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青の時間と過去

路地の奥にある時計店「アズール・タイムズ」は、時間と空間の狭間である。この店では、時計が止まった瞬間青く光り、その光は「青の時間」と呼ばれる過去へと訪れる者を導く。

彼女はその一人だった。行き場を失くした劣等感がこの店まで引き寄せた。店の扉を押すと、賑やかだった店内の時計たちが一斉に停止し、すべてが深い青色に包まれる。時計師は彼女に語る。「ようこそお嬢さん。ここは青の時間への扉、時間は流れを失い、過去と現在が繋がる場所です。」彼女は安心したかのように微笑み応える。「ずっと、この場所を探していた気がするんです」

「過去をお探しですか?」老時計師が静かに尋ねる。彼女はうなずき、長年心を圧迫してきた言葉に苦しんでいること口にした。いつも呪文のように言われた「君には無理だ」この言葉が呪縛となり、彼女の心を過去にとどめたまま変わることが出来ないでいた。

時計師は彼女を大きな古時計の前へ導き、振り子が揺れるたびに、彼女の心を過去へと引き戻す。「時は、前にも後ろにも流れる。見せてあげよう」と彼は低く囁く。

幼い日の彼女が、輝く目で未来を語るシーンが浮かび上がる。好奇心旺盛だった彼女はいろんなことに興味を持ち試そうとするが、いつだって「君には無理だ」という言葉に阻まれる。いつしか彼女は虚無感に襲われていた。

彼女は、父に言われた言葉の真意は何だったんだろうといつも考えていた。「私には出来ないと見えていたのか、 私がその言葉に抗い頑張る姿を見たかったの?あなたが発した言葉を一生背負って生きている 私はどうすればいいのか、どうすべきなのか それさえも考えさせてくれない呪縛が 私を過去にとどめさせているの」彼女の悲痛の言葉は父には届かなかった。

時計師は穏やかに言う。「今ここにいるあなたを、過去の言葉は定義できません。」彼女の目から涙が溢れる。時計師はさらに続ける。「言葉は風、あなたは山。風は山を揺るがすことはできません。あなたの価値や未来を、過去の言葉が決めるわけではありません。」

振り子が動き出し、時は再び流れる。彼女は、言葉がもはや痛みを伴わないことを感じ取る。言葉に抗わずその意味を受け入れることで、過去に囚われる身となった自分を解放し、自分もまた前に進む力を取り戻す。

彼女が店を出るとき、新たな自分と自由を胸に、未来への一歩を踏み出す準備ができていた。過去の言葉はもはや彼女を縛ることはない。彼女は自分自身の価値を新たに定義し、生き生きとした日々を歩み始める。


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