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想起の現象学 登阪(2019)

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第7章 未来

第7章 未来

現在でない時間に実存することはできない。それ故に現在でない時間を用いて事象を語るとき、存在に関する何らかの要素が捨象(破壊)される。
そしてその破壊の対象は、私たちがそれを想起という形で現象するとき、私たちによって恣意的に選択することができる。
なぜなら、時間による破壊「そのもの」という世界における確定的な事象は存在しないためである。これは私たちの(現象学的な)現象の話であり、そこで重要なのは外界

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第6章 祈り

第6章 祈り

今年自分が紡いだ言葉で、好きなものをいくつか拾いました。
想起の現象学者として彼らを提示します。あえて語ることはしないので、その編み目からこちら側を覗いてください。

午前のうごき (詩)凛々と鳴る山脈大の水車
人民を駆る毛沢東2兆人
花から咲く花から咲く花
辛さ隈なく空さ苦は無く
透き通った紫の月は新月
黄色い街に眼球びっしり
融けてイく僕のからだは
融けてイく僕のこころは
世界とひとつになるる

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第3章 到達不可能なものへの投企

第3章 到達不可能なものへの投企

・私とは恣意的なもの、とはどういうことか
私とそれ以外を区別しないことができます。梵我一如、あるいは汎神論など。私という視点にたまたま立っているために忘れがちですが、客観的な視点で世界について考えれば、私とそれ以外を区別するものは特にありません。「私目線だから私」というトートロジー以上のことを日常的な文脈では語れません。私を特別な存在とするには、なんらかの特別な概念を導入する必要があります。その代

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第2章 語り得ぬものを照らすヒカリ

第2章 語り得ぬものを照らすヒカリ

本論では現代思想における「語られるもの」と「語り得ぬもの」の扱いを概観する。
語られるものとは、古代ギリシャにおいて「理性」と呼ばれたものの射程であり、知的に操作可能なあらゆる論理的関係の集合である(厳密な定義ではない。)ストイックの語源となったストア派においては、私が理性を用いて考える、その内容そのものが私自身であり、私の富や名声はその所有物に過ぎないため、考えることの充実のみが追求されるべきだ

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第1章 想起の現象学

第1章 想起の現象学

概要21世紀の哲学における潮流として、思弁的実在論運動がある。人間中心的な相関主義を斥けることで実在を語るこれらの議論は、フィクション世界の実在性を示すことが可能である。しかし、その実在性は思弁的であるがゆえに、人間の実存との関わりにおいては効力を持たない。実際に私たちは日常において、ドラゴンが現実に存在するとは考えない。本論は、過去の記憶が現在という時点において現象するあり方を詳細に検討すること

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