと思ったこともたしかです。ただズッキーニがないので、まだ試してはいないのですが、このように実際に再現可能な海外風レシピというところにも魅力がど~んっと詰まっているわけですね! そんなレシピがたくさん載っていて、夜中に読むとお腹が鳴るという飯テロ本にもなっていますので、夜読む場合はお夜食食べてしまう覚悟を持って読むことをお勧めします。

と、ご飯を食べることに着目しましたが、他にもどうやったら自分たちを操作する人から逃げられるようになるのかという方法がユキノちゃんを通して描かれています。実用書を読むのは苦手。だけど方法を知りたい! と思う方には最適な本となるでしょう。ほっこりと優しい気持ちになる物語を通して人間関係を学べるなんて一石二鳥! さらにおいしいごはんのレシピ付きで一石三鳥なんです! これを読まずしてなにを読んだらいいでしょう!

と、アウトロー読書感想文ということで、ちょっとマニアックな深堀をしてみましたが、本書は号泣必至の感動物語です。きっとあなたも読んだ後、「ニワトコさああああんっっっ!」と叫ばずにはいられないでしょう(笑)

★最後に著者の赤坂パトリシアさんの思いをみなさまへ

ネコばあさんの家ファンアート

今回の読書感想文にあたり、赤坂さんにいくつか質問をさせていただきましたので、ご紹介をしたいと思います。本書の詳しい裏話は有料記事となりますが、梧桐彰氏の記事『作家の頭の中をのぞいてみよう』こちらに書かれていますので、興味のわいた方はぜひ購入してみてください。

ではここからはインタビュー形式での掲載となります。著者の赤坂さんの思いをどうぞみなさまへ!

紫藤:私自身、ユキノと同じ少女時代を過ごしたのですが、こちらの作品は赤坂さんの経験を基にされたのか。それとも書籍からという感じだったのでしょうか?

赤坂:ユキノの母ヨリコさん(作中には名前は出していませんが設定上はこの名前)はいろいろなお母さんの集合体です。たぶん、日本で求められるお母さんを全部注ぎ込むとああなるんだと思うんです。電車の中では子供を静かにさせて、体にいいものを手作りして、近所ともそつなくつきあって、家事もしっかりしてって。そんな彼女たちにゆがみが生じるとしたら『子供は予定通り動かない』ということなんじゃないかなって。あとはヨリコさん自身がお母さんに愛されたままをユキノにしていたってことにもなるんですけどね。心配しているのは事実なんですけど、「あなたのことが心配よ」って言いながら、心配すること自体で娘の自尊心とか削れていっちゃってるんですけどね。

紫藤:私も同じことを娘にするときがあります(笑)

赤坂:愛することと心配することの区別がついていなくって「この心配は私の問題で口にしたら子供の足をひっぱる」というのが見えないんですよね。そのくらい心配してしまっているし、大切だとも思っている。でも、たぶんその線引きってどんな親も苦労しますよね、。子供が失敗したり、傷ついたりするのを見たい親なんていないんですから。

紫藤:ですねえ。うまれたときに産声をあげなかったこととかも尾を引きますよ(笑)

赤坂:わあああ、わかります。子供のことは自分の責任じゃなくても「これは私の責任ではない」って言いにくいんです。

紫藤:そう。もっと丈夫に生んであげられたらとか、賢くしてあげられたならとか。自分のせいにしちゃいますよね。

赤坂:一歩引いたら、親のせいではないってわかるんですけどね。みんな自分の与えられた体とポジションから最善を尽くすしかないって。自分のことだとそう言えるのに、子供に関してはそういうのが難しいなあって思ったんです。

紫藤:日本社会はとにかく母親中心に家事や育児が回っていますからね。

赤坂:「大丈夫! 家のことは私に任せて!」って言わなくちゃって思っているお母さんって、周囲の年配の女性を見ていても、こういうことが基本にあるよなあって。私は男の子の親なのと違う文化圏にいるのでちょっと違うのですが、アジア系移民コミュニティでは似たような話を聞くんですよ。

紫藤:そうなんですね。

赤坂:本当はもう少し違う視点で話を書きたかったんですけどね。でも今回はそうじゃなくて、女の子が母親を乗り越えていくお話にしました。親がずっと強大な相手として認識されているのは、たぶんあまりいいことではなくて。子供にはある程度のところで親がいなくても生きていけるようになっていってもらいたいって。

紫藤:私も昔、よく言われました。親離れできない、子離れできない親子だって。今回、赤坂さんのお話や著書を読んで、あらためて親子の境界線を引くことの大事さとむずかしさを痛感しました。本書を読んで、ヒントを得て、生きづらさから脱却する方がひとりでも増えたらいいなと思っています。だって私自身、すごくいっぱい泣いて、心の中にあった傷が癒された、ユキノちゃんと一緒にがんばれたなって思えましたから。本を読むことで癒されることを体験してもらえたらって思ったので、今回インタビューも含めて、この記事を書かせていただきました。

赤坂:よかったです。母親もやっていると、自分の育てられ方をみて「これは下に手渡しちゃいけないな」っていうのがあったりしますし、わりと大切なことですよね。きっと親の間違いは繰り返さなくても自分独自のエラーを起こして子供に「えー」って言われるんでしょうけども(笑)

紫藤:束縛がひどかったので同じようにしたくなくて、かなり放置してますけどね(笑) 私もニワトコさんやキワコさんみたいな人に出会ってたらなあって思います。

赤坂:私もわりと放置気味かなあ。親とは違う価値基準の人とそこそこ会えたほうがいろいろいいんでしょうけれど……

紫藤:今はまたコロナもそうですし、近所の人を簡単に信じちゃいけない世の中になってしまっていますからねえ。難しいですね。

赤坂:難しいですねえ。コロナで苦しい思いをしている子はいっぱいいると思います。少しでも子供たちが生きやすい世の中になるといいですよね。

紫藤:本当にそうですね。今回は貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました。

赤坂:こちらこそ、長時間ありがとうございました。

【最後にアウトじゃない感想を】

学校にいけないユキノ。そんな彼女が出会った人は優しさと美味しさの魔法がかけられる魔女だった――もう、おいしいゴハンはたくさん出るし、ユキノちゃんの語りはかわいいし、彼女を包む人たちはめちゃくちゃあったかいしで、読む手をとめられませんでした。ラストの山場は大号泣で一旦休憩を挟むくらいでした。人との出会いが世界を変えていく――今、悩んでいる人たちの背中をきっと押してくれる、それがこの作品です。どうぞ手に取って、一緒に見守ってあげてください。読んだ後、きっとあなたの世界も変わり始めるから……


ネコばあさんの家に魔女が来た《カドカワストア》


ぜひ購入してみてください! みなさまとこの本についての感想を共有できます日を楽しみにしております!



この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

面白かったらぜひサポートを! 10円~で構いません。みなさんのよかったを教えてくださると次の励みになります! よろしくお願いいたしますm(__)m