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デンマーク:Frie Fagskolerという選択【learn-by-doing teaching】

デンマークにはFrie Fagskoler:無料職業学校というものがあります。
今回ある学校に興味ありますか?というお話があり、学校の方にお話を聞く機会がありました。
このNoteでは、その内容と周りにヒアリング・評価のために調べたことなどをまとめたものです。

結局のところ、そこには「行かない」選択をし、その近くの別の施設にお世話になってたためFrie Fagskolerには通っていません。結構時間を使っていることもあり、皆さんの参考になればいいただければ幸いです。


デンマークの初等義務教育

デンマークの義務教育はFolkeskolenと呼ばれており、主に6歳から16歳までの子供が無料で通い教育を受けることができる。
日本でいう小学校‐中学校にあたる教育である。
その後高校にあたるHigh SchoolやVocational High Schoolに通うことが通例となっているが、高校にあがるには、中学を終了する時点で義務教育の修了試験に合格しなければならない。
この資格を持って次に段階に進むことができる。

しかし、学力が足らず修了試験に合格ができない、様々な理由で学校に通えていなかったり、通わない選択をしたがゆえに高校進学を選択できない子供たちも出てくるケースもあります。
次を目指す子もいれば、そのまま家にいる子もいると聞きました。
その人口が増えていくとどうなるか・・・ と言うことが社会問題となり受け皿的なステップが必要と言うことになったということらしい。
その受け皿の選択肢の一つがFrie Fagskolerである。

Frie Fagskoler

Frie Fagskolerは、無料で職業教育と実践教育を行う全寮制の学校である。
Free Vocational Schoolである。
対象となる学生の年齢は 16 歳から 19 歳とされている。実際は年齢の設定は無いと聞いたが、それはある程度融通が利くようにされているということだろう。
この対象となる学生達は通常、健康状態が悪かったり、精神的健康上の問題を抱えていたり、またその他の問題で義務教育の修了試験に不合格となっていたり、そしてどのような教育を受けるべきかが明確になっていない若者が所属することができる。
そしてこのFrie Fagskolerはデンマーク国内に14校ある。

デンマーク国内に14校。

学校ごとに特色があり、自分の得意なことを見つけることができる受け皿となっている。
文字通り職業学校であり、住み込みで職人見習いを育成しつつ、さらに最低限の義務教育:デンマーク語と数学を学ぶ機会を得ることができる場となっている。

専門教育の種類としては主に5種類。そして→は目指す職業。

  1. Design and Maker : 絵画、設計、彫刻、文化史 → 服飾デザイン、工業デザインなど

  2. Care :社会保険・子供や高齢者のケア → ソーシャル・アンド・ヘルス・アシスタント、教育アシスタントなど

  3. Game Design : ゲームデザイン・プログラミング → ゲーム開発、プログラミングなど

  4. Gastronomi& Event : 食・料理・イベント → 料理人、料理プロデューサーなど

  5. Handcraft: 手工芸・木材加工・金属加工 → 大工、溶接工など

その他にも美容師や馬術、サイバーセキュリティに関することを学べる学校もあったりします。

学校ごとに学べる分野が違っているが、そこは寄宿学校。
通う前提ではないため学校ごとに特色・専門を全面に出すことができる。人が学校に移動して学ぶ。

一方で学校ごとに専門は違うが、Frie Fagskolerとして統一した価値観や行動規範である『10 Dogmer』を持っている。

10 Dogmerとは

Frie Fagskolerは学校の運営と職業教育のための10の教義を持っており、教師のベンチマークとしている。

以下一部の意訳・抜粋です。

1.Real-life education 実生活を学ぶ
私たちは、生徒のモチベーションを高め、抽象的で、実際に応用できる文脈からかけ離れた理論の学習を促進する教育を行う。教師は意味のある課題を生徒に与えることによって道を切り開き、正当性と信頼を得る。

2.Out of the house 学校の枠を超える
学習プロセスは生徒が周囲のコミュニティやコミュニティとよりよく交流できるように、学校自体の枠組みを超えて企業、団体、機関、小中学校などに広げ連携する。

3.Into the house 学校に組み込む
学習プロセスは、理論と実践が現実社会にどれだけ影響を与えられるかについて、学校独自の枠組みとして常に外部から取り込む必要がある。

例えば、熟練したパティシエを招いて、ガストロノミー&イベントのマスタークラスを開催したり、さらに重要な要素・課題は、ワークショップの品質、装飾、生産ツール、材料などが学習の質を高めるために重要な要素となる。

4. Put the body into play 体を鍛える
脳の研究によると、知識を身につけるには学生の積極的な参加が必要である。

実践的・身体的な経験を通して、すべての学習の基本である実践能力が発達する。人間は前反射的な動物です。文字を書いたり、釘を打ったりすることを学ぶ必要があるときは、書いたり打ち抜いたりすることを実際に行うことが最善である。私たちが何か行動することで学習が始まる。

5. Create products 製品の作成
製品を作ることは、学生にとってやる気を起こさせる。
それは他の人に渡すことができ、生徒はその人となりではなく、渡した自分の製品のみで評価される。

例えばリサイクル素材で作られた発電システム、おいしい健康的な食事、老人ホームの入居者とのビンゴゲームイベント、衣服、幼稚園のカーニバルイベント、コンピューターゲーム、ランプなど、常に製品/サービスという形にしなければならない。

6.Do something for someone 誰かのために何かをする
他の人にも価値を提供する製品を作ることはプロの誇りとなる。職業人としての誇りは、常にFrie Fagskolerでの学習とモチベーションの一部となる必要がある。

7. Interdisciplinary projects 学際的プロジェクト
Frie Fagskolerでは、手と精神は対立するものではなく、アイデアは経験とリンクしているため、具体的な製品の製造にはさらなる学習と経験を実物化が必要となる。例えば田畑に水を引くための灌漑システムを備えたレイズドベッド(かさ上げ花壇)を構築するには、数学、幾何学、大工仕事、鍛冶、配管のスキルを持っていることが目的を達成をするために必要になる。

8. Communities of practice 共に実践する
特定のタスクで協力するときに、お互いに教えあい、継続的に協力することを求める。
個々の学生はコミュニティの維持や成長に不可欠な役割を担っていることを経験する。コミュニティは、自己反省のしすぎを解消してくれる。

コミュニティでは、生徒は他の生徒と「いじくり回す」ことができ、原付を作ったり、古いドレスをガラスタイルにアップサイクルしたり、誰かの髪を青く染めたりすることができます。生徒は教師がいなくてもお互いから学び合える。

9. Involve business ビジネスを巻き込む
日常的な経験は、知識と社会的実践の両方、労働市場での経験、そして特にインターンシップ終了後の見習いにつながる。

10.Do-to-do tests 
1年間の実務とフェローシップの後、筆記試験と個別の口頭試問だけで評価されるのは意味がない。そのためワークショップでは実践的でビジネス指向のテストを実施し、学生は学生自身が具体的で意味のあることに結果を出す必要がある。

実践的専門的試験は、学術的評価と試験の成績の出発点として、理論的な形式の知識という一般的な認識・試験とは一線を画すものである。

Frie Fagskolerに行ってみよう

さて実際のFrie Fagskolerに行ってみました。
と言ってもお見せできるのは外観など一部。

正面に見える建物が学校
学校の応接室兼談話室

学校自体は相当広く全部見ることはとてもできませんでした。
しかしながら、どういった形で教育が行われるか、普段の生活はどういうスケジュールで進むかなど口頭で説明いただき、非常にフレンドリーなワークショップでした。

あと景色がとても良い。
デンマークは雨のほうが多い国なので、今後は曇りばかりだと思いますがそれでもこういう景色が見られるとワクワクしますね。

学校の周りは麦畑。街灯なんて無い。
その者青き衣をまといて金色の…

その他、寄宿舎も見ましたが2人で使うシェアルームが基本とのことでした。

また食堂があったり学習室があるなど、日本のビジネスホテルチェーンのようにきれい、ということは全くありませんでしたが生活するには不自由はなさそうでした。
(娯楽は全くありませんでしたが、みんなで色々考えるのでしょう。デンマークの人はクイズやパズルが好きなので)

まとめ:Frie Fagskolerとその選択

デンマークのFrie Fagskoler:無料職業学校は主に中学生レベルの初等教育が終わったあるいは初等教育が完了していない人向けに開かれた学校です。
当然、社会で仕事に就くためのデンマーク語や数学などの基礎能力を身につける必要がありますし、その教育を改めて提供してくれる・学ぶ機会を得ることが可能となっています。

印象としては、子供として面倒を見るが、大人と同じ精神レベルで接しますよと言うのが学校としての方針に感じました。
また、実践に力を入れており、最低でも教育の3分の1以上は実践・体を動かすものであることという方針も掲げており、継続して学ぶ、継続してステップアップし続けるための仕組みがそこにはあると感じました。
そこに社会性を少し加えることで生活の糧になる力を身につけされるという点においてはとても意義のあるFrie Fagskoler制度だと思います。

現在の義務教育は、子供自身の飽きやいじめ(子供間や先生に対するものもある)も問題として挙がっています。

行かない選択をしたのではなく、学校教育に「飽き」て行かなくなってしまうことに対しては対策が必要で、より実習・体験出来る機会を増やすこと。そして学校の中の体験だけでは足りない部分は外部から積極的に取り入れる・外の社会にどんどんと関わっていく機会を作ってあげることが必要かもしれません。

その体験を通じて見識が広がれば飽きも軽減し、あるいはいじめの減少にもつながるかもしれません(こちらは精神的な安全確保が影響しているかもしれませんが)。
そういう意味では、Frie Fagskolerの方針は義務教育にも今後反映されていくのかもしれません。

また個人的にはいろいろな人に話しを伺う中で、教育担当大臣はこの方針を打ち出しているとか、〇〇党はこういう教育を指示しているなど。政治の話も多く聞きました。
実質的には政治と教育は切り離せない。ということを身をもってかんじているのでしょうか。
特に無料のFrie Fagskolerであり続けるにはお金が必要になるため政治の力も必要となるはずです。無料を維持するためにかなりの額の補助金が国からFrie Fagskolerに供給されているはずなので。
他にも職業学校は存在しますし、教育機関もある中での補助を受けて無料で提供しているFrie Fagskoler。
そのためFrie Fagskolerを支持している方の中にはその方針を出している人や党に投票するという選択があるようです。

2023年夏あたりの記事をみると、無償化をやめる議論やFrie Fagskolerの閉鎖と言うものもありました。
存在し続けるにも現場の力や制度や世論も必要となります。
その継続の結果が今の規模に繋がっているのだと思います。

一方、果たしてどこまでその人のためになっているのか。やりがいや給与は繋がっているのか。
ただの安い給料の労働者となってはいないか。気になることはたくさんです。
そこまでは分からなかったので知っている方教えてください。
情報自体は間違いや古くなることが多々あります。今後も私の中で更新していこうと思います。

それでは今日も良い一日を。

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