「ダイバーシティ」を望んでいるのは誰か?
私が大学を卒業して社会人になったのは、7年前です。総合職として大手企業に就職しましたが男性と同条件で対等に働く女性はまだまだ多くありませんでした。しばらくして「女性活躍推進」という言葉を政府が前面に押し出すようになったことをきっかけに、私の周りでも「ジョカツ(女性活躍推進)」という言葉が突然勢いよく踊るようになりました。管理職の何%を女性にする、というような経営目標を掲げる企業も多くなりました。そして、若手の女性社員を育成し、早く経営層にしなければ目標に達しない、という男性幹部の焦りを感じたのも事実です。
正直言って、私にとっては全てどうでもよいことでした。誤解を恐れずに言うと、どれも自分のことのようには聞こえなかったし、推進する人たちの考えていることが、どこまでが本音で、どこまでが建前なのかが、全く見えなかった。私にとっては、やりがいをもって働けて、それで自分の納得のいくお給料をもらえれば、それが何よりもの幸せでした。企業で経営幹部になることが人生の目的ではなかったから。
「ダイバーシティを推進すべき」とか、「女性が活躍できる場を設けるべき」というのは、いったい誰が本気で思っていることなのでしょうか。女性?男性?どちらでもないひと?若手?経営層?会社?国?
それが、全然わからなかったのです。
もちろん、性差という理由だけで、やりたいことができない、とか、夢をあきらめなければならないという状況は、とても悲しいし改善すべきだと思います。女性と男性は生物学的に全く別物だということは紛れもない事実なので、それを配慮した制度・社会保障・福利厚生をととのえることは必要だと思います。でも、いつまでたっても「女性が働きづらい」とか「育児と仕事の両立が大変」とか「結婚したら働きたくない。大変だから」とかいう話がおさまらない。どんなに福利厚生がととのっていたとしても、漂う雰囲気は変わらない。それって、制度うんぬんではなく、大前提として、「誰が、女性の社会進出・活躍を望んでいるのか」ということがはっきりしていないからなんじゃないかと思っています。
企業にとって「ダイバーシティ」という言葉は今とても重要なキーワードとして捉えられていると思います。「多様性」をもつこと。この視点では、性差はほんの一部であり、国籍や心身の障害、キャリアのバックグラウンドなどの違いもあれば、生活や仕事に対する価値観の違いなども含まれます。
短くはあるもののこれまでの社会人生活で感じたことは、この「ダイバーシティ」というのを推進するのはいいけれど、何を理由に推進しているのか、だれが本気で推進しようと思っているのか、というのがわからないということでした。「ダイバーシティ」を推進し、女性社員の人数を増やし、経営幹部に女性を登用し、様々な国籍の人々を雇用し、LGBTQに対する偏見をなくし、障害をもった人と共に仕事をすること。それを、いったい誰が本気で望んできたのか。そうすることで、会社組織にとってどういう好影響があると判断したのか。そこが、不透明であるような気がするのです。本気で、心の底から、ダイバーシティが重要であり、様々な人材なくしては会社は成長しない、と会社・経営者・従業員が思っているのであれば、もう少し状況は変わっていると思うからです。
女性についてのこうした問題を語ることは、あまり好きではありません。自分が女性であるということもその理由のひとつです。女性が女性にとっての主張を繰り広げることは、時にしてわがままにうつったりします。その気持ちもよくわかります。ネット上で繰り広げられるそういった議論を見ることも、なんとなく不快でした。私の性別は女性だけれど、もっとフラットに話をしたかった。性別だけの問題ではないし、人間ひとりひとりが違う性質をもった人間なわけで、共生するからにはひとりの問題は全員の問題であるし、同じように女性の問題も全員の問題で、全性別の人間が考えなければ話が発展しないと思いました。
今日は「国際女性デー(Happy Women's Day/International Women's Day)」です。女性に関するこうした議論を聞くのはあまり好きではありませんでしたが、勉強のために、あるシンポジウムに行ってきました。「昇進の機会があるならつかみ取りましょう」「変革を担うのは次の世代の人たちです」「この状況を、女性が変えないで誰が変えるのか」というような話は、やっぱりしっくりきません。女性の、独りよがりな話になってしまう気がしてしまうのです。
どんな人だって「ダイバーシティ」の一部であること。女性の話をしたかったのではありません。全員、ひとりひとりが、ダイバーシティの一部である自分の話をできるようになるよう、意識していたいと思った日でした。
ちなみに、今日は「ミモザの日」でもあるそうですね。ミモザのお花、とても好きですが、私はお酒のミモザの方が好きです。笑
Sae
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