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おいしい食べ物、たのしい食べ方

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おいしく食べてやろう。 たのしんでやろうと思うと、いつもの料理、いつものお店も違ってみえる。 飲食店を嫌いになるのはもったいない。
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2019年5月の記事一覧

引くに引けないオゴチソウ

足し算して出来上がる料理は多い。 他の店よりおいしく、他の店より贅沢にと足していくことを差別化とする調理人が案外おおい。 そんな中にあって「これ以上引いてしまうことができない」ほどにシンプルで潔い料理を作り続ける店もある。 例えば「牡蠣あえそば」という料理があって、ほぼ麺と牡蠣油にネギだけ。 具材らしい具は見当たらず、最初見たときには何か忘れ物をしてしまっているんじゃないかと心配にすらなるほどだった。 作っているのは嘉賓という店。 広東料理の気軽な店で、スタッフ間の共通

関西の喫茶店文化をイノダコーヒに学ぶ

東京駅の八重洲口側にある大丸百貨店。 関西の老舗百貨店ということもあってでしょう…、関西に本店をおく飲食店がいくつか揃う。 中でもよくぞいらっしゃいましたといいたくなるのが「イノダコーヒ」。 コーヒー好きさんが多い京都を代表する喫茶店です。 百貨店の中にありつつ優雅な空気がただよう空間。 赤いビロードのカーテンに同じ赤色の張り地の椅子。マホガニーのテーブルに天井から下がったオレンジ色の照明。豪奢な感じのインテリアが優雅な舞台。 その舞台の上を背筋をのばしてゆったり、サービスを

One & One

かつて日本において珍しかったエスプレッソ。 今ではエスプレッソ専門店が随所にできた。 普通のレストランでも、あるいは家でもエスプレッソを気軽にたのしむことができるようにもなってきた。 エスプレッソがあればよかった時代が、エスプレッソがおいしくなくてはいけない時代を経由して、エスプレッソをたのしませる工夫がなければならない時代がやってきた。 それが今の日本じゃないかと思うのです。 例えばこんな楽しませ方。 「One and One」って名前の商品。 エスプレッソのシングルシ

あんこを食べるかき氷

かき氷の季節になりました。 かき氷にはいろんなスタイルがある。 氷を食べるかき氷。 シロップにこだわりをもったかき氷があるかと思えば、アイスクリームやフルーツをおいしく食べるためのかき氷なんていうのもある。 当然、食感も多彩で、シャリシャリからサラサラ、あるいはクリーミーでなめらかなものもある。 ひと言でかき氷と言えない多彩さ。 それがかき氷の魅力的でいとおしいところ。 あんこを食べるかき氷…、なんていうのもあったりします。 和菓子の虎屋がやってる新しいスタイルの和菓子

鴨南蛮

苦手だったのに好きになってしまうモノ…。 歳をとるとかつて苦手だったものが食べられるようになることがある。 あぁ、今まで何で苦手にしていたんだろう…、と後悔することもあるけれど、まだまだこれから新たな味覚に出会うチャンスがあるかもしれないと思うと、歳をとることにワクワクできる。 例えば「鴨」がそういう食材。 ずっと鴨は得意じゃなかった。 しかもフランス料理の鴨のローストとフォアグラは好きだったのに、鴨鍋だとか鴨焼きだとか日本料理としての鴨はなぜだか苦手。 気の利いたそば屋なん

オムライス

オムライス。 さまざまなスタイルのものがあります。 大きく分けると、薄く焼いた卵焼きでご飯を包むスタイルと、焼いたご飯の上にオムレツをのせて作るスタイル。 後者はあくまで「オムレツライス」であって、ボクにとってのオムライスは前者の卵焼きでくるんで仕上げるものを言う。 そう言えばうちがオムライスの元祖を名乗るお店がいくつかあるけれど、中でも異色なのが銀座にある煉瓦亭のそれで、溶いた玉子に味付けたご飯をいれてそれそのものをオムレツ状に仕上げるというモノ。 主流2つのどれにも属さ

味噌煮込みうどん

硬いうどんと味噌煮込みうどんいつのまにか讃岐うどんがうどんの代名詞のようになっちゃったけど、日本全国にご当地うどんと呼ばれるうどんがたくさんある。 福岡にはやわいので有名なうどんがあるし、宮崎県には釜揚げうどん。稲庭うどんも有名だし、大阪のきつねうどんも忘れることができないうどん。 名古屋には「味噌煮込みうどん」という独特のうどんの文化が昔からある。 茹でたうどんを鍋で煮込んで仕上げる鍋焼きうどんは日本全国のうどん屋さんの冬のメニューとして重宝される。 名古屋の煮込みうど

タリーズと泡盛

タリーズ。 昔はスターバックスがまだない場所をタリーズが埋める…、というような関係性があって住み分け、使い分けができていた。 今ではスタバはどこにでもある。 店舗数にすればタリーズの倍近くあって、利便性という観点からタリーズを選ばなきゃいけない理由は希薄になった。 選んでもらえるようにと料理に力を入れてる。 サンドイッチにサラダ、パスタまである。ボールパークドッグは中でも胚芽の香りが独特で歯ごたえのあるパンがおいしいうえに、ソーセージもバキンと肉肉しくてたくましい。 噛むとジ

飲む泡、食べる泡

オキニイリのポールバセットでオキニイリのフラットホワイト。 地下ながら大きなガラスの天井を通して外の光がやさしい影を作ってくれる。見上げる超高層ビルの景色も独特。 いい店です。好きな店。 コストのことばかり考えておざなりに作られた店と違って、時間が経てば経つほど熟して味わいのある空間になる。 最近、こういう店が少なくなった…、しんみりします。 エスプレッソとミルクの割合。 ミルクの状態でいろんな飲み物が出来上がる。 エスプレッソ2割、スティームミルク8割でカフェラテ。スター

マイナス196℃のトマト

分子料理という1990年代の初頭にはじまった新しい料理のあり方。 分子レベルに働きかけることで、意外な料理が出来上がるという試みで新しい味の発見がある…、というので意欲的で新しもの好きのレストランで取り入れる店が多くある。 ただ新しい調理法で作られた料理は往々にして「難解で大げさな料理」になってしまうことがほとんどで、食べてみたいけど面倒くさい料理のように感じたりもする、ちょっと残念なムーブメントだったりする。 ところが先日。 熊本に来てクラフトビールのお店で分子料理のひと

おむすび

おむすびって不思議な料理です。 簡単に作ろうと思えばいくらだって簡単になる。 残ったご飯にラップをかけて電子レンジでチンして、鰹節と醤油をたらして混ぜむすぶ。 3分かからずできる。 家の中にあるありあわせのモノで作れる、イタリア料理でいえばペペロンチーノアリオリオのような料理。 なのにその専門店も成り立つ。 繁盛しつづけることができるという料理でもある。 最近、オキニイリの「リッツボン」。 新宿二丁目のおむすび専門店で、もともとスナックだった場所。 大々的な厨房設備を必要

仙台の牛たんを東京で食べる贅沢…

仙台の牛たん。 昔は仙台にいかなくちゃ食べることができないゴチソウでした。 ボクの学生時代には東京にもぽつぽつ、仙台牛たんを売り物にした店ができたけど、やっぱり仙台で食べる牛たんは格別で、食べたいなぁ…、と思うと新幹線に乗って仙台詣でをしていたものです。 最近では、その仙台から東京に店を出す店が増えて気軽に食べられる。 例えば利久。 東京駅の地下コンコースに面して一軒。 小さな小さな店を出してて、朝から夜まで通し営業。 何しろランチ以降はずっと行列ができて消えない人気の店で

皮を剥いた裸のきゅうり

今朝の朝食。ホテルのバフェ。 日本料理が充実している、料理一つ一つが丁寧に整えられているよきバフェで、中でも感心したのがきゅうり。 緑の皮をキレイに剥いて、表面も断面もすべて同じ色をしている。 色が同じということは、食感も同じということで、皮がついたきゅうりは噛むとコリッと皮がまず歯切れる。 パキッと割れて、そこからシャクシャク歯切れていく。 歯切れながらもずっと皮の固いところがザクザクザクザク騒々しくて、その騒々しさこそが生のきゅうりの特徴でもあり、おいしいところ。 け

隣の国の中国料理、似ていて違ってでも似てる

隣の国、韓国。 日本にとって近いようで遠く、遠いようで近い。 似ているようでいて違っていて、まるで違っているようでいて根っこの部分が一緒だったりする不思議な関係。 料理の世界もそうで、例えば中国料理。 日本人好みのそれと似ているようで、まるで違った韓国式の中国料理の世界がある。 歌舞伎町に北京という店があって、中国料理の店なのだけど一風変わった中国料理のお店でずっと韓国系の人がやってた。 ここ10年は中国河南地方出身の家族でやってるらしいのだけど、韓国人好みの中国料理が揃