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オープンオフィスと生産性

日本の企業では、写真のような仕切りのない「オープン」なオフィスが、主流でしょう。加えて、最近ではフリーアドレスという、自分の席がないスタイルも台頭してきています。フリーアドレスについては、2015年の研究によれば、良い効果がありそうな結果がでていました。(※1)

しかしオープンタイプのオフィスに関しては、あまりお勧めできない研究結果がたくさんありました。開放的で、コミュニケーションが活性化されそうで、なおかつ家具や必要なスペースのコスト的にも良くなりそうなオープンオフィスなのに意外な結果です。

まずは、イギリスの学術論文誌『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に発表された研究(※2)では、物理的な壁がなくなると、コミュニケーションおよび集合知が形成されにくくなる、ということが明らかになりました。

この研究によれば、オープンオフィスでは、伝統的なオフィス(仕切りがあるタイプ)と比べて、従業員同士のコミュニケーションが約70%減り、メールの量は22〜56%増加し、生産性も減少してしまいました

どうも、透明性が高いオフィスは、プライバシーが阻害されている感覚を生みやすく、結果集中力が低下してしまうことがその原因らしい。

従業員同士のコミュニケーションを活性化には、まず安心の個人的空間の確保を前提とするということです。オープンであることで、気が散って集中できなくなってしまうんですね。

オープンオフィスに変更したところ、満足度、ストレスレベル、生産性、創造性、対人関係なども悪化したという調査もあります。(※3)この傾向は、上級の従業員ほど顕著になるそです。


こうした研究や報告が相次ぎ、仕切りのあるオフィスに戻る動きが、2014年のBBCの記事で、紹介されるに至っています。(※4)

2017年のBBCの記事によれば、オープンオフィスによる生産性の低下の原因は、やはり「集中力の低下」によるもので、マルチタスクに向いていないわたしたちの脳は、一度邪魔されると再び集中した状態に戻るまで20分以上を要するのだそうです。

これは、堀江貴文氏が電話が嫌い、な理由でもあります。彼の著書のいくつかに何度か書かれています。メールであれば、自分の好きなタイミングで返信できます。仕事の効率化について詳しい、メンタリストのDaiGo氏も、メールは時間を決めて返信するのが好手ということを著書や動画で述べています。

また空間の広さは、記憶力に悪影響を及ぼします。これは、複数の人が机を共有するホットデスキング(いわゆるフリーアドレスですね)で顕著に現れるようです。記憶は覚えた場所と関連して定着するため、場所が変わると思い出しづらくなる傾向があるようです。

さらに(笑)
オープンオフィスは健康にまで悪いようで、オープンオフィスで働く従業員は、クローズドオフィスで働く従業員よりも病欠日数が62%も多くなってしまうという研究結果もありました。(※5)ストレスの増加とウィルスなどの拡散が容易になることが原因だと考えられています。

散々ですね。

一方で、オープンオフィスのほうが、従業員は活動量が増える、という研究も結果もありました(※6)

この研究によれば、「オフィスワーカーは座っている時間が長くなり、健康問題を起こしやすいため、オープンオフィスにすることで生まれる活動量の増加と、それに伴う健康状態の改善を無視するべきではない」とのこと。

つまり、クローズドにしながらも、運動量を上げる工夫が必要、ということになります。

そこでお勧めなのが、

スタンディングデスク & ステッパー

です。スタンディングデスクに変更するだけで、生産性は約1.5倍あがるという研究があります。ただまた長くなるので、スタンディングデスクについては別の機会に詳しく書きます。



ちなみにオフィスレイアウトの企業、三栄オフィスサービスは、パーテーションを使ってクローズドオフィスにすることを勧めています。具体的な仕切り方として

(1)立ち上がった際に周囲の社員の顔が見える高さの間仕切りを置く

(2)パーテーションを半透明のものにする

という提案をしています。

(1)は、集中しているときには仕切りがあり、立ち上がると周囲の従業員とコミュニケーションを取れる高さに間仕切りを設置することでプライベート空間の確保とコミュニケーションの両立できる、という意図でした。

(2)は、周囲の騒音により集中力がそがれるのは、実は「それが何の騒音なのかがわからない」ことから来るストレスによるためだそうです。パーテーションを半透明にすることで、周囲の確認ができるようにするという意図でした。


まとめると

•オープンオフィス生産性と創造性を低下させて、さらに健康まで阻害しやすくなる。

•クローズドオフィスは、活動量が減る。のでスタンディングデスクを導入すると良い。

•クローズドオフィス&スタンディングデスクにできないなら、立ち上がったら見渡せる程度の半透明のパーテーションをつかって間仕切るのが良い。


ということです。


※1 「フリーアドレス・オフィスとオフィスワーカーの生産性:再考」(2015)関西学院大学

※2 The impact of the ‘open’ workspace on human collaboration (2018)

※3 New Yorker The Open-Office Trap

※4 BBC The victims of open office are pushing back

※5 Sickness absence associated with shared and open-plan offices – a national cross sectional questionnaire survey(Scandinavian Journal of Work, Environment and Health)

※6 https://news.goo.ne.jp/article/gigazine/trend/gigazine-55916.html


参考:

Wired「オフィスが「オープン」な設計だと、生産性が低下する──企業での実験の詳細と、そこから見えてきたこと」

壁やドアを取り払って仕切りのない「オープンオフィス」が実は効率を下げているという事実(Gigazine)

•仕切りのないオープンオフィスに潜むデメリットとは?(三英オフィスサービス)

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