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霧島はるか
2024年4月2日 01:00
「あなたへの好きをとっておくことなんて、できないから」涙香(るいか)はそういって、寂しそうに笑った。鼻をつく春の風は、甘ったるくて切なくて。桜流しで湿ったアスファルト。遠くから聞こえる、電車の音。逃げ出したいと切に願っていたこの町が、今日はなんだか少しだけ、愛おしく感じた。「私が好きなもの先に食べるタイプだって、糸雨(しう)は知ってるでしょ?」地面を弄ぶ、涙香の白茶けたコンバース