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だから私は、前髪を切らない。

イベントが近づく度に思い出す。
「大切な誰かと過ごすなにか、大切な誰かと見る景色に勝るものはない」
なんていう、ある人には事実で、でも私にとっては事実ではないこと。まだ、事実じゃないだけかもしれないけれど。

海外なんか知らなくても生きていける。そう思っていた私がただの直感で決めて飛び出した1ヶ月の海外生活。買ったばかりのフルサイズ一眼、まだ伸ばしかけだった前髪。

『ずっと好きだったんだ』を聞きながら歩くの最高やから!
と友人に言われて歩いた、バス停までの道。突き抜けるほど晴れた青い空の下で聞いたその曲は、今でも私の大事な一曲。

午前7時。霧の中を歩いて、曲がって見える大通り。顔を上げた瞬間、霧の中を裂くように一筋の光が射した日。そのとき聴いていた、Taylor SwiftのStyleという曲。私は未だにその景色を超えるなにかに出会えていない。ひとりでみたあの景色は、涙がでるほど美しかった。いい光、そんな言葉が口からこぼれて、静かに泣いてしまった。

あの日々で得たものは数え切れない。すべての種類の感情を体験した、そんな時間だったと思う。わざと遠回りして帰った日に出会ったおばあちゃんとは、ヘアスタイルの話をした。お世話になっていたホストマザーとは、学校教育の話をした。大学で知りあって仲良くなった人がたまたま心理学専攻で、そんな話もした。

ポートレイトにハマるきっかけをくれたのはこの日々。技術もない私が撮った写真なのに、今みても誇らしい。大事な思い出が濃縮されているんだと思う。

「いい日だった」
なんて口癖が生まれたのは、多分この日々が境だったと思う。よくないことが起こっても、絶対にひとつはいいことを見つける。いい日だった、と言って一日を終えることは、自分とすべて、今日という日に対する私なりの最大限の感謝。

未知ほどこわいものはない、と思った。なにも知らない自分がこわかった。今の私をつくる好奇心と肯定は、この日々のエキスが大きい。

それから、私はほとんどずっと前髪を伸ばしている。一瞬たりとも目の前に広がる景色を見逃したくなくて、私は前髪をかきあげた。いい光も、最高の瞬間も絶対に見逃さない意志。どんな日も、隠れたりせず受け止めてやるという決意。

あれからもう2年が経とうとしている。どんなめぐり合わせだろう、旅が好きな人たちが今、まわりにいる。あの日から少しずつ、つながっていたんだと嬉しくなった。

いつも英語で書いていた日記。最後のしめくくりはいつも一緒だったから、今日はそれでしめくくることにする。私には、まだまだ見たい世界がある。知りたい世界と、感情がある。だからまだ、前髪は切らない。今日も髪をかきあげて、立ち向かうんだ。大丈夫、今日もぜったい、いい日にするよ。

Forever and Always.

読んでくださってありがとうございます。今日もあたらしい物語を探しに行きます。