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本と珈琲が好き 子どもの発達、親子の育ちに関わる仕事をする心理士です

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本と珈琲が好き 子どもの発達、親子の育ちに関わる仕事をする心理士です

最近の記事

超人ナイチンゲール

先日小5の娘が、学校の課題で伝記を読んだという話をしていて、そういえばうちの子たちは伝記とかそういうの、好きじゃないなぁと思った。 何でだろう?そうか、私も好きじゃない。 何でだろう?聖人が描かれるから?世のため人のために尽くすことの美徳が説かれるから? 学校の道徳も、それは本来の道徳なのでしょうか?と疑問におもうことがあって、それは、令和の日本で「嫌われず要領よく振舞う」、SST(ソーシャルスキルトレーニング)じゃん、と思ったりする。 最近は倫理の授業なんかはだいぶ変

    • ゆっくり、いそげ カフェからはじめる人を手段化しない経済

      以前に一度読んだことがあり、改めて読みたくなって図書館で借りた。9年前の本なのに図書館で予約してから回ってくるのに3ヶ月。最近は図書館の使い勝手が悪くなる一方だ。 クルミドコーヒーの影山さんは東大マッキンゼーからのベンチャーキャピタル、そして今はカフェ店主という異色の経歴。ただ、異色なのはその経歴というよりはむしろ、その経歴から安易に想像してしまう経験や強みを活かすどころか捨てていくようなコミュニティで、くらしはたらいているところだ。 はたらくことを、利用(テイク)しあう関

      • 逆ソクラテス

        小学生が主人公で、カンニングから始まるミステリーぽい話なのかな?と、下の子のために買った小説。もちろん小学生も読めるけど、私自身気づかされることが多すぎて、小学生を育てる親世代も読むと良いと思えた。 生徒を差別する教員、怒鳴り威圧させることでチームを率いるコーチ、そうした大人たちの影響を受けて、友人を揶揄ったり若い教員を困らせて、そんなことしか楽しみを見出せない子どもたち。 短編の一つ、「非オプティマス」の中で、こうした負の連鎖に巻き込まれ教員を困らせる生徒たちや、授業参観

        • 言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか

          新年1冊目。夕方に北陸で大きな地震があり、遠く離れていても心が落ち着かない。メディアから少し離れるために終盤一気に読んだ。 行政の乳幼児健診やクリニックの発達相談で、 言葉の遅れについて相談を受けるケースも多く、言語獲得の発達についてはある程度前提知識もあったけれど、 オノマトペの言語学的な知識はなかったので、面白かった。世界のオノマトペの共通性や日本語のオノマトペの規則性などが事例とともにたくさん紹介され、身近で納得感があり、言葉あそびのようで面白い。 オノマトペの発音

        超人ナイチンゲール

          訂正する力

          今年も様々な本に楽しませてもらった。 本を読んで自分を省みるし、本を読んで社会や他者に関心を持つ。本は、心地よく生きるための道標だなと、つくづく感じる。 東さんの本はいくつかトライしては難しくて、 難しくありませんと書いてあるのにも関わらず難しかったのだけれど、この本はとても読みやすかった。 現状維持でもリセットでもなく、訂正。 修正ではなく、訂正。 現状維持もリセットも思考停止で幼稚だ。 白黒つける、片方を間違いだと全否定するって、ちょっとカッコ悪いよね〜って話。

          訂正する力

          言葉のズレと共感幻想

          レビューを読んで興味を持ち、図書館で予約していたのがようやく回ってきた。 始まりから具体と抽象の話が出てきて、「あれ?この話どこかで…」と思ったら、佐渡島さんの対談相手は、夫が買って本棚に置いてあった本"具体と抽象"の著者だった。 私は心理士として相手の心の奥深くに耳を傾ける仕事をしているので、とにかく具体だ。 具体の話をしないと、素の感情的な部分に迫れない。 以前読んだ信田さよ子さんの"言葉を失ったあとで"にあった 「ビジネスで生きる人の、貧困な経験を貧困に抽象化する語り

          言葉のズレと共感幻想

          ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち

          ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー からの流れでハマータウンの野郎どもを読んだのが1年前くらい、そして先日いつもチェックする本屋のちくま文庫のコーナーでこの本を見つけた。 ハマータウンの野郎どもで描かれた若者世代が、紛れもない"おじさん"世代となり、英国のEU離脱に揺れる様子を、彼らの魅力を引き出しながら描くノンフィクションエッセイ。 時にハハッと笑っちゃいながらも、現在の英国の社会保障システムを学ぶ機会になった。特に、NHS(国民保健サービス)の現状は驚いた。という

          ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち

          藤井聡太のいる時代

          愛知県瀬戸市は私の母の地元だ。 幼少期の頃から年に数回、母に連れられ名古屋から名鉄に揺られて新瀬戸駅に降り立った。 高校生くらいになってからは、隣の無人駅の瀬戸市役所前駅から、ゆるゆると続く坂道を歩いて1人で祖父母の家に行った。25年前の記憶では、陶器で有名な、のどかな田舎町だ。 年老いた母にとっては、自分の地元で生まれ育った若くて品の良い青年は、自分の息子同然、誇りでしかない。 半年前に姉の同級生が宇宙飛行士候補生に選ばれた時の嬉しそうな様子も思い出して、 母と喜びを共有

          藤井聡太のいる時代

          木曜日のシェフレラ

          私は乳幼児期が中心なので、スクールカウンセラーの経験はないが、スクールカウンセラー経験の長い友人が勧めてくれたマンガ。近所の本屋は数軒廻っても全然売ってなくて、横浜そごうの紀伊國屋書店で見つけた。 薄めの単行本でまだ2巻だけだが、スクールカウンセラーがわかりやすく描かれていた。 スクールカウンセラーはたいてい週1日しかいない。(これも実は自治体によりけりで、私の住む川崎市の小学校は週1もいないので、子どもも親も、自分の学校の担当のスクールカウンセラーの顔も名前も知らない。

          木曜日のシェフレラ

          天日干し経営

          発売日に書店で購入した。 内容について語るには畏れ多いほどにお世話になった恩人なので、出会った頃の話を。 最初に接点を持ったのは、転職して半年、25歳の時だったと思う。当時担当していたお客様のことで、若いキャリアアドバイザーの私は会社にいけなくなるほど酷く傷つき、仕事を続ける自信を失っていた。その時に、突然にメールが届いた。 君は悪くないし、お客様を悪く思う必要もない。これからも自信を持って仕事をしてほしいという趣旨の、シンプルなメールだった。 でも、社長が私個人に気持ちを

          天日干し経営

          ふつうの相談

          本屋に一般書とともに平積みされていた。定価2200円。高い。この間は新書を書いていたし、彼は世間に向け臨床心理学を身近にすることを志向していると考えていたので、その少し小ぶりな本の価格に違和感を覚えた。 読んで捉え方が変わった。全然高くないよ。東畑開人という精神分析家、医療人類学者の作品の中では最高傑作だと思えた。特にケアに関わる専門職の方には誰1人残らずお勧めしたい。 (先日がん検診で訪れた市の中核病院で、お年寄りの、特に目的のない延々と続く話を聞き続けている若い医師や採

          ふつうの相談

          言葉はいのちを救えるか

          サンドイッチマンの番組「病院ラジオ」で、次女を出産した近所の病院の回が放映された。夫が録画してくれたので視聴した。職場の機械で手を切断した方、余命宣告を受けているがん患者さん、交通事故の後脳梗塞を発症された方など、比較的若い方々とその家族の語りは、サンドイッチマンの柔らかく温かい笑いとともに、心に残った。 その数日後に、毎年恒例夏の終わりの日テレ長時間番組の番宣で登場するジャニーズを横目で見ながら、この本を読んでいた。 -言葉はいのちを救えるか いのちとか考えたことはなか

          言葉はいのちを救えるか

          LUCY IS HERE 今こそ、ルーシー!

          スヌーピーミュージアムでのルーシーヴァンペルト展の企画本。 昔からルーシー(と、弟のライナス)好きの私には嬉しい企画展で、思わず買ってしまった。 (大学時代に好きだったインディーズバンド、Lucy Van Pelt だったなー。ひさしぶりにインスタで見つけたら結成20年だった。) 夫が「あの花沢さんみたいな子」と言ってて、本当にそんな感じで気の強い自分勝手なルーシーだけど、精神分析スタンドでお金儲けしたり、男性支配的な野球チームでセンターを守ることに疑問を呈したり、大統領に

          LUCY IS HERE 今こそ、ルーシー!

          正欲

          お盆に4日間、大阪で講習を受けていた。大阪市からは離れた場所でホテル缶詰め、夜は溜まった作業を進めようと思っていたのだけど、迫り来る台風前に「帰れるのか?」と気持ちが落ち着かず、作業が進まない。諦めてホテル横のTSUTAYAで本を購入した。桐島、部活やめるってよ と 何者は読んだことがある。本作は話題でよく目にしていたので、手に取った。 登場人物を取り巻く状況が丁寧に描写されており、場面が適度に入れ替わりながら展開し、飽きずに一気に読めた。 解説で東畑開人さんが書いていた

          両手にトカレフ

          ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルーの二冊を読んで、ブレイディみかこさんの文体が好きだなと思って図書館で予約してた本。 今日は移動の多い仕事だったので、電車の中とアポ待ちの時間で一気に読んだ。 イギリスの中学生ミアは薬物&男性依存症の母と小学生の弟と暮らすヤングケアラーで、「ソーシャル」の支援を受けている。 ※ソーシャルワーカー的な支援者をミアは「ソーシャル」と呼んで、ソーシャルの前ではソーシャル受けする子どもになりきる。 みかこさんの描く中学生像は、(「ぼくは〜」

          両手にトカレフ

          成瀬は天下を取りにいく

          今年も中学の読書感想文の季節がやってきた。 何のために書くのか。 これまで読んできた本の振り返り? 読書感想文好きな教員にウケそうな本を選んでウケそうな文章を書く練習? 何にしようかね?と話しながら、私の日常もついついそちらに意識が向いていて、 近くの書店に三笘特集のNumberを探しに行ってそちらは立ち読みし、この本を買って帰ってきた。 (子どもは数年前に読んだ違う本を選んだのだけど、それも想定内、私自身の楽しみ。) 部活の大会で主人公に出会った青年が恋心を抱き、初めて話

          成瀬は天下を取りにいく