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孤独の勇者:第3章 友情の輝き

第3章:友情の輝き

子ウサギとのふれあいから、ルークの頭の中では友達が出来るかもしれないという希望が少しずつ生まれてきていた。狼という存在を知らない子ウサギにはルークは優しい人だと映ったことがとても嬉しく、期待と希望がルークを動かしていった。今日は勇気を出して少しだけ森の中へ入ってみた、そこにはウサギが集まる場所があり和やかに過ごしていた。迷子を助けた子ウサギは小さくてまだ母ウサギのそばを離れないが、その姉ウサギは森の中で遊んでいた。

ルークは姉ウサギのところへ行き、友達になるための準備を始める。ルークにはとっておきの必殺技があった、それはとても器用だということだ。ルークは森の中で調達したものでウサギの耳にそっくりなカチューシャを作っていたのだ。ルークはウサギになりきって、ウサギに話しかけ友達になろう大作戦を実施するのである。母ウサギに罵られたあの日の映像が目に浮かび、怖い気持ちもあるがたくさん練習したから大丈夫、とそう自分に言い聞かせた。

ちょっと緊張のルーク

ルークはカチューシャをつけてウサギのそばへ行った。ウサギはルークの耳に反応し、少しずつ近寄りルークの耳に興味を抱いている。ルークはゆっくり近づき、「やぁ、うさぎさん。一緒に遊ばない?」するとウサギはぴょこんと現れた狼の大きさに驚いて帰ってしまった。ルークはあの頃と違って、大人の大きさに成長していた。そんなことに気付かなかったルークは、急に現れたから怖かったのか、そもそも耳が違ったのか、そんなことで頭は一杯だった。それでも友達になる方法を一生懸命考え続けた。

次の日は、森の中で調達したものでリスのしっぽを作ってみた。ルークの自慢のふわふわのしっぽもいいのだが、リスとは少し構造が違う。リスになりきってリスたちの場所へ行く。ドキドキ胸が高鳴るルーク、何も知らずにどんぐりを探しているリス。ルークはふわふわのお手製リスのしっぽを見せながら「やぁ、リスさん。一緒に遊ばない?」と声をかけてみた。するとリスは、あまりにも大きな狼に驚いて死んだふりをしてしまった。ルークは慌ててリスを優しく触ってみるが、リスは飛び跳ねて帰ってしまった。また失敗してしまったことにルークはとても落ち込んだ。ただ友達になりたかっただけなのにと、なにがダメなんだろうととても悲しんだ。

***

ある日の夜、フクロウが木にとまっていた。ルークは木に登り足を縮め、体を丸めた。森の中で調達したもので作ったフクロウの羽をひろげて見せた。フクロウはそんなルークを気に留めることなく木にとまっている。会話こそないものの、長い時間一緒に居られることが拒絶されていないんだと思うと、ルークにとっては嬉しかった。
フクロウの横で真似をするルーク。そんなルークを見てフクロウは笑っていた。そして、フクロウは自慢の翼を広げて見せた。ルークも同じようにお手製の翼を広げて見せた。フクロウはルークに笑いかけてから飛んでいき、それをみたルークは大きな手を振って飛ぼうとするが、そのまま地面に落ちてしまう。ドスン。ルークは今日も失敗してしまった。
 
まさか真似をするなど思っていなかったフクロウは、落ちて動かないルークを少し遠くから見ていた。ちょっと意地悪しただけだったのに、打ち所が悪かったらどうしようと内心焦っていた。フクロウは動かないルークのそばにそっと降りて行き、「お前、大丈夫か」とそっとルークを翼でつついた。

「うぅぅぅぅぅぅ」ルークは泣いていた、なんで上手くいかないんだって自分に失望していた。期待と希望を胸に友達を作りたいって、ただそう思っていただけなのになんでこんなにも上手くいかないのか。ルークは心が折れてしまった。同じ仲間になれれば、友達になれると思ったのに、立ち上がることが出来なかった。そんなルークを見たフクロウは、そんなに当たり所が悪かったのかと懸命に声をかける。

フクロウはルークのことをあまり知らなかった。基本的に夜に活動するので、森での出来事を知らなかった。正しくは、興味がなかったのかもしれない。他のフクロウは噂を耳にしていたが、彼は自分が実際見たわけではないことに、いろいろ言う事が気に喰わなかったのかもしれない。
今夜はただ隣に面白いやつが来て、自分の真似をするものだからフクロウなりに遊んであげたつもりだったが、ルークにとっては、これ以上どうしていいのか分からなくなってしまい、立ち直れそうになかった。

「悪かったよ、ちょっとからかっただけだよ。ケガしてないか?立てるか?」ルークはフクロウの言葉に驚いた、狼のことが怖くて意地悪したのではなく、遊んでくれてたんだと知って飛び起きた。そうと分かれば、いつものルークに戻れた。「僕、ルーク。狼だよ、ねぇ友達になろうよ」ルークのらんらんとした瞳がまるで太陽のような輝きでフクロウには眩しすぎた。
「眩しいな、お前は。俺はフクロウのサガだ。サガとは賢明なものに与えられる名だ、よろしくな」そういって翼を広げて見せた。ルークは嬉しくなって手作りの羽を広げて見せたが、落ちた時に羽が折れてしまったようで、広がらなかった。

するとフクロウは、
「お前面白いものもってるんだな、それは翼か?お前も飛べるのか?」
「僕はルークだよ、これは僕が作ったんだ。だから本当に空は飛べないんだ、さっき落ちただろ?」
「お前すごいな。何でも作れるのか?」
「僕はルークだよ、材料があれば作れるさ」
この瞬間、ルークが生きてきた中で最高に幸せな時間だった。

***

サガにはとても好きなフクロウがいた、とても美しい声を持つ彼女は人気者のシエーネだ。サガはシエーネを思っているが、つい意地悪をしたくなる性格が裏目に出てシエーネに嫌われてしまった。そんな自分が嫌いだとサガは言った。ルークは驚いた、友達になってくれたフクロウが悪い奴なわけないって心底思っていたからだ。ルークは優しく声をかける。
「サガは、いい奴だよ。偏見なんて持たずに僕と友達になってくれるんだもん」そういうとサガは少し照れた。自分をそんな風に思ったことをなかったが、ルークにはそう見えるのかと思うと、少し自信が出た。そこでサガは提案をする。

「お前のその器用な手で、林檎のブローチを作ってくれないか」
「僕はルークだよ、いいよ。僕でよければ作るよ。じゃぁさっそく材料を集めに行こう」ルークは友達からの初めてのお願いに心が躍った。真っ赤な木の実や小枝や引っ付けるための蜘蛛の巣を探して二人は夜中走り回った。ルークはサガに聞いた。「りんごのブローチを付けるなんて、サガはオシャレさんだね」するとサガは「俺がつけるんじゃないよ、その、友達にあげるんだ」照れてサガはぶっきらぼうに話した。

「それなら、サガが作るべきだよ。そのほうが100倍もらった人は嬉しいと思うよ」
「俺は不器用だから、器用なお前に頼んでんだろ」
「僕はルークだよ、器用さが大事じゃないと思うけどな。友達は大切に思っている気持ちが大事なんじゃないかな」
屈託のない笑顔にサガは眩しすぎてまともにみれなかった。

結局ルークの笑顔に抗えず、サガも作ることにした。「サガは本当に不器用だね」「うるせえなぁ」二人の会話はどこまでも続き、幸せな時間を過ごした。「できたー」二人は太陽が昇り始めるころにやっとブローチが完成した。ルークが作ったりんごのブローチはもちろん素敵で、誰が見ても林檎だとわかる。だが、サガのブローチは不格好だった。

それをみたルークは
「こんな気持ちが詰まったプレゼントもらったら絶対嬉しいよ」サガは照れて言い返せなかった。今夜は彼女の誕生日、サガは気持ちを伝えることをルークに告げた。ルークは自分のことのように嬉しかった。お手伝いできたことも、初めての友達が出来たことも。全てが愛おしかった。


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