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オムライス

オムライス。
さまざまなスタイルのものがあります。
大きく分けると、薄く焼いた卵焼きでご飯を包むスタイルと、焼いたご飯の上にオムレツをのせて作るスタイル。
後者はあくまで「オムレツライス」であって、ボクにとってのオムライスは前者の卵焼きでくるんで仕上げるものを言う。

そう言えばうちがオムライスの元祖を名乗るお店がいくつかあるけれど、中でも異色なのが銀座にある煉瓦亭のそれで、溶いた玉子に味付けたご飯をいれてそれそのものをオムレツ状に仕上げるというモノ。
主流2つのどれにも属さぬ不思議な料理。
独特です。

玉子でくるんで作るオムライスも、玉子の状態やご飯の味の付け方、それからソースの種類とバリエーションは豊富で多彩。
お店、お店で微妙に違いがあるのも当然。
だから自分の好みのオムライスを見つけるたのしみがあるのがうれしい。
ちなみにボクにとってほぼ完璧なオムライスを作ってくれるのが上野にある「キッチンさくらい」というお店。

御徒町の駅前にあるビルの最上階にある洋食店。
南側に向いた壁一面が大きな窓で外は明るい。奥へ奥へと影がしのんでやってきて気持ち落ち着く。心地よい。
心地よいのはサービスもそう。
お客様の気配を感じて先回りしてサービスをする。見守られているって感じがステキ。
いいお店。

さてオムライス。
焼けた玉子でふんわり巻いたスタイルです。
この卵焼きが独特で、玉子をよくとき空気を含ませふっくら仕上げる。
ここのオムライスがたまらないほど好きで、その理由のほとんどがこの卵焼き。

玉子臭さがないのです。
しかも口の中でフワッととろける。
卵焼きがご飯を包み込んでいるという感覚は口に入れた最初の数秒。たちまちとろけて存在感をなくして焼いたご飯がパラリと散らかっていく。
けれど卵焼きがそこにあったという名残はずっと続いて、たしかにボクの口の中にあるのはおいしいオムライス。
ご飯にたっぷり牛ヒレ肉を刻んでくわえ、マッシュルームと玉ねぎ、そしてフォンドボー。
添えられるのは自家製ケチャップ。
自然なトマトの甘みと酸味、そして風味がそのまま残ったふっくらとした仕上がりで、ふっくら卵と手に手をとって焼いたご飯をおいしくさせる。
もう運命の味というほかないオキニイリ。

他の洋食メニューも確かな技術と丁寧の仕事でおいしい。
例えばハンバーグとメンチカツの盛り合わせ。
牛肉多めの合いびき肉。
しっかり焼かれてナイフを当てると確かな手応え。ザクッと切ると肉が肉汁蓄えたまま。口に運んで噛むとはじめてジュワッと肉汁。旨味が広がる。
ナツメグとブラックペパーの香りが肉の風味を引き立て軽い酸味のデミグラスソースが味を整えていく。
メンチカツはパン粉衣がサクサクで、味わい軽やか。
粗微塵の玉ねぎがたっぷり入って肉の食感みずみずしくてハンバーグに比べて若干やわらかい。
マッシュポテトはなめらかで、バターの香りが味わい贅沢にしてくれる。

驚くべきが豚の生姜焼きのような、ぼんやりしていると雑な料理になりがちなものまでエレガントで丁寧な料理に仕上げる入念さ。
肉を蜂蜜に漬け込んで、タレとからめて焼き上げる。
すりおろした生姜と玉ねぎがたっぷりはいった醤油ダレ。焦げた香りと軽い酸味がなんとも旨い。
蜂蜜効果でしょう…、肉はしっとりふっかり。
ほどよき厚さで噛みごたえがあり、味がしっかりついているのに豚肉自体の持ち味、風味が邪魔されてない。
生姜焼き世界の最高峰って思えるほどのおいしい仕上がり。
感心します。

それにしても上野という町には個性的でよき洋食店が数多い。
おそらく上野という街が東京の中でもおしゃれでグルメな街としてにぎわっていた時代のゴチソウが洋食だったからなのでしょう。
同じような理由で天ぷらや蕎麦のお店も数多く、そういう意味で浅草は上野の兄弟みたいな街でもあったりします。オモシロイかな食の歴史と街歴史。


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