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「敵が家庭内にいるコワさがあるよね。」vol.7 Y氏

フツーの人の結婚、家族、子ども、恋愛に対する価値観をさぐるフツーじゃない「結婚インサイト」。7人目はワーママY氏。

「ワーク・ライフバランス」を重視する流れはありつつ、いまだに根強い日本企業の「残業エライ思想」。それは妻のワンオペ育児と直結し、過去にモーレツに働いた経験があるからこそのジレンマを生んでいます。
かつてぞっこんだった人が敵と見えてしまうリアルとは。


・Y氏詳細
現在アラフォー。20歳につきあい始めた彼と27歳で結婚。35歳で第一子を出産、現在二児の母。子なし時はキャリアに邁進。

場所:サイトウ自宅。日本酒を飲みながらなので、本音がどんどん飛び出します。

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■価値観を確立する前の方が結婚しやすい。

―結婚へのイメージは?
結婚したいと憧れがあったわけではなくて両親がお見合い結婚で、たった一回会って結婚したのね。
父と母は、仲良く暮らしていたから、「恋愛なしでも他人と仲良くなれるもの」なんだな、突然暮らせるんだと思っていた。

―お母さんは若かかった?
21歳で私を生んでいる。若いよね。
母は「価値感が成熟して自分というものを確立する前に結婚したんだな」という思いがあって、結婚は早くしておいたほうがいいんだ、と両親を見ていて思った。

―価値感が成立する前に結婚しておいた方がよいと?
そう。結婚は早めにしておけという人がいるけれど価値観が成熟する前のわけがわからないうちにしておけ、という意味だと思う。だから両親は結婚生活が成り立っていたと思うわけ。

―21歳は成人だけど、まだ発展途上という感じだよね。
若いから、自分の子どもたちに対してヒステリーな態度だったんだ、と納得したよね。

―ヒステリーとは?
私が弟ときょうだい喧嘩をしていて、お母さんに迷惑なんかかけてないのに、ゲンコツをもらうわけですよ。もうお互い小学生なのに、母は割って入ってきて、わーわーうるさく言ってくるの。最初は「なんで母が怒るんだろう?」と疑問に思っていたけど、それは母の未熟さからくるものなんだよね。母のように20代になってすぐ子ども産んだらしょうがないよね。

だから私は幼いながらに、「私は結婚して子どもができて、子どもたちが喧嘩していても絶対怒らないでいよう」って決めたのね。テレビのチャンネル争いをしたくらいで怒らないようにしようと(笑)。

―だからYさんは子どもたちに対してあまり怒らないんだ。私はつい言っちゃうな~。
お母さんに助けを求めてきたらいいと思うけど、何も助けを求められなかったら、いいよ、「小学生なら自分たちで解決してくれ」って思うわ。

―Yさんは27歳で結婚したと。
20代を漫喫したこそ今があると思う。
母親の影響は大きいから、知らない人と当たり前のように結婚できてる人がいるんだというのは植え付けられていたけど、自分は恋愛結婚だった。


■結婚したのは子どもを持つため

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―結婚したのはなぜ?
結婚と子どもはセットだと思っていて、家族をつくりたかったんだよね。
逆をいえば、子どもを生まないなら、結婚しなくていいと思ってる。

―なぜ家族が欲しかったの?
家族を持つというのは、本能でしょう。
私は第一子が生まれるまで、2回流産していて子どもを授かるために苦労していたから、「なんのために子どもが欲しいの?」って考えたととき「それは本能だから」というふうに片付けるのがシンプルだと思ってる。

私は夫と二人だけじゃ結婚生活は続けられないと思う。結果的に不妊体質で子どもができなかったという場合は別だけど、夫婦だけで永遠に過ごせない。夫婦だけで続いている人はすごいなと思う。

結婚していると縛られることがあるから、一人で実家にいた方が気楽だし、相手も彼じゃなくていい(笑)。自由恋愛でいいよね。そう考えると、日本ならではの、子どもを持つための結婚ってことかな。

―子どもがいないなら結婚しなくていいと。
2人だけの生活は飽きるんだよね。20歳で付き合って7年間、2人でさんざん一緒に過ごしてきて思った。

私たち夫婦は20歳で付き合ったから、仮に人生100歳まで生きるとしたら80年間旦那と生きている計算になっちゃう。

―長い(笑)。
旦那にぞっこんな時代もあったよ。週末は2泊3日でかいがいしく通って、実家にいながらも旦那と過ごす時間が多かった。20歳以降は、親と過ごしているより旦那と過ごす方が多かったよね。だから空気になりすぎている。

-空気は存在感がないけど、ないと生きていけないものだけど?
そう、空気ってないと死ぬからそういうことだと思う。
あと80年一緒に生きていくなかで、「15年間の子育て期間があったね、4人でこんなことしたね」と動画なんかを見て、思い出を振り返る時期なんだと思う。

―なんだか切なくなってきた。
4人の家族で一緒にいられる時間は貴重だなという認識はある。あと数年だよね。
「夫婦2人でのんびりゴロゴロしたいよね」って言いあうけど、それが実現するのもあっという間だよね。

■仕事への限界感

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―本当だ。結婚前の生活は充実していた?
キャリアは積んでいったけど、女子として仕事にも疲れていて、当時の生活に飽きていたんだと思う。
働きまくって社長になりたいわけではないけれど、それなりに役職には就いたし達成感はあったから。

基本的に誰かと時間が合えば飲んで帰っていたし、飲むことが趣味だったな。楽しいけど、「これ以上なにがあるんだろう?」と疑問に思う時期がきた。頭打ちだなーという気がしていた。

―キャリアを積むのが頭打ちということ?
当時、課長以上の役職に就いていた女性はいたけど、未婚か結婚していても子どもはいない、というパターン。私は子どもが欲しかったから、そのルートはたどれないなと思っていたの。

残業が増えて課長、部長と出世していくということは目指していなかったんだよね……しかもその当時に役職に就いていた人が今となっては平社員になっていて。「これないわ」って現実を見たよね。

男女平等とかいわれていても、女性が組織で働くて限界が見えたし、うちの会社は男尊女卑が根強いというのが身に沁みて。もうじゅうぶんだな、疲れたなって思った。

―ガツガツ働いて役職につくのは子なしか未婚か……。
いまは36協定(さぶろくきょうてい)というのがあって、基本的に残業はマックス30時間だけど、当時は深夜に個人タクシーが迎えにきたよ。

―経費でタクシー?
そう、ご褒美的なものが会社から用意されていたわけよ。
タクシーにはクーラーボックスがあって中にビールが冷えていて、おつまみもある。

―なにそれ、移動する天国だ。(笑)
終電を逃したときだけじゃなくて、終電間際でまだ間に合うという時でも、「タクシーのっていきな!連絡しておいたから」って(笑)。
課長もみんなそうだったかな。当時は経費が潤沢にあったんだよね~。でもこの生活を延々続けていくのは無理だなと思ってた。

―毎日それだとキツいと。
子どもを産んで育休があけて復帰したら、いつのまにか「残業は30時間超えるな」と言われてね。残業で終電のがすのがざらだったのに、遅くて21時で帰れるの。こんな時期が来るなんて思わなかった!

―仕事量が減ったということ?
それもあるけど、昔はダラダラ会社にいたわけよ。
定時で帰ろうとすると、「何おまえもう帰っちゃうの?」と言われたりするような感じで。
わざわざ「今日は早く帰ります~」と朝からアピールしたり根回ししたりしなきゃいけない会社で全体の8割くらい深夜まで残業の日々ね。

お昼ご飯を食べて、気づいたら5時半になっていて、なんとなく6時半で、なんにもしてないのに21時になって……「こんな毎日が人間の生活なの?一生続けたくないわ」て思ってた。
19時に家で夕ごはんを食べる若かりし頃の生活に戻りたかったよね。

―若かりし頃は日が落ちたら家にいるもんね。
ほんと日本企業死ね。って思う(笑)。
就労8時間?もう6時間でも多いんじゃないの。


■個食は孤独。

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―結婚とは家族をつくることイコール孤独にならないことでもある?
そう、10年後に個食になっていることを危惧している(笑)。子どもが大きくなって夕飯がいらなくなったとき、夫が相変わらず仕事だったら、私は一人でごはんを食べるわけでしょ。それがイヤなの。料理を作るのは嫌いだけど(笑)、子どもがいると食卓を囲めるから。

―大丈夫、私がいるから(笑)。個食にならない今は、子どもがいてくれてよかった?
そう。食べ物そのものより、誰と食べるかの方が重要なんだよね。
基本飲みに行きたいし、毎日誰かと飲んでいたい。ご飯作って、夫の帰りを待ってるタイプじゃないのよ。

子どもがいなかったら一緒にいる必要はなくて、帰ってくるところが一緒なだけという感覚ね。夫婦だけでラブラブで過ごせる人たちが羨ましい。私は夫婦だけという形は病むな。

―アウトドアとかキャンプっていう旦那さんと共通の趣味があるから仲良く過ごせそうだけど?
付き合っているときから旦那と一緒にキャンプへ行っていたけど、子どもと一緒に家族で行くのがいいな。大人の友達と一緒、というのとも違うんだよね。

―それはなぜ?
大人だけだとアスレチックやプールにいったりできないけど、子どもが一緒ならできる……私の子ども時代が楽しかったから、あの体験をもう一度したかったのかも。


「起きてる時に帰ってこない人」って意味ある?

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―旦那さんにしてあげられることは?
私ができること……あるかなー?
家事全般をやっているけど、私はあいつの家政婦ではないからそこはカウントしたくないよね。価値としていいたくない。うーん、笑いかな、日々の笑いや癒しになったらいいな、笑いは提供できていると思う。

―子どもという存在をどうとらえているか教えて。
いるだけで幸せ、でも勝手に生きててくれという存在(笑)。遠目に見てかわいいな~と思っているのがよくて、近くで関わっちゃダメだと思う。程よい距離感が必要だよね。

6歳と4歳になって、1歳や2歳児のべったりしたウザさから距離感がだいぶ出てきてかわいさは増している。赤ちゃんの密着感はなくて寂しい気もするけど、抱っこがいらないと肉体的な疲労感がないからラクだよね。言葉だけでいいから。見てるだけ「が」、幸せ(笑)。養子でもかわいいと思う。

―2歳差だけどある程度計画はした?
いや、うっかり二人目(笑)。育休があけて仕事に復帰した瞬間二人目ができたことが分かって、それから1年は忙しすぎて記憶がない。帯状疱疹が出て、大学病院に入院して……苦行でしかなかった。子どもは元気に生まれたけどね(笑)。

―離婚したいなって思ったことはある?
あるでしょ(笑)。ワンオペにおいて、旦那のいる意味がないわけよ。
「起きてる時に帰ってこない人」って意味ある?人手がまったく足りませんけど、なにこれ?と。家族の未来に対してビジョンが全くないから怒りが湧いてくることがある。

学ぶところもあるよ、プライスレスな体験は大事だって思うからそのためにお金を使うのはいいと思う。
将来のビジョンや野望を持ってる方が応援できるからいいけど、いまいち何の会社か分からないよね(システム系)。

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―旦那さんはYさんのキャリアに協力的?
いや、しょせん組織人だよ。妻は、会社の話をしちゃダメ。
妻は時短なのに、夫の社内の時短勤務者にはつらくあたるのね。時短の文句を言っているから、仕事の話はもちこんじゃいけないの。
敵側だから……敵が家庭内にいるコワさがあるよね。

私に、もし子供がいなかったら、仕事に依存していると思う。
仕事して、バカンスして、という考えで働いているんじゃないかな。
時短という時間制約がなかったら、めいっぱい働きたいと思う。

そもそも、時短勤務で仕事に対する満足感があるのか?って誰もがもやもやしていると思う。
「残業するがやつ偉い」という考え方がおおかたの会社でまだ根強いから、時短や定時で帰る女性の評価は低い。日本終わってる。

残業なしを徹底すれば、女性が活躍するためにどうのこうの言う前に、もう達成されると思うんだよね。夫も定時で帰れば、ワンオぺが解消されるから、つらさが減るわけで。夫も同じ気持ちを持ってほしいよね。

■離婚、再婚、恋愛

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―再婚についてどう思う?
一人身なら再婚できるけど、子連れとなると(私と子ども二人の)3人の思いがあるから難しいと思う。

―何かあったら、子どもは引き取る?
ひきとるね。離れて暮らすのはありえない。一時期、旦那が診断されたわけではないけど、それ「うつ病」でしょ、という時期があって、この人に任せられないなと思った。

―もし離婚しても、恋愛はしない?
恋愛はあるかもしれないけど、結婚する意味はないから再婚はしない。……恋愛の先には、家庭を持つということしかないと思う。世話したい、束縛したいタイプではないから、相当な経済力以外には再婚はないよね。

―旦那さんの浮気についてどう考えている?
完全犯罪ならいくらでもどうぞ。できるかどうかは別として。
浮気をすることによって罪悪感が芽生えて、土日はせっせと子どもを公園に連れて行って家族奉仕するっていう貢献度のある方が、浮気してないでダラダラしているよりいい。

まあ、浮気してない方がいいけれどね(笑)。


ーーーーーーーーーー Y氏完 -----------


企画・インタビュー・記事:斎藤貴美子

自己紹介は固定記事をご確認ください。




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