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日本一わかりやすい日本酒入門①   最初に覚えること

はじめに

日本酒は様々な社会情勢やトレンドにより本来とは違うネガティブなイメージにとらわれてきました。
これらは非常に根強く日本酒の本質を知るのにはやっかいな壁になっております。
詳細は「日本酒のイメージをアップデートしよう」を読んでみてください。

その壁を取り除くととっても楽しい日本酒の世界が広がっています。
そんな楽しい日本酒を知っていただけると幸いです。


辛口って何?

日本酒用語でいう「辛口」とは日本酒度のことです。
比重で測ります。水に対して糖分が多いと重いので沈み-(マイナス)表示。
糖分が少ないと軽いので浮き+(プラス)表示されます。

日本酒のラベルに+7とか-10とか書いてある場合もあります。

難しい事はありませんがあまり覚える必要はありません。

なぜなら日本酒の味は日本酒度だけでは決まりません。
アミノ酸やコク、香りなどと日本酒度のバランスで味がきまります。

ですから辛口表示の日本酒を買っても自分のイメージと違う事が多々あります。

また一般的な消費者が使う「辛口」には色々な意味が混在しております。
・ドライで飲んだ時に辛く感じる酒
・スッキリして爽快な酒
・甘ったるくなく飲みやすい酒
・日本酒度が+表示の酒
・フルーティーで口当たりが良い酒
・なんとなくカッコイイから

これら全てが「辛口」という一言に括られております。
さらに現在流通している日本酒の8割ほどが日本酒度でいうところの辛口です。
なので提供する側からすると「辛口ください」と言われると範囲が広すぎて絞り込みつらいのが現状です。

自分好みの日本酒を絞り込む時は日本酒度の表示があっても参考程度にするのがよいでしょう。

日本酒4つのタイプ

では日本酒を選ぶ時に何を基準にすれば良いのか?

利き酒師の団体 日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)では
以下の4つの分類を推奨しています。

薫酒 香りの華やかなフルーティータイプ。
   獺祭や十四代など人気銘柄はほぼこのタイプです。

爽酒 スッキリ辛口タイプ。
   いわゆる端麗辛口の酒。久保田や上善如水など新潟の地酒に多い。

醇酒 コクがあるタイプ。
   米の旨味があり燗でも冷酒でも楽しめる万能タイプが多い。

熟酒 熟成酒。寝かせることで旨味やコクを引き出したタイプ。
   冷酒よりも燗のほうが真価を出すことが多い。

酒屋でも居酒屋でも知識のある店員さんでしたらこの4つのタイプは知っていますので自分好みのタイプを伝えればオススメしてもらえると思います。

日本酒はワインに例えると理解が進む

良い酒とは?


ここでひとつ知っていただきたいことがあります。

4つのタイプを紹介するとほとんどの方が”爽酒””薫酒”を選びます。
それ自体は決して悪いことではありません。味の好みは人それぞれです。

”爽酒””薫酒”は良い日本酒
”醇酒””熟酒”が悪い酒

という認識は間違っています。
醇酒や熟酒にネガティブなイメージがあったり
今まで美味しい醇酒や熟酒に出会った経験がない方もいるかもしれません。

醇酒や熟酒の楽しみ方を知ると日本酒は今までの3倍楽しめます。
ぜひネガティブなイメージを払拭してチャレンジしていただければ幸いです。

4つのタイプをワインに例えてみよう

先ほどの4つのタイプをタイプをワインに例えてみます。

薫酒=白ワイン甘口
爽酒=白ワイン辛口
醇酒=赤ワインライトボディ
熟酒=赤ワインフルボディ

このように考えてみると醇酒や熟酒が悪い酒というイメージは吹っ飛ぶと思いますし、むしろチャレンジしたくなりませんか?

さらにワインの感覚で言えば、居酒屋などでずっと薫酒や爽酒を飲み続けるのはずっと白ワインを飲み続けるようなものです。

料理に合わせて肉料理には醇酒や熟酒を飲んでみると日本酒の楽しみ方はずっと広がります。

そして温度を変えて燗を楽しむとさらに日本酒の楽しみ方が広がります。

ほら日本酒の楽しみ方が3倍になったでしょ。

燗はおいしくない?

「赤ワインは常温のほうが良い」なんて言われていますが、醇酒や熟酒も常温や燗が合うタイプです。

今では忘れられていますが日本酒は本来”燗”にして飲むのが常識でした。
昭和の中頃までは燗が当たり前で常温で飲むことを”冷や”と呼んでいました。
冷蔵庫で冷やした”冷酒”が主流になったのは平成以降です。

燗酒にたいしてもネガティブなイメージをもっている方が多く見受けられます。
一昔前の飲食店では冷酒は豊富でも熱燗は一つしかなく選べない店がほとんどでした。そしてその熱燗は安いパック酒というパターンです。

これでは消費者が「熱燗が旨い」という経験が少ないのも仕方ありません。
次第に「熱燗はおいしくない」「冷酒のほうが旨い」となっていったと思います。

醇酒や熟酒と合わせて燗もチャレンジしていただけると嬉しいです。

燗に合う日本酒とは?

「こんな良い酒を燗にするのもったいない」というセリフをたまに耳にしますが、これも前項で述べた理由で根付いた誤解です。

基本的に日本酒はすべて燗にしてもOKです。
なぜならもともと燗にするのが当たり前の飲み物だったからです。

と言ってもやはり合う合わないという部分もあります。
ではどの酒が合うのか?
焦らずまずイメージを共有しましょう。

日本酒を野菜に例えると?

今度は野菜に例えると理解しやすいです。

レタスやきゅうりはサラダなど生で食べるとおいしく、あまり加熱しては食べません。

トマトはサラダでもおいしく、ピザやトマトソースなど加熱してもまた違ったおいしさがあります。

かぼちゃやジャガイモは生ではあまり食べません。でもかぼちゃの煮つけやじゃがバターなどはおいしいですね。

日本酒も同じできゅうりタイプの日本酒、トマトタイプの日本酒、じゃがいもタイプの日本酒とあります。

一概には言えませんが大雑把な括りでいうと
フルーティーな薫酒はきゅうりタイプが多い。サラダのように冷やして飲むのが良い可能性が高い。

スッキリ辛口な爽酒とコクのある醇酒はトマトタイプが多い。
冷やしても良し、温めてもまた違った旨さに出会えるかもしれない。

熟成酒である熟酒はじゃがいもタイプが多い。
温めてこそ真価を発揮し冷たいと逆に美味しくない場合がある。

勘の良い人はもうお気づきですよね。
燗の選択肢を捨て、日本酒は冷やして飲むという常識に囚われているうちに
じゃがいもタイプの日本酒を冷やして飲んでいたのではないでしょうか?

そうすると必然的にじゃがいもを生でかじって「あまり美味しくない」と言っているようなものです。
これはじゃがバターの美味しさを知らずに、肉じゃがやコロッケやポテトフライの美味しさも知らずに「じゃがいもって美味しくないんだ」と敬遠してきたということです。

わかっていただけましたか?

もったいなくないですか?

わたしは多くの人にじゃがいもの美味しさを知ってほしくて日々活動しています。

すいません。熱くなってしまいました。
じゃがいもではなく、じゃがいもタイプの日本酒の美味しさも知って欲しくて活動しています。でした。

最後に補足として燗に合う合わないの目安を書きます。
ざっくりとした括りなのであくまで参考程度に覚えてください。

・燗に合う
生酛、山廃タイプ
爽酒、醇酒、熟酒
純米酒、ひやおろし

・燗に不向き
生酒、新酒
薫酒
甘いにごり酒

まとめ

・「辛口」では自分好みの日本酒を選べない

・日本酒は4つのタイプにわけられる

・日本酒をワインに例えると理解が進む

・日本酒を野菜に例えるともっと楽しくなる。

・燗を選択肢から外すのはもったいない

・赤ワインのような日本酒、じゃがいものような日本酒を知ると日本酒は
 3倍楽しくなる。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも日本酒に興味が出たならうれしい限りです。
執筆の励みになりますのでリアクションいただけると幸いです。

みなさまの生活が少しでも楽しくなりますように。

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