見出し画像

温泉紀行(日本屈指の足元湧出泉:奥津温泉 奥津荘)

温泉には鮮度というものがあり、酸素に触れてしまうと酸化が進み有効な温泉成分が多かれ少なかれ変質・劣化してしまうのだそうだ。

循環式の温泉ではそもそも鮮度は求めれないのだが、源泉掛け流しの温泉についても汲み上げたり浴槽まで湯をひっぱる過程で多少なりとも酸化の影響を受けると言われている。

しかし、こうした酸化の影響をほぼ受けない貴重な温泉もある。それは湯が浴槽の底から自然噴出するような温泉だ。

日本には35,000軒余りの温泉施設があるそうなのだが、こうした温泉施設は全国に僅か30軒ほどしかないのだそうだ。

今回はそんな貴重な温泉を体験するために、岡山県奥津温泉にある奥津荘に行ってみることにした。

奥津温泉までは岡山駅からJR津山線で津山駅まで向かい、そこからバスを乗り継いで向かうことにした。

お昼に食べた津山B級グルメのホルモンうどん

津山駅から乗り換えなしで奥津温泉まで行くバスもあるのだが、平日は1日4便、休日ともなるとわずか2便しかなく本数がとても少ない。こんごバスというコミュニティバスを利用すればバスを乗り継ぐ必要は出てくるが、ある程度時間に融通を持って向かうことができるので今回はこれを利用することにした。

国の有形文化財に登録されている奥津荘の建物

奥津荘に到着すると雰囲気の良い1階のラウンジで抹茶と和菓子のおもてなしを受けながらチェックインを済ます。

私が訪問した時は部屋に空きがあったらしく、1ランク上の部屋に同額で変わることもできるとのことだったのでせっかくなので変えてもらうことにした。

奥津荘には男女入れ替え制の「鍵湯」と「立湯」、24時間いつでも利用できる貸切風呂がある。「鍵湯」というのは江戸初期津山藩主森忠政が鍵をかけて一般の入浴をかたく禁じていたという記録に由来している。「立湯」の方は名称通り立ったまま入れるほどの深さを持つ浴槽となっている。

私が行った時間帯は鍵湯の方が割り当てられていたのでまずはそちらを堪能することにした。シャワーで一通りからだを洗い終えると足元噴出の浴槽に足を入れる。

湯温は体感41度ぐらいだろうか。過不足のない最高に良い温度だ。

泉質はpH9.1のアルカリ性単純温泉だ。pHが高いのでヌルヌルした質感を想像していたのだが、予想に反してサラサラとした絹のような質感の湯だった。後日調べてみたのだがどうやら単純にpHが高ければヌルヌルするというものでもないらしい。温泉は奥が深い。

浴室には私以外ほかに客もいなかったので湯が噴出している箇所を探してみることにした。自然の川底を利用した浴槽らしく足元がかなりでこぼこしているので注意しながら探してみると、ぷくぷくと細かな泡が出ている箇所があるではないか。手をかざしてみると湯の噴出を感じることができた。思わず、おぉと声が漏れる。

100%中の100%…

私の中の戸愚呂(弟)も納得の鮮度だ。

その後は湯が噴出している横の特等席でしっかり独泉を堪能した。

温泉後に部屋のマッサージチェアでくつろいでいるとあっという間に夕食の時間だ。

通常は宿泊人数がひとりだと夕食は旬の会席コースとなるのだが、予約時に希望を伝えることで別のコースに変更することも相談可能だ。一人旅だとこうした融通を聞いてくれる宿は本当にありがたい。

そんなわけで今回私は冬の期間限定のぼたん鍋のコースに変更してもらった。

コースメインのボタン鍋

ちゃんと猪肉を食べたのはこれが多分初めてだったと思うのだが、豚肉に比べて旨味が強く想像していた以上に美味しかったことにびっくりした。もちろん臭みは一切なくとても柔らかい肉質だった。ピリ辛味噌味のスープが猪肉にベストマッチで〆のうどんもペロリと平らげてしまった。

翌日早朝、まだ行っていない立湯に入ってみることにした。立ったまま湯船に浸かる体験もなかなかないのではないだろうか。浴槽は座れる深さになっているスペースもあり、立ったり座ったり交互に満喫することができた。この日もありがたいことに独泉して入浴することができた。

今回の旅行は幸運にも足下噴出の温泉を独泉するという貴重な体験をすることができた。お世話になった奥津荘は温泉良し、料理良し、サービス良しでまた再訪したいと思える名旅館だった。

さて、次はどんな温泉に行くとしようか。

おしまい。

この記事が参加している募集

#ご当地グルメ

15,975件

#至福の温泉

4,581件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?