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日本酒のイメージをアップデートしよう

はじめに

日本酒についてどのようなイメージをお持ちですか?
”悪酔いする” ”難しそう” ”オジサン” ”高い”
なんとなく取っ付きにくくわかりにくいイメージがある方が多いと思います。

また日本酒をよく飲むという方には”辛口が旨い” ”フルーティーで飲みやすい日本酒が良い酒”という感覚があります。
好みは人それぞれです。でもそれ以外の美味しい日本酒を知って欲しいというのもあります。

これらは昭和からの時代背景に影響された部分が大きいです。
今回はその背景を解説していきたいと思います。


誤解されている日本酒

「日本酒は悪酔いする」と一般的には思われていますが、ちゃんとした日本酒を飲めば他の酒と変わりません。
もちろんビールなどに比べればアルコール度数が高めなので飲みすぎれば別です。

ではなぜそう思われているのか?

理由は大きく3つ。

①昭和時代に劣悪な品質の日本酒が出回っていたため。

戦中戦後は日本酒の材料である米は貴重品のためにアルコールを添加して水で伸ばし調味料で味付けした日本酒が出回っていました。
「三増酒」(元の日本酒を三倍に増量したもの)という言葉があったくらいです。

②居酒屋チェーンの台頭


安さを売りにするチェーン店では置いてある日本酒は普通酒がほとんど。
さらに平成まではチェーン店で飲む時は飲み放題が主流でした。
飲み放題では上質な日本酒には滅多にお目にかかれません。
つまり日本人の多くはちゃんとした美味しい日本酒に触れる機会が乏しかったのです。

③チャンポン


チャンポンとは色々な種類の酒を飲むこと。
一般的には最初から日本酒オンリーという方は少なく、最初はビール、次いでサワー、ハイボールなど、そして焼酎、最後に日本酒という流れがありました。
チェーン店の飲み放題などで散々飲んだ後に日本酒を飲めば悪酔いもします。
もちろん個人的な体質やお酒との相性もあると思いますが、日本酒は不利な場面での登場が多い気がします。

昭和の日本酒トレンド

先にも触れましたが、戦中戦後は劣悪な日本酒が出回っていました。
”三増酒”
日本酒を水で増やしアルコール度数が下がるので醸造アルコールを足す。
すると日本酒の味がしなくなるので調味料で味付けをする。
もう日本酒ではないですよね。
ただ時代背景としては致し方ないのかもしれません。

このような日本酒は甘くベタベタした味がしたそうです。

当然、味はあまりよろしくないので日本酒離れが徐々におきます。

日本酒の売り上げが減っていくのに危機感を覚えた各酒造がちゃんとした日本酒を造り始めます。
ここでいわゆる「地酒ブーム」が起きます。
特に新潟の”端麗辛口”は人気になりました。
新潟以外の日本酒もちゃんと造った物は前記の三増酒に比べれば変な甘さもないため美味しいと喜ばれました。

辛口神話

上記の経験から「辛口神話」が始まります。
細かい事はわからないけど、甘い日本酒はダメ。辛口が良い酒だと。

この辛口神話は今現在でも色濃く残っています。

私は飲食店を経営していますが、お客様にどのような日本酒が好みかと聞くと「辛口」と答える方がほとんどです。
なんとなく辛口が良い酒だと今でも語り継がれているのでしょう。

ですが作り手の酒造の方も心得ていて市場に出回る8割以上が辛口の日本酒になっています。

令和の現在では「辛口」というキーワードだけでは日本酒選びが難しい状況になってしまいました。

「辛口」とは日本酒用語でいえば日本酒度です。+や-で表示されます。
辛口の日本酒は+で表示されます。
ところが、+表示の辛口日本酒でもフルーティーな香りなどで甘く感じる人もいます。
この辺は長くなるのでまた別の機会に紹介します。

また日本酒の味の表現が辛口甘口しか知られていないという現状もあります。
・ドライで飲んだ時に辛く感じる酒
・スッキリして爽快な酒
・甘ったるくなく飲みやすい酒
・日本酒度が+表示の酒
・フルーティーで口当たりが良い酒
・なんとなくカッコイイから

これら全てが「辛口」という一言で括られています。
日本酒を提供する側としては悩ましい問題でもあります。

このように昭和においては「辛口」が良いとされていました。
これはあくまでも辛口なら良いと思われていたということです。
実際は劣悪な酒は別として甘口でも旨い酒はありますし、辛口でもいただけない酒がありました。

平成の日本酒トレンド

平成は日本酒史においても大きな転換期を迎えます。

平成2年に酒税法において特定名称が定められます。

なんだか難しそうですが、ようするに呼び名や分類が変わったのです。

特定名称

それまでは”特級酒“ ”一級酒” ”二級酒”などの分類が法律で定められていました。
細かいスペックの規定はなくざっくりとした表現をすれば、判定する審査官の独断で決められていました。

また製造方法や技術の進化により様々なバリエーションが増えてきたにも関わらず3つの分類しかなくわかりにくい状態になっていました。
ようするに”一級酒”の中に純米酒も大吟醸もあるみたいな感じです。

そこで日本酒の分類を時代に合わせて変革したのが”特定名称”です。

純米酒や大吟醸など製法や加工の仕方で分類するようになりました。
細かい内容は長くなるのでまたの機会にします。

吟醸酒ブーム

特定名称によりフルーティーで飲みやすい吟醸酒が注目されるようになり
吟醸酒ブームがおこります。
各酒造もどんどん吟醸酒を造るようになります。

吟醸酒は冷蔵庫で冷やされたいわゆる”冷酒”の状態が一番おいしく、日本酒は冷酒が主流になっていきます。
ちなみに日本酒は昭和の中頃までは熱燗が主流でした。燗でのむのが当たり前で常温で飲むことを”冷や”と呼んでいました。冷酒が主流になったのは平成以降です。

これらのことから平成では「フルーティーで飲みやすい」が良い酒。それ以外は「昔の酒みたいでよろしくない」と思われるようになっていきました。
重ねて言いますがフルーティー以外の酒がけっして不味いわけではなくそう思われるようになってしまったということです。

では令和のトレンドは?と思ったかたもいると思いますが
それもまたの機会にまとめたいと思います。

まとめ

・日本酒のネガティブなイメージは誤解が多い。
・昭和は辛口が流行った。
・平成は吟醸酒が流行った。
・辛口=旨い酒 フルーティー=旨い酒 
 などの認識は令和ではあまり意味がない。
・令和のトレンドはまたの機会に。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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