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夢の灯を持つリリイと夢を食べるドリアン

夢の灯を持つ妖精リリイと、夢を食べる魔法使いのドリアンがいました。リリイは美しい夢を人々に与える存在として崇められ、ドリアンはその夢を食べてしまう存在として嫌われていました。リリイはいい夢を見させて人々へ希望を配りつづけていましたが、ドリアンはそんなリリイのことをよく思いませんでした。

世界ではリリイのように人に夢を与えられるのが正義です。
人の夢を食べるドリアンは誰からも好かれず、一人彷徨っていました。ある日、リリイの作った夢を見ている一人の少女がいました。その夢は、白馬の王子様が迎えに来るという美しい夢でした。少女はその夢を心から信じ、王子様が迎えに来るのをずっと待ち続けていました。

だけどドリアンはそんな少女に声をかけます。「そんな夢は僕が食べてあげる。」そしてむしゃむしゃと食べ始めました。すると少女は泣いてしまいます。ドリアンはなぜ泣くのか聞きました。理解が出来なかったからです。

ドリアンは少女の為に食べているのに、その少女が泣いてしまう理由が浮かびませんでした。少女はドリアンに言います。「私は白馬の王子様を待っていたいのに、なぜ食べちゃうの。酷いよ。」と。ドリアンは困ってしまいました。

人々に夢を与えていたリリイが気が付いてこちらへやってきました。「なんでこんな素敵な夢を食べちゃうのよ!意地悪っ。」そう言われたドリアンは心が痛みました。ドリアンは二人の元から去ることにしました。リリイと少女はドリアンがいなくなったことに喜んで、夢の続きを見始めました。

そしてとうとう少女は80歳になってしまいました。白馬の王子さまは迎えに来てくれず、でもリリイは「白馬の王子さまはいつか必ず来るわ」と言って励まします。そんな姿を遠くからドリアンは見ていました。本当にこれでよかったのかなぁ。ドリアンはこっそり気づかれないように少女の夢を食べてしまいました。

するとそれに気づいた少女は怒ってドリアンに言います。
「なんてひどいことをするの?これで本当に白馬の王子様が来なくなってしまったわ」とわんわん泣いています。
そのいたいけな姿にドリアンは心が壊れそうでした。
「君は白馬の王子様に迎えに来てもらうために何か努力をしたかい?いつか迎えに来てくれるって思いこんで、自分から動こうとしたかい?何度もチャンスはあったのに、君はそれに気づくことなくもう80歳になっちゃったよ。」ドリアンの言葉で少女は更にわんわん泣きました。

「本当は気づいていたのに。でも、私には夢の中で見た王子様が迎えに来てくれるって信じてたの。もう何もかも遅すぎたわ。」少女は、後悔しましたが時間は戻りません。

そしてドリアンは伝えます。「僕が夢を食べておいたから、もう大丈夫だよ」そういうとドリアンは消えてしまいました。少女はおばあちゃんになって夢から覚めました。

すると、目の前にいつもそばに居た幼馴染が立っていました。もうすっかりおじいさんです。

おばあちゃんはほっとしました。

あとがき
やりたいことがあるならば、動かなくては。
きっと自分への教訓です。がんばれ私、がんばれ。
人生頑張らないといけない時が来た。

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