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#6 波長と友情

こんにちは。sacaikumiです。

この「考える」マガジンは、私が関心を持ったトピックを幅広いテーマで自由に書いていく予定で作りました。今回は、私の友人のひとりについてお話ししたいと思います。

まず、私は昔から人との縁にとても恵まれています。

知り合いの人数が多いとか、クラスで人気者だったという類のものではなくて、尊敬出来る魅力を持った素敵な人と仲良くなる機会が多くて、色んなモチベーションや自分自身を成長させたいと思える機会を頂けているところにあります。むしろ、人数でいうと私は多くの友達は求めていません。

それから、私は昔から人間関係の根本的な考え方が冷淡だと思います。

他人に対する熱量の強い方はひとつの出来事に対して期待値が大きくなりやすく、その分喜んだり悲しんだり怒ったり感情の波も大きくなりがちです。

でも私はあまり自分以外の人に期待していないので、その分怒ったり悲しんだりすることが少ない方だと思います。期待値がない分、頂いた優しさや思いやりには思い切り感謝します。一見優しそうに見えるけど、干渉していくことにエネルギーをあまり割かない人です。

そんな淡々とした私にさえ、魅力的だな、尊敬するなと思える友人が何人も居るのですから、これはもう恵まれてるんだろうと考え至りました。

世の中理想の恋人ついては散々議論されているのに、理想の友達についてはほとんど話されていないし、尋ねられないような気がします。人生を通したらほとんどの人が恋人より友達と過ごす時間の方がずっと長いはずなのに、不思議です。

私にとっての理想の友達は、思考の解像度が高くて表面的でないところまで考え及ぶような人や、自分で決めた物事を貫き通しているような人です。両者ともすごく尊敬出来るから。

そして類は友を呼ぶというように、私自身こうありたいと願う姿かたちでもあります。

ここで、私の尊敬する友達の1人を紹介させてください。

彼はいつも身体の力がふにゃっと抜けていて、私と同じかそれ以上のマイペースな波長を持っています。

佇まいは現実的というより、小説の中に存在しそうな、ふしぎな雰囲気。

誰かの特徴について説明するとき、オノマトペを使うことがよくあるけど、彼はどれにも当てはまらなくて、強いて言うなら、ぐにゃん、と、へにょん、の間かな。一緒にいると、あれ、今何時間経ったんだっけ、と思わされるから。

ところで、私は小説を読む時、登場人物は一般人の想定で架空の人物で想像を膨らませます。役者が演じる映画の世界は創り上げられた美しき世界と捉えているから、その世界がいかに現実味を帯びていたとしても、私にとっては正確には現実の世界としては捉えられないんです。だから、小説と向き合う時は出来るだけ日常生活に溶け込むひょっとしたらすれ違いそうな人たちを思い描きます。映画よりもっとささやかでありふれた景色で良いんです。

そして小説は往往にして人が持つ魅力の多様性を教えてくれるから、結果的に私の読書では、日常ですれ違うふつうの人たちでありながら、滅多に巡り会えないような人が沢山出てくることになる。

私の友人のその人は、まさにそんな、小説の世界の住人という感じ。

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少し具体的な話になるけど、恩田陸の「チョコレートコスモス」という本に、演じることが好きで仕方がないというピュアなモチベーションで演技をしている、飛鳥っていう俳優の女の子が出てきます。

彼女の演技の練習方法は、彼女の五感すべてを総動員させて、街中の人々を「コピー」すること。たとえば、"電話に夢中なおばさん"とか、"電車で化粧に夢中な女子"とか、、コピーしたい人を見定め近付いて、的確に演ずる。

飛鳥は、演技している時だけその場から "居なくなる" 事ができる。演ずることに心から没頭することが出来るから、正真正銘の役者でありながら、社会的に"役者になる"事が二の次になるような、大人が忘れがちな本質をカタチに出来る人として登場します。

私の友人の彼は男性で、そして俳優ではなくミュージシャンだけど、飛鳥に近しい魅力を持った人だなぁと思っています。

彼もまた、音楽が好きで好きで仕方がなくて、それで音楽を続けている。音楽と向き合うとき、目の前からいつもの「ぐにゃん」で「へにょん」な彼は "居なくなる"。

好きなことを好きで居続け、そして動き続けることは、結構能動的なエネルギーを要することです。そして大人になると、このハードルがぐんと上がる。私たちは社会にのまれて悟りを忘れてしまう。心の声に蓋をすることに疑問を抱くことを忘れて中身のない日常の不満に埋もれてしまう。

そんなときに彼のつくる、純粋に音楽への想いにあふれた曲を聴くと、子供の心の柔らかさと素直さを思い出させてくれるんです。だからとても明るい音楽なのに、いつもちょっとだけ切ないんです。

子供の頃の色んな「好き」を思い出すために、彼以上の音楽は無いんじゃないかなと思います。

最後に友人の名前を紹介します。

ワタナベタカシ君といいます。


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