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「口座振替」の重要性を語ります 〜恐怖エピソードを添えて〜

皆さん、電気・ガス・水道・スマホ代などの料金は、どのようにお支払いでしょうか?

口座振替?クレカ支払い?
はい、合格です。これ以降の話は、「お前アホやな〜」と鼻で笑いながら読んでください。

「コンビニで支払ってるんすけど...」と思ったあなた。そこのあなた!!!!
これ以降の話を、お目々かっぴらいて読んでください。とても大事なことを、書きます。

私が初めて一人暮らしをしたのは、大学を卒業し、社会人になってすぐの頃でした。

1ヶ月間の研修を終え、配属先が発表されると、そこは実家からは通えない、縁もゆかりもない土地。

「ひえ〜、そこ、東京?」と思って後から調べたら、ちゃんと東京でした。まぁ、町田なんですけど。

人生初の一人暮らしをすることが決定した瞬間でした。・・・というか、私の知らないところで、すでに決定していました。配属地が発表されたその日、会社から「はい、ここに住んでー」という、住所と間取りと鍵の受取方法が書かれた紙っぺら一枚が渡されたのです。(8年前のことです。今もこんな風に決まっているのかは知りません)

そしてその場で、ある一枚の紙が配られ、とにかくなんのことやらさっぱりわからん、という精神状況だった私はあっさりと署名をし、その紙は回収されました。

そう、その紙が、後に大変面倒なことになる「新聞の購読申込書」だったのです。

あてがわれたマンションに行ったら普通のワンルームタイプのマンションで、何にもないまっさらな状態でした。そこからせっせかと家具や家電を購入して初任給を使い果たし、なんとか社会人として1人暮らしをスタートさせた私。

社会人1年目というのは、とにかくいろんなことがわからないものです。なんせ8年前のことですから、労働環境も今よりずっと監視されておらず、毎朝先輩よりも早く会社に行き、みっちり慣れない仕事をし、帰りは飲み会に参加して夜遅くに帰宅する、という日々。

土日はとにかく疲れ切って、午後まで泥のように眠り、元気になったら一人暮らしが寂しくて、かつ若かったので飲みに出かけたり合コンに出かけたり、まぁまぁ退廃的な日々を過ごしていました。

そんな毎日だったもので、家にいる時間はめちゃくちゃ短かったのです。平日は深夜〜早朝しか滞在せず、土日は家に居ても寝ている(≒気を失っている)か、外出していました。

つまり、「家に誰か来ても気づかない」状態だったのです。

話は逸れますが私の睡眠の深さは深海魚もびっくりレベルで、ケータイのアラームは1時間鳴らさないと起きれないのはもちろんのこと、電話やピンポン、犬の鳴き声などでは一切起きません。私との間では「こんな夜中に電話かけてくるなよ〜(目ゴシゴシ)」みたいな会話は発生しません。「夜の授乳とか絶対できんわ」と、子どももいないのに心配するレベルです。(体験談を聞くに、母になると自然に起きるらしいので本当にすごいと思います)

加えて、女子の一人暮らしというものは本当に怖いです。

私の住んでいたマンションは閑静な住宅街の中にあって、角を曲がるたび、大通りから1本小道に入るたび、人気がないことが怖くて怖くて、5秒に1回振り返りながらダッシュでマンションに滑り込んでいたことをよく覚えています。

洗濯物も外に干すのが怖くて、ずっと部屋干し。マンションの隣に住んでいるのがどんな人なのかを確認したくて、ガチャっと音がするたびにドアの穴からのぞいていました。ドア横に女性モノの傘が置いてあった時は、どれだけ安心したことか。


お察しの良い方はもうおわかりいただけたかと思います。

そう。私は、

新聞購読料を支払っていなかった

のです。


配属が発表された日に配布され署名した、新聞定期購読の申込書。これが、まさかの「集金払い」のものだった・・・・・と気づくのは、もっと後の話です。

毎日、新聞が届くなぁというのは、ポストを見て知っていました。ただ、そのお金がどこから出ているんだろうというのをしっかり確認するまでの余裕と頭がなかったのです。ただのアホでした。給与明細の読み方すらわからない、かつ学ぼうとしない私は、「どっかから出てるんかなぁ」「会社が払ってるんかなぁ」とかよくわからんことを一瞬思い、そのまま放置してしまったのです。アホです。

土日に家にいるとき、時々「ピンポン」と誰かが来ていたのも、わかっていました。ただ、あまりに怯えていた初めての一人暮らし、ドアを開けるのが怖すぎて、絶対に嫌だったのです。刑事ドラマでよく見る、ドアを開けた瞬間足をガッと入れられて部屋に押入られたら、もう私はTHE ENDだ、と。この閑静な住宅街の中に立つマンションの1室で何が起きたって、誰も気づくはずないじゃん、と。

幸いそのマンションには宅配ボックスがついており、Amazonなどでの購入品はそこから受け取ることができました。だから、家にいたとしても、ピンポンの音が聞こえたとしても、家にいなかったとしても、ドアを開ける必要はない、と思っていたし、そうしていたのです。

つまり、新聞の集金の方がやってきても、全スルーをかましていたのです。知らぬ間に。


ついでに言うと、ケータイにも知らない番号から電話がかかってくることがありました。ただ、知らない番号からの電話なんて、普通にあるんですよ、ていうかあったんですよ。当時は「ワンギリ」なんて言葉もまだ微かに残っていましたから、知らない番号からかかってきても、掛け直しちゃいけない、と、普通に思っていました。だから、大抵スルーです。


そんなこんなで過ぎ去った数ヶ月。

ある日、ケータイに一通のショートメールが届きました。ピロン。開封。
そこには、こんなようなことが書かれていたのです。

新聞購読料の滞納をお知らせします。
これ以上ご連絡がつかない場合は、法的措置を取らせていただきます。

!!!!!!!!!!!!!


皆さんは「法的措置」という言葉を真正面から受け取ったことがあるでしょうか。私はあります。この1度だけ。もう、これっきりにしたい。そう思うほどの、恐怖でした。

その時、初めて自分がしでかしたことの大きさに気づいたのです。

やばい。法的措置は流石にやばい。てゆか私、滞納してたんや。薄々、あれ、どっから支払われてるんやろ、口座から引き落とされてないし、給料からは、ようわからん。。。。あれ、払ってなかったんだ・・・・

止まらぬ冷や汗。目の前には「法的措置」という言葉が光る液晶画面。


やばーーーーー!!!!!!!流石に法的措置は勘弁ーーーーー!!!!
私、まだ会社入ったばっかりなんです・・・!!!社会的な死が訪れるのは早すぎるんです・・・・!!!!

そう思い、即座に自分の購読している新聞社の販売出張所?のようなところをネットで調べ、電話をかけました。

どんなに怒られるんだろうか。でも、どれだけ怒られたとしても、頭を下げなければ。そう、ビクビクしながら。

電話に出てくれた方は、案外あっさりとしたものでした。住所と名前を言うと、「あぁ、はいはい、料金の支払いね」という感じ。ただ、言われたことは、ちょっぴり厄介でした。

本当は、余裕のない日々を送っており、かつお金がないわけでもなかったので、滞納分の振込でサクッと済ませたかった私。ただ、「集金払い」で滞納している分の料金は、現金で直接支払わないといけない、とのことだったのです。

なんちゅうこっちゃ。

ここまできても私は、部屋に訪問してきた誰かを迎え入れる(ドアを開けるだけなんですけど)のを躊躇っていました。ましてや、滞納している身。開けた瞬間怒られたら、腰抜かしちゃうってよ。

なんとか、集金ではない方法で支払えないか、と聞いたところ、帰ってきた答えは一つでした。「出張所まで来て、払っていただけますか?」と。

「わかりました。行きます。」

そう言って、私は次の休みの日、早速出張所まで行ったのでした。マンションの部屋で1人と対面するより、出張所やらに行った方がマシだ、と。ていうか滞納してるのは私なので、マシとか言える立場じゃないのですけれども。。。

出張所は、駅から随分と離れた、土手の裏みたいな所にありました。当時、タクシーの配車アプリなんちゅう便利なものもなく、電車+徒歩しか選択肢がなかった私は、電車で最寄り駅まで行って、そこから20分ほど人気のない道を歩いて、出張所にたどり着いたのでした。

当たり前ですが、そこは新聞を配達する拠点となる場所。お客さんがくるような場所ではありません。事務所のようなところを訪ね、迎え入れてくれたのは私より15歳くらい年上に見えるお姉さんでした。

私がここまで徒歩で来たことに驚いたお姉さんは、全く私を怒鳴りもせず、「払ってくれればそれで〜」くらいのゆるいノリで優しく対応してくれました。本当にすいません、と謝りながら、無事支払い、ホッとした私。そして、忘れてはならない一言「あの、口座振替の手続きもさせてもらえますか?」を放ち、無事手続きを終えたのでした。

帰ろうとする私に、お姉さんは「歩いて帰るの!?駅まで送るよ!!」と言ってくれました。正直、見ず知らずの人の車に乗るとか怖すぎる、と思いましたが、「法的措置をとる」というメールを受け取った瞬間から、ここまで人気のない道を歩いてきた心細さを走馬灯のように思い出し、甘えることを決めました。そこまで人を疑って、どうするんだい、と。あと、その方が女性であるということも大きかったです。まあ女性でもそのまま車の中で縛られて樹海に連れていかれることもあるとは思うんですけど・・・(闇金ウシジマくんの見すぎ)

そんなこんなで、最後は出張所のお姉さんの優しさに触れ、この1件は事なきを得たのです。(事なき、だったのか???)おかげで、それ以降お金のチェックには細かくなり、社会的な信用も今のところ失っていません。
お姉さんが乗せてくれたグレーの軽トラの助手席からみた景色、忘れることはないでしょう。

ここでの学びは、いろいろあります。

まず、「お金の出どころを知ろう」ということ。

食費のような自分で調達している実感のあるものはまだいいのです。
家賃、電気代、ガス代、水道代、新聞購読料、スマホ代、火災保険料、生命保険料、年金、、、、、。人間が生きているのには、お金がかかっています。生きているだけで、かかるのです。

これまで親が手配してくれていて、何もしなくても享受できていたアレコレは、社会人になった瞬間、自分でやらなければいけないことに変わります。申し込みから、支払いから、契約解除まで。自分で知らないといけないし、自分でやらなければならないのです。

残念ながら、これらを学生時代に懇切丁寧に教えてくれる場はないと思います。本当は、お金の教育をもっとしっかりすべきだ、と私は思うんですけど。それでも、「知らなかった」では済まされないのが今の世の中です。最後に行き着くのは、「社会的な死」・・・。

怖すぎますね。生物的に死んでないのに、死ななければいけないのですから。怖すぎる。

そして、何よりも、「口座振替にしとこう!!」ということ。

口座振替への手続き、面倒だと思います。いろいろ紙に書いて、印鑑とか押さないといけないしさ。銀行窓口に出さないといけないケースもある。それに比べてコンビニ支払いは、家の近くのコンビニにジャージで行ってお金出せば終わるんだもん。

ただ!!ただね!!!!!!!

一旦口座振替にしとけば、あとがめちゃくちゃ楽です。私みたいな怖い思いをしなくて済むし、滞納のリスクは格段に減ります。通帳に記載されますから、収支もわかりやすくなります。

四の五の言わずに、口座振替。

これを暗唱しておいてください。


あとは・・・ちょっとこれは社会的な問題ではありますが、「会社がなんでもかんでも決めていいのか」というところは書きながら疑問に思いました。

先月末に会社を退職し、フリーランスの身になって思うのは、「知らんことが多すぎる」ということです。今年31歳になる私ですが、健康保険の脱退・加入、厚生年金から国民年金への加入変更、ハローワークでの手続き、個人事業主の開業・申告手続きなど、知らないことのオンパレードでした。全部ネットで調べて、見慣れない書類を書いて。一応これでも金融機関に長く勤めていたので、事務的なことは得意なはずなのですが、それでも煩雑だなぁと思ったので、事務的なことが苦手な人にとってはひどく生きづらい世の中だと思います。

世の中を変えたいという気持ちはあるとして、そして行動はするとして、今のところの仕組みを知るというのは、大事な社会人としてのステップだと思うんですよね。

会社という塊は、それを代わりにやってくれます。今フリーランスの人が苦労している確定申告だって、サラリーマンは紙1枚にサクッと署名したり印鑑を押せば終わるようになっています。ローンやらなんやらがあるともうちょっとやることはありますが、それでも確定申告に比べたらずっと楽です。

そうやって、会社が「してくれたこと」の多さに気づくと同時に、会社が会社員から「奪っているもの」の多さにも気づきます。家や住む場所を自分で選ぶというステップ(会社にもよるけれど)に始まり、新聞購読の手続きまで。ここまでお世話してあげる必要があるのだろうか、とも思います。自分で選んで、自分で決めて、初めて自分の足で立っているという感触を得られるもの。その感触を、図らずも(かどうかわかりませんが)奪ってしまっているのです。便利さと引き換えに。

そういうことを理解するのには、社会人になって一定の時間や経験が必要なのかもしれません。がしかし、知っておく分には早いに越したことはないと思います。

自分で選ぶ、というステップを、大事にしたいものです。


そして、何かを定期購入する時や契約を結ぶ時には、

四の五の言わずに、口座振替。

この言葉を、思い出してください。

Sae

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