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九年前の祈り/あわいに開かれて

小野正嗣さんの本と出会ったのは20代の頃で、ヴィレッジヴァンガードの本棚に居心地悪そうに置かれていた、マイクロバスという作品。
「わー、これはきたぞ」と、ひとり興奮を噛み締めたことを思い出す。
暗い、明るくはない。ただ、自分がどこいるかわからなくなるようなぼんやりとした時空間と、丁寧な描写が好きだと思った。あまり評判にはならなかった覚えがある。
その後子育てが始まったりで、本から遠ざかっていた。

久しぶりに図書館の作家別コーナーで見かけて、2冊選んだ。
9年前の祈り、あれ…。なんかこの話知ってる…。もしかしたらどこかで読んだのかもしれない。
マイクロバスが2008年、9年前の祈りが2017年で、あわいに開かれてが2023年。
15年の間に大学の先生で、日曜美術館のキャスターで、作品もたくさん執筆されていた。

小野さんの作品は、時空間が行ったり来たりするし、人間の頭の中らしい、登場人物が突然全然違うことを思い出して、その頭の中の情景が描かれたりするので、一体何の話をしているのか見失いそうになる。
ただ、その感覚が、人の心の中をありありと描いているし、言葉遣いが繊細なので、凄いなぁと思う。

気持ちに余裕がある時に読みたい純文学。

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