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個人面談で異文化について語る

◇「あらゆることが欧米化しても、アメリカと日本はこうも違うんだなぁ」
 小学校では年に1~2回個人面談を行います。中学校と違って子ども抜きの二者面談。時々話が盛り上がって規定時間以上に長引くこともしばしばあります。私は不思議とそれが苦じゃありません。後ろに時間があって保護者の側から「もう少し話したい」という時には喜んで聞くようにしています。

 子どもの習い事のことだったり、兄弟や夫婦、親戚関係の悩みだったり、果てには趣味や仕事の話など学校や子どもに関係のない雑談、世間話。これが案外面白いものなんです。今回はアメリカの話題で随分盛り上がったので備忘録的に気付きを書いておく。


1.アメリカと日本の小学校の違い

 アメリカでは、公立小学校でも成績によって通える学校が変わるそうです。それによって当然治安も変わる・・。だから、今度は学校間で学力競争が起こる。保護者と教員による決起集会もあるのだとか。

 日本でも成績によって通える学校が変わる文化は受験制度としてあります。「あの学校に通えるようにするためには、これぐらいの成績が必要である」あるいは「あなたにはこれだけの学力があるのだから、このあたりの学校が妥当である」とまさに個が格付けされる社会です。

 個を重視する社会、「勉強するしないはあなたの自由。そのかわりに通える学校が違うのもあなた次第。」これが公立小学校、つまり教育のベースとしてあるのがアメリカらしいなと感じました。

 第二の違いは出される課題や授業の雰囲気です。今でこそ、日本の教育も自分の考えを述べることを重視されるようになってきましたが、小学校の宿題は未だに漢字練習や計算ドリルなどが主軸でしょう。
 アメリカでは、宿題でも「自分の考えを書きなさい」系のものが当たり前のようです。授業も同様です。小学校時代をアメリカのシカゴで過ごしたとされる森田真生さんは次のように語っています。

アメリカの小学校では自分の意見を持って、それをはっきりと主張することが「かっこいい」と思われていたのに対し、日本でそれをすると「うざい」と言われることには戸惑った。自分の意見を堂々と述べるより、周囲と同調するほうがよしとされる空気は、授業中も、「先生の言うことをただ素直に受け入れる」文化として浸透していた。

『偶然の散歩』森田真生(ミシマ社)

 文化としての浸透。上辺だけ、システムだけ欧米化してもうまくいかないのはこれまでの文化を顧みていないからか。近代化、敗戦、高度経済成長、バブル崩壊、グローバル化、社会の変革や荒波を受けて教育情勢もその都度改変が試みられたが、根本の日本文化は変わらない。
 教育の成果とは、すぐに出るものではありません。日本の風土、文化をよく見て、どんな教育がよいのか、森田真生さんの言葉を借りるならば「せっかく身に付けた知も、周囲の文脈に着地させなければ、生かすことはできない」、つまり周囲と言う名の地域や家族を見て再考していきたい。

2.大谷翔平も実はそこまで浸透していない

 浸透というと、メジャーリーガーとしてアメリカで活躍しながらも日本で知らない人は最早いないであろう大谷翔平選手。意外にも、いや、そうものなのだろうか、アメリカでは、まだ知名度が低いらしい。ドジャースの本拠地はロサンゼルスなので、西海岸方面では局地的に有名人なのかもしれませんが、東海岸ではあんまり。

 むしろ、日本のアニメやゲームがかなり浸透しているようで、ドラゴンボールやマリオなどは小さい子どもから大人までかなり人気を集めているそうです。ポケモンにいたっては、「えっ?アメリカのキャラクターじゃないの?」レベルで、日本が、任天堂が生み出したということすら知られていない程浸透しているのだとか。
 日本では、ディズニーがアメリカ以上に大衆化されていますが、それと同じ現象なのかなと思います。アメリカでは、ディズニーはあんまりでマーベルヒーローはよく見かけたそうです。

 本場よりも他国で人気を博することって他にもありそうですね。ミスタードーナツなんて、アメリカでは廃業して残っていないですし。

 一か月前にアメリカは建国記念日を迎えましたが、お祭り状態で、花火が上がったり、どこもかしこも国旗を掲げたりと日本の建国記念日とは大きく様子が異なるようです。内田樹先生がよく述べられているように、アメリカには、はっきりとした建国理念があります。日本にはそれがない。気付いたら日本と言う国が成り立っていた。だから私たち日本人は日本建国の理念に立ち返り、それを語ることができません。

 異国の異文化体験、見聞きしただけでも有意義でした。なかなか海外に気軽に行けるわけでもありませんが、知見を広げる、翻って自分の国を見付け直す、よい機会であることには変わりがなさそうです。

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