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リカレントガイドライン(厚生労働省・労働政策審議会人材開発分科会)

リカレントガイドライン(規制改革実施計画)

今年(2021年)6月18日に閣議決定された「規制改革実施計画」にリカレントガイドラインの策定は明記されている。

5. 雇用・教育等
(4) 多様で主体的なキャリア形成等に向けた環境整備
No.4.自律的・主体的なキャリア形成の支援と職業生活の安定を図るためのセーフティネットの整備
a 厚生労働省は、正社員にとどまらない多様な働き手の自律的・主体的なキャリア形成の促進を主眼に置き、人的資本への投資戦略の重要性、実務につながる教育訓練の実施、働き手の時機に応じたキャリアの棚卸しや企業の人事政策の一環であることを念頭に置いたキャリアコンサルティングの必要性、教育訓練休暇の付与・取得促進など、働き手・企業が取り組む事項や人材開発施策に係る諸制度を体系的に示した「リカレントガイドライン」の策定を行う。その際には、上場企業等に対してはコーポレートガバナンスコードの趣旨や内容も踏まえた連動等も視野に含みつつ、労使からの意見を反映させながら検討を開始し、速やかに必要な措置を行う。

労働政策審議会人材開発分科会(厚生労働省)

第30回「労働政策審議会人材開発分科会」(オンライン会議)が2021年11月24日(傍聴会場:厚生労働省 政策統括官大会議室)に開催。議題
は「今後の人材開発政策について(『リカレントガイドライン(仮称)』の策定等)」。

労働政策審議会 人材開発分科会(厚生労働省サイト)

労働政策審議会人材開発分科会 委員名簿(PDFファイル)

また、労働新聞社は昨日(11月18日)「厚生労働省は、自律的・主体的なキャリア形成に向け、労働者・企業が取り組むべき事項や人材開発施策に係る諸制度を体系的に示した『リカレントガイドライン』(仮称)の作成に向けて検討に入った」と報じている。

厚生労働省は、自律的・主体的なキャリア形成に向け、労働者・企業が取り組むべき事項や人材開発施策に係る諸制度を体系的に示した「リカレントガイドライン」(仮称)の作成に向けて検討に入った。従来型の正社員に対するOJT中心の人材育成システムが十分に機能しなくなるとともに、企業による人材投資が減少傾向にあることから、日本の労働生産性が低位に置かれているのが実態。キャリアコンサルタントの積極的活用により労働者の自律的・主体的な学習とキャリア形成を促す必要があるとした。(労働新聞デジタル版「リカレントガイドライン作成 OJT有効性低下で 審議会の検討スタート 厚労省」2021年11月18日配信)

リカレント教育(厚生労働省)

厚生労働省サイトには「学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくことがますます重要になっています。このための社会人の学びをリカレント教育と呼んでおり、厚生労働省では、経済産業省・文部科学省等と連携して、学び直しのきっかけともなるキャリア相談や学びにかかる費用の支援などに取り組んでいます」と記載されている。

リカレント教育(厚生労働省サイト)

追記:第30回労働政策審議会人材開発分科会資料

本日(2021年11月22日)、第30回労働政策審議会人材開発分科会(11月24日開催)は配布資料が公開。

議題
今後の人材開発政策について(「リカレントガイドライン(仮称)」の策定等)
配付資料
 資料1 前回の分科会の議題2に対するご意見
 資料2 学び直しに関する企業へのヒアリング概要
 資料3 訓練協議会について
 資料4 キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタントの現状
前回の分科会の議題2に対するご意見(資料1)
1.リカレントガイドライン(仮称)等に関する総論的なご意見

○ このガイドラインの策定の目的や策定されたあかつきに企業現場でどのようにガイドラインが活かされるのかなどを、明確にして欲しい。
○ (ガイドラインは、)具体性がある内容にしていただいて、企業の現場における教育訓練や労働者の皆様の主体的な学びの促進に役に立つ内容のものにして欲しい。
○ リカレント教育に対する関係者それぞれが持つイメージなども擦り合わせた上で議論していくことが必要。
○ 企業内でDXにより仕事自体がシフトしていくことは事実。だから、企業内でのリスキリングは非常に重要という視点は良い。
○ 労働者の主体的な学びというものももちろん重要だが、リカレント教育を含めた教育訓練など人材育成については、基本的に企業の責任において実施されることが重要。そうした観点から、労働者の教育や訓練の機会を保障するための環境整備の重要性という視点を、ガイドラインに盛り込む必要がある。
○ 資料3の1③で、「伴走支援」という言葉が出てくるが、今後のことを考えるとまずは自律的かつ主体的なキャリア形成に向けて、働き手の意識改革が求められる。その上で、そういった働き手を企業や政府がどう支援していくのか考えていくことが基本。
○ (略)で、労働者の働き方や就労意識が大きく変化。終身雇用前提の人材開発も大きく変わるだろう。会社と政府だけではなく、労働者一人ひとりが、それぞれの年代で、自分のキャリアを常に考える姿勢を持つことが大切。
○ (今後企業が)一番求めるのは、自律型人材。ジョブカードは、自分のスキルがどういうものかを明確化することができるので、非常に良い。これにより、(労働者は)自律型人材になって、自律型の学びというものが出てくると考える。
ジョブ型雇用という言葉の使い方は考えていく必要あり。不安定雇用につながらないようにすべき。リカレントガイドラインは、むしろ労働者を不安定雇用にしないための将来の働き方をしめすものであるべき。不透明の時代にあって、変幻自在な職業人生を選んでいくという「プロティアンキャリア」に近い。ジョブ型雇用の間違った捉え方の中で不安定雇用にいくよりは、特に日本人は組織の中で活かされる安定雇用の中でこそ生産性が上がるというところもあるので、そういった(観点から、)日本の職業能力開発にあるべき姿を考えさせていただきたい。
○ やみくもに雇用の流動化を進めることありきの議論にならないことが必要。
○ 資料3の2の「関係者間の連携」について、連携するのは労使だけでよいかという素朴な疑問がある。職業能力開発促進法には事業主や国、都道府県の責務が規定されているので、そことの関係も考えていく必要がある。
○ (資料3の3について、)企業内と労働市場全体を分けて整理していくのは良い。ただし、労働市場全体の中には企業内と企業外の両方が含まれ、密接不可分と考えるので、その点に留意して、関係者をリストアップしていくことが重要。

2.「求められる人材要件やスキルの明確化・共有」に関するご意見(前回資料3の1①関係)
企業内における人材開発の場面に関するご意見(ガイドライン関係)

○ (労働者には)自律できている人と支援が必要な人がいる。また、スキルの明確化については、スキルを明確化してそこに導いていかなくてはいけない人がいる一方で、企業としてどんなスキルが必要かも分からないという部分もある。明確化できないところに関しては、自由に外に出て行って知見を深めることができる人材も必要になってくると思うが、人材の自律度やスキル要件が明確化できる人と、むしろ明確化しないほうがいい人がいて、そこの多様性にも目配りする必要があるのではないか。
○ 各企業や業界によって多種多様な人材要件やスキルがある。特にデジタル人材については、デジタル技術の導入前、その導入後によって、求められる要件、スキルは変わる。一括りでこの要件やスキルを考えるのではなく、各業界、企業の状況を踏まえて、多角的な検討が必要。
○ (求められる人材要件やスキルの明確化をして、)方向性を間違って示してしまった場合、みんな同じ(間違った)方向に進むことによって、ぜい弱性が生じるおそれ。人材開発の分野でも、多様性を活かして、軸がしっかりある教育をすることが大事。そうすれば、多少うわべが変わっても、対応していける人材が育つ。
○ 企業内で、リスキリングしていく上においても、外部の人を受け入れる。特にテック人材などを受け入れるときに、アナログな会社だと、文化が合わないので離職してしまう例があり、非常に離職率が高い。受け入れ体制をどう取っていくのかということは、非常に重要な視点。
○ 人手不足の中で、人材こそ中小企業の最重要課題。資料3の内容はいずれも重要。特に、1の①②は重要。
労働市場全体における人材開発の場面に関するご意見
○ 資料3の1①で、「人材要件やスキルの明確化・共有」とあるが、国としてどういう取組を行っているのか。
○ 中央、地方の訓練協議会での議論を通じ、産業界のニーズを公共職業訓練の内容に反映していく視点が大事。企業の求める人材要件やスキルを調査する取組が求められる。また、求人情報を扱う民間企業に対して、労働市場の今の実態や状況をヒアリングすることも有効と考える。

3.「効果的な教育訓練プログラムの開発・提供」に関するご意見(前回資料3の1②関係)
企業内における人材開発の場面に関するご意見(ガイドライン関係)

○ 企業の人材育成、それから労働者の学び直しに関するニーズを踏まえたものが必要。例えばデジタル分野やグリーン分野など、今後の産業の変化を想定をしつつ、長期的、安定的な雇用につながるプログラムをそろえていくことが重要。
○ 労使がしっかりと連携をして、教育訓練給付制度のさらなる周知を図ることで活用・促進していく視点や、各企業における教育訓練を後押する施策を強化することが重要。
○ 訓練費用の減少については、(略)で集合研修ができないという問題だけではなく、(略)で業績が厳しくなって、教育訓練費用を削らざるを得ないという企業の事情がある。各企業が教育原資をどのようにして確保するのかという視点を踏まえて(検討して)いかないと、なかなか人材育成は(促進)できない。
○ 社内でIT人材を育てたいが、その担い手がいない。各企業がやり方が分からないというところに対して、そういう分野の専門スキルをどう活かしていくかも考えていかなくてはいけない。
○ 人手不足の中で、人材こそ中小企業の最重要課題。資料3の内容はいずれも重要。特に、1の①②は重要。(再掲)
労働市場全体における人材開発の場面に関するご意見
○ 中小企業は教育訓練費に限りがあるので、在職者訓練をはじめとした公的職業訓練において、デジタル関連のプログラムを拡充していくといった視点が大事。専門実践教育訓練給付の第四次産業革命スキル習得講座の対象講座数を増やしていくべき。
○ 労働市場全体を対象とした人材開発施策を広く議論するに当たっては、雇用保険を財源とした施策の原則を維持するということが重要。雇用の安定や生産性、賃金の上昇につながる訓練であるということも視点としては必要。
○ 学校段階から働くことの意識の啓発であったり、大学における職業訓練の実施などがその後の教育訓練の実効性を高めることにもつながってくると思いますので、そういった視点も重要。
○ 能開基本計画策定後の変化ということなので、雇用保険財源の枯渇を位置づけるべき。
○ 資料3の2に「労使をはじめとした関係者間の連携」とあるが、他省庁との連携というところも非常に重要。厚労省の雇用保険財源だけでなく、他省庁の財源も積極的に活用することも必要ではないか。

4.「労働者が目標を持ち効果的な学びを進めるための伴走支援」に関するご意見(前回資料3の1③関係)
○ キャリアコンサルティングが企業内や労働市場全体の中で、現状どのような効果や役割を果たしてきたのか、客観的な評価を総括をした上で議論する必要がある。その上で、労働者の働きがいや処遇改善につながるような助言ができるような、例えば産業の特徴や特性を踏まえたキャリアコンサルタントをどう育成していくかというような検討も必要。
○ 資料3の3(3)について、キャリアコンサルティングが、唐突に出てくる印象があるので、キャリアコンサルティングがこれまで果たしてきた役割をまとめて、その上で今後どのような役割が求められていくのかを整理していくことが大事。
○ DXやITなど産業界のニーズ、女性のキャリア形成、シニアへの支援などキャリアコンサルティングの重要性が高まっていくのではないか。
○ 働き方や就労の意識が変わって、人が動くことなども前提にしたときに、今までの社内のキャリアコンサルティング的な機能と、キャリアを動いていくことを含めたコンサルティングとは少し違ってくる。キャリアコンサルティングにも、就労、働き方、仕事に対する意識の変化に合わせた対応ということが必要になってくるのではないか。
○ 企業内で、キャリアコンサルティングが上手くいっている事例は、無いのではないか。
○ キャリアコンサルタントであっても、就業経験が無い人などもおり、まともなキャリアのことを知っている人がほとんどいないのではないか。
○ (資料2-2の22ページで)専門家への相談経験がある人は、職業生活全般について満足感が高いというデータがあるが、いつ、どういうタイミングで、何を相談したのかということを、できれば、詳しく知りたい。
○ (骨太2021に記載された)「40歳を目途に行うキャリアの棚卸し」について、なぜ40歳なのか、どのような意義があるのかなどを明確にすべき。
○ 欧米など諸外国で、キャリアコンサルティングがうまくいっている国があるのか。欧米のキャリアカウンセラーは、労働市場の状況はよく知っているが相談技法を知らない職安の職員向けに作られたものであり、日本でもハローワークでキャリコンを取っている人が多いので、すでに欧米の取組にキャッチアップしているのではないか。
○ キャリアコンサルティングについて、1③の「伴走支援」という言葉がいいのか疑問。
○ キャリアコンサルティングだけではなく、相談機能を強化したハローワークを、労働者のキャリア形成やスキルアップの相談窓口として活用するといった視点も重要。
○ 資料3の1③(伴走支援)については、キャリアコンサルティングの促進に加え、ハローワークにおける就職までを見据えた出口一体型の支援の推進も必要。

資料1 前回の分科会の議題2に対するご意見(PDFファイル)

第30回労働政策審議会人材開発分科会(厚生労働省サイト)

追記:労働政策審議会人材開発分科会(第31回)

第31回「労働政策審議会人材開発分科会」(オンライン会議)が明日(2021年12月10日)に開催されるが、議題は(1)雇用保険法施行規則及び職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱(諮問)、(2)今後の人材開発政策について(「リカレントガイドライン(仮称)」の策定等)。

その第31回分科会の資料が本日(12月9日)公開されたが、資料2は「人材開発分科会報告(骨子案)」。

資料2 人材開発分科会報告(骨子案)(PDFファイル)

追記:労働政策審議会人材開発分科会(第32回)

第31回「労働政策審議会人材開発分科会」(オンライン会議)が明日(2021年12月10日)に開催されるが、議題は(1)人材開発分科会報告(案)について、(2)その他。

配布資料は資料1が「人材開発分科会報告(案)」、資料2が「人材開発分科会報告(案) (骨子案からの変更点を示したもの)」、参考資料1が「人材開発分科会報告(概要)(案)」。

資料1 人材開発分科会報告(案)(PDFファイル)

人材開発分科会報告(案)
~関係者の協働による「学びの好循環」の実現に向けて~

(3) 企業内における人材開発
〇ガイドラインの策定に当たっては

・ 主体的な学びは、労働者任せにするということではなく、企業も関与するという視点が重要。
・ 労働者の自律的かつ主体的なキャリア形成に向けては、働き手の意識改革が求められ、その上で、そういった働き手を企業や政府がどう支援していくのか考えていくという視点が重要。
・ 企業や業界によって多種多様な人材要件やスキルがあったり、スキルが明確化できない場合があったりすることから、多様性にも目配りすることが必要。
・ 職業人生が長期化する中で、働き手への効果的な支援の1つにキャリアコンサルティングがある。中小企業や非正規雇用労働者、女性、高齢者などのキャリア形成を考える上でも重要。セルフ・キャリアドックや定期的なキャリアコンサルティングは有効。
・ 企業内においてキャリアコンサルタントがどこまでの役割を果たすことができるかは疑問。
・ ジョブ・カードは、自分のスキルがどういうものかを明確化し、自律的・主体的な学びにつながるので効果的。
・ 企業のマネジメント層が、部下をサポートする能力を持つことができるようにすることが重要。
・ 人手不足の中で、人材こそ中小企業の最重要課題であり、労使による学び直しの促進やそれに対する支援は重要。
などの意見があったことから、こうした意見を踏まえつつ、グッドキャリア
企業アワード受賞企業など(中小企業を含む)への企業ヒアリングの結果も
参考にしながら、引き続き検討することが適当である。

資料2 人材開発分科会報告(案) (骨子案からの変更点を示したもの)(PDFファイル)

参考資料1 人材開発分科会報告(概要)(案)(PDFファイル)

人材開発分科会報告(概要)(案)
~関係者の協働による「学びの好循環」の実現に向けて~

企業内における人材開発の促進
<ガイドラインの策定>

〇企業内における労働者の主体的かつ継続的な学び・学び直
しの促進に向けて、今後、
・基本的な考え方
・労使が取り組むべき事項
(例:求められる能力・スキル等や学びの目標の明確化・共有、学習メニューの提供、時間面や費用面での配慮、キャリアコンサルティング など)
・国等の支援策
等を体系的に示すガイドラインを策定。

追記:関係者の協働による「学びの好循環」の実現に向けて(建議)

厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会は、人材開発分科会において議論を重ねてきた結果、本日(2021年12月21日)、厚生労働大臣に対し建議を行い、厚生労働省は労働政策審議会建議「関係者の協働による『学びの好循環』の実現に向けて(人材開発分科会報告)について」を公表。

厚生労働省は、この人材開発分科会報告の内容を踏まえ、必要な法的整備や、企業内の学び・学び直しを促進するためのガイドライン(リカレントガイドライン)の策定などの措置を検討する。

関係者の協働による「学びの好循環」の実現に向けて(人材開発分科会報告)について(建議)(PDF)

人材開発分科会報告(概要)(PDF)

*ここまで読んでくださり感謝。(佐伯博正)