saho

本と珈琲が好き 子どもの発達、親子の育ちに関わる仕事をする心理士です

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最近の記事

視点という教養(リベラルアーツ)

どの情報からこの本を予約したのだろう。 思い出せないのだけど、とにかくその情報源よ、ありがとう!今年いちばん面白かった。 歴史を面白く学ぶコテンラジオの深井さんが、 リベラルアーツ(教養)に出会うために 物理学 文化人類学 仏教学 歴史学 宗教学 教育学 脳科学 の研究者と対話する。 これが、儲かるとか使えるとか役に立つ感のない、純粋な学問への興味とその解説で、 教養というと物知りとか知識人みたいな感じがあるけど、むしろ思想や哲学的対話のようだった。 特に興奮したのは仏

    • 嘘と正典

      地図と拳を読みたいと1年半くらい前から予約しているのにいまだに図書館の順番が回ってこない。 その間につなぐ。 1位に躍り出た。3冊の中では圧倒的。 特に良かったのがタイトルの「嘘と正典」。 以前に、原田マハさんの楽園のカンヴァスを読んだ時に書いたのだけど 加えてSF的でミステリー要素もあって、最後に「そっちかー!」って唸った。 小川さんの得意な世界観に触れた気がした。 早く来い来い、地図と拳。

      • 九年前の祈り/あわいに開かれて

        小野正嗣さんの本と出会ったのは20代の頃で、ヴィレッジヴァンガードの本棚に居心地悪そうに置かれていた、マイクロバスという作品。 「わー、これはきたぞ」と、ひとり興奮を噛み締めたことを思い出す。 暗い、明るくはない。ただ、自分がどこいるかわからなくなるようなぼんやりとした時空間と、丁寧な描写が好きだと思った。あまり評判にはならなかった覚えがある。 その後子育てが始まったりで、本から遠ざかっていた。 久しぶりに図書館の作家別コーナーで見かけて、2冊選んだ。 9年前の祈り、あれ…

        • 日本語はこわくない

          最近長女から、話し言葉の文法的な間違いを指摘されることが多い。長年夫から、無意識のうちにダジャレを言っていると指摘されてきた。いずれも、溢れ出る思考や感情を整理せずそのまま発しているからだと思う。頑固なわたしは、「伝わればいいじゃん」と心の中で呟き、耳を傾けずにきた。 わかってはいるが、完璧が苦手である。概ねで良いと思っている。こんなに言い訳している時点で、相当な日本語コンプレックスなのかもしれない。 そんな長年の私の悩みについて、モヤ対談で知った飯間浩明さんに救いを求め

        視点という教養(リベラルアーツ)

          モヤ対談

          新しい作家や本探し。 対談相手に興味深い名前がいくつかあったので、他の知らない方を知るために読んだ。 飯間浩明 日本語は怖くない 荒井 裕樹 まとまらない言葉を生きる あたりが発見。こういう本の探し方もありだな。

          モヤ対談

          君が手にするはずだった黄金について

          忙しい、いや、忙しくもないんだけど、久しぶりになかなか前に進めずにもがいている。 こんな時に限って予約本の順番が回ってくる。 あれ?この本あと50人くらい待ってたはずなんだけど、蔵書増やしたのかな。ここで借りないと順番飛ばされる。 焦っても仕方ないし、ちょっと停止して読み始めた。短編集で、隙間に読むのにはちょうどよかった。 著者自身が主人公のフィクションともノンフィクションとも取れる話なんだけど、こんな面白いこと身の回りでなかなか起きないよなと思うから、多少話を面白くしたフ

          君が手にするはずだった黄金について

          超人ナイチンゲール

          先日小5の娘が、学校の課題で伝記を読んだという話をしていて、そういえばうちの子たちは伝記とかそういうの、好きじゃないなぁと思った。 何でだろう?そうか、私も好きじゃない。 何でだろう?聖人が描かれるから?世のため人のために尽くすことの美徳が説かれるから? 学校の道徳も、それは本来の道徳なのでしょうか?と疑問におもうことがあって、それは、令和の日本で「嫌われず要領よく振舞う」、SST(ソーシャルスキルトレーニング)じゃん、と思ったりする。 最近は倫理の授業なんかはだいぶ変

          超人ナイチンゲール

          ゆっくり、いそげ カフェからはじめる人を手段化しない経済

          以前に一度読んだことがあり、改めて読みたくなって図書館で借りた。9年前の本なのに図書館で予約してから回ってくるのに3ヶ月。最近は図書館の使い勝手が悪くなる一方だ。 クルミドコーヒーの影山さんは東大マッキンゼーからのベンチャーキャピタル、そして今はカフェ店主という異色の経歴。ただ、異色なのはその経歴というよりはむしろ、その経歴から安易に想像してしまう経験や強みを活かすどころか捨てていくようなコミュニティで、くらしはたらいているところだ。 はたらくことを、利用(テイク)しあう関

          ゆっくり、いそげ カフェからはじめる人を手段化しない経済

          逆ソクラテス

          小学生が主人公で、カンニングから始まるミステリーぽい話なのかな?と、下の子のために買った小説。もちろん小学生も読めるけど、私自身気づかされることが多すぎて、小学生を育てる親世代も読むと良いと思えた。 生徒を差別する教員、怒鳴り威圧させることでチームを率いるコーチ、そうした大人たちの影響を受けて、友人を揶揄ったり若い教員を困らせて、そんなことしか楽しみを見出せない子どもたち。 短編の一つ、「非オプティマス」の中で、こうした負の連鎖に巻き込まれ教員を困らせる生徒たちや、授業参観

          逆ソクラテス

          言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか

          新年1冊目。夕方に北陸で大きな地震があり、遠く離れていても心が落ち着かない。メディアから少し離れるために終盤一気に読んだ。 行政の乳幼児健診やクリニックの発達相談で、 言葉の遅れについて相談を受けるケースも多く、言語獲得の発達についてはある程度前提知識もあったけれど、 オノマトペの言語学的な知識はなかったので、面白かった。世界のオノマトペの共通性や日本語のオノマトペの規則性などが事例とともにたくさん紹介され、身近で納得感があり、言葉あそびのようで面白い。 オノマトペの発音

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          訂正する力

          今年も様々な本に楽しませてもらった。 本を読んで自分を省みるし、本を読んで社会や他者に関心を持つ。本は、心地よく生きるための道標だなと、つくづく感じる。 東さんの本はいくつかトライしては難しくて、 難しくありませんと書いてあるのにも関わらず難しかったのだけれど、この本はとても読みやすかった。 現状維持でもリセットでもなく、訂正。 修正ではなく、訂正。 現状維持もリセットも思考停止で幼稚だ。 白黒つける、片方を間違いだと全否定するって、ちょっとカッコ悪いよね〜って話。

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          言葉のズレと共感幻想

          レビューを読んで興味を持ち、図書館で予約していたのがようやく回ってきた。 始まりから具体と抽象の話が出てきて、「あれ?この話どこかで…」と思ったら、佐渡島さんの対談相手は、夫が買って本棚に置いてあった本"具体と抽象"の著者だった。 私は心理士として相手の心の奥深くに耳を傾ける仕事をしているので、とにかく具体だ。 具体の話をしないと、素の感情的な部分に迫れない。 以前読んだ信田さよ子さんの"言葉を失ったあとで"にあった 「ビジネスで生きる人の、貧困な経験を貧困に抽象化する語り

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          ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち

          ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー からの流れでハマータウンの野郎どもを読んだのが1年前くらい、そして先日いつもチェックする本屋のちくま文庫のコーナーでこの本を見つけた。 ハマータウンの野郎どもで描かれた若者世代が、紛れもない"おじさん"世代となり、英国のEU離脱に揺れる様子を、彼らの魅力を引き出しながら描くノンフィクションエッセイ。 時にハハッと笑っちゃいながらも、現在の英国の社会保障システムを学ぶ機会になった。特に、NHS(国民保健サービス)の現状は驚いた。という

          ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち

          藤井聡太のいる時代

          愛知県瀬戸市は私の母の地元だ。 幼少期の頃から年に数回、母に連れられ名古屋から名鉄に揺られて新瀬戸駅に降り立った。 高校生くらいになってからは、隣の無人駅の瀬戸市役所前駅から、ゆるゆると続く坂道を歩いて1人で祖父母の家に行った。25年前の記憶では、陶器で有名な、のどかな田舎町だ。 年老いた母にとっては、自分の地元で生まれ育った若くて品の良い青年は、自分の息子同然、誇りでしかない。 半年前に姉の同級生が宇宙飛行士候補生に選ばれた時の嬉しそうな様子も思い出して、 母と喜びを共有

          藤井聡太のいる時代

          木曜日のシェフレラ

          私は乳幼児期が中心なので、スクールカウンセラーの経験はないが、スクールカウンセラー経験の長い友人が勧めてくれたマンガ。近所の本屋は数軒廻っても全然売ってなくて、横浜そごうの紀伊國屋書店で見つけた。 薄めの単行本でまだ2巻だけだが、スクールカウンセラーがわかりやすく描かれていた。 スクールカウンセラーはたいてい週1日しかいない。(これも実は自治体によりけりで、私の住む川崎市の小学校は週1もいないので、子どもも親も、自分の学校の担当のスクールカウンセラーの顔も名前も知らない。

          木曜日のシェフレラ

          天日干し経営

          発売日に書店で購入した。 内容について語るには畏れ多いほどにお世話になった恩人なので、出会った頃の話を。 最初に接点を持ったのは、転職して半年、25歳の時だったと思う。当時担当していたお客様のことで、若いキャリアアドバイザーの私は会社にいけなくなるほど酷く傷つき、仕事を続ける自信を失っていた。その時に、突然にメールが届いた。 君は悪くないし、お客様を悪く思う必要もない。これからも自信を持って仕事をしてほしいという趣旨の、シンプルなメールだった。 でも、社長が私個人に気持ちを

          天日干し経営