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民話から地域の輪郭を捉えよ

今日は、地域に伝わる昔話をご紹介します。

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昔々、この地にはお姉さん燕と妹蝉の姉妹が住んでおりました。
姉妹は細い木や茅で作られたトン族(当地の少数民族)の家を見ては、「毎度の大風で家が壊れて大変そうだよね」「ウンウン、可哀想」と話していました。

そこで妹蝉は「去年、海を超えてココに飛んできたときに、南の方にいい感じの杉の木があるのをみたの!あれを持ってこようよ!」と提案しました。
お姉さん燕は「アイデア イズ NICE!でも杉の木は重いし、それにとても遠いから無理じゃない?」と言いました。すると、妹蝉はちょっと考えて、そして嬉しそうに言いました。
「種をとってきて、ここにまいたらいいんだよ!」
お姉さん燕は「アイデア イズ NICE!」と言いました。でも内心は妹のことが心配でした。妹は蝉だし、それにあまり遠くまではいけないんじゃないかしら……。

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そこで妹蝉に「やっぱり私がいくわ。これから一人になっちゃうけど、体に気をつけて、無理しちゃだめよ」と伝えました。
妹蝉は優しいお姉さんと離れ離れになるのが悲しくて寂しくて震えました。でも、トン族のお爺さんやお婆さんのことを考えると、涙をこらえてお姉さん燕を送り出すことにしました。そして、「お姉ちゃんが帰ってくるまで、高いところからお祈りの歌を歌うことにする!」と決めました。お姉さん燕はそんな妹を誇らしく思いながら、旅立っていきました。長い長い旅です。

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妹蝉はお姉さんが飛び立った方角に向かって来る日も来る日も、ミンミンと歌いました。姉燕は数々の困難を乗り越え、ついに南にある杉林をみつけました。すぐに地面を探し回って、ようやくいい種をみつけると、一目散に村へ帰りました。

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その間、蝉はずっと歌っていました。喉の乾きも寒さも、やっとのことでしのぎました。しかし、吹き付ける風で目は腫れ上がり、日差しで羽は抜け落ちてしまいました。歌いすぎて声もかすれ、空腹でお腹はペッタンコ。
せっかくお姉さん燕が帰ってきたのに、ただ腫れた目でお姉さんを見ることしかできませんでした。話しかけようとしても、もうジージーということしかできないのです。
そんな妹の健気な気持ちに心動かされ、燕は毎年南の方にでかけていきました。トン族の村はどんどん緑になりました。
村のお爺さんお婆さんは杉の木を使って家を造り、風雨の心配もすっかり無くなりました。
お礼に村の人は、燕を家に招き自由に巣をつくらせ、また蝉の声をまねて、「トン族蝉歌」というそれはそれは美しい歌をつくりました。これは今でもトン族で歌われています。
おしまい。

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貴州には、杉の海と呼ばれる広大な杉林があります。大きさは九州くらいで、トン族の人々が千年以上かけて守ってきたものだそうです。
昔話は、地域の多面的な特徴を関連付ける編纂作業のようにも思えます。良い資料です。

私は迫りくる花粉症の恐怖に怯えながら、心優しき燕と蝉に、無粋な憤懣をぶつけるしかできないのです。活動校にはトン族の先生や学生もたくさん通っています。明日、蝉の歌が聞けるかもしれません。これは楽しみ楽しみ!

2019年12月20日 選り抜き協力隊日記

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日本にもたくさんの民話や神話がありますね。浦島太郎や富士山の背比べとか。そこには他地域へのコンプレックスや「こうあってほしい」との願い、地域間対立や誇りなどを垣間見ることができます。地域の人々のメンタリティのようなものも感じ取ることができると思っています。

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この日は書道の時間があったようです。「美術芸術は結局身を助けない」と言われることもありますが、書道は別のようです。字がきれいな先生は尊敬を集めていました。

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この本は大学図書館で出会いました。今年度は学生以外は利用できません。春の非常事態宣言中は公立図書館も予約受け取りのみの開館となったコロナ禍。ただ口を開けて館内をウロウロしていたら背表紙がアピールしてくれる有難さを感じました。求めたものしか受け取れないという事は、どうにも独りよがりでグラグラしているように思えるのです。

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